Vol.70 『組織』の最終章

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父親に電話をするベティ(左)     見張っていたメイラーの手下(右)

 テレフォン・ボックスからベティは、ピッツバークの実家の父親に電話を掛けます。暫くの間実家に帰って良いかと尋ねますが、断られます。(このシーンではベティの問いかけの言葉しか分かりませんが、カレン、ブラックの表情の変化で父親の返事が読み取れます。電話を切る直前の泣きそうな表情は絶妙です。)テレフォン・ボックスから出て行くベティを、新聞を見ながら靴を磨いて貰っている男が新聞を下して彼女を見ています。

外出したベティに声を問い掛けるアール(左)
誰にも見られてないと言うベティ(右)

 涙を拭いてモーテルの部屋に入ったベティに、銃の手入れをしているアールは“何していた”と聞きます。ベティが“外出よ”と答えると、アールは“やばいぞ”と言います。ベティは“天井を眺めていれと云うの”と言い、アールに煙草を投げつけます。ベッドに横になっているコディに足をどけてと怒鳴ると、コディはサッサと部屋から出て行きます。

こんな生活は嫌だと訴えるベティ(左)
アールは銃の手入れをしながら仕方ないさと答えます(右)

 ベティはアールに“こんな渡り鳥似たいな生活は嫌だ”と言いますが、アールは“仕方ないさ”と軽く答えます。“私は心配して待っているだけ”、続けて“あんたが殺されたら私は待ちぼうけよ”とベティは訴えます。アールは銃の手入れを続けているので、“聞いているの”言ってアールの銃を奪って投げ飛ばします。アールはベティをベッドに押し倒して往復ビンタを何度もして、銃を手に取ってベティに銃に触るなと言います。アールが再び銃の手入れを始めたのを見たベティは、泣きそうになりながら“家に帰るわ”と言うとアールは“帰れと”言います。ベティが“もうパパに電話をしたわ”と言っても、アールは銃の手入れを続けています。アールが無反応なので“嘘よ”と言うと、“見つかるぞ”と言って来るので“誰にも見つかっていない”とベティが言います。アールは明日このモーテルを出て行くと言います。

仲直りをして笑顔で話す二人(左) アールに足を洗うように頼むベティ(右)

 アールとベティはベッドに二人横に並んで座り、笑顔で楽しいそうに話しています。ベティは愛して後悔していると言い、悪い事ばかりあったしあんたは禿だしと言った。アールは笑いながら枕でベティを叩くと、ベティがその枕でアールを叩きます。ベティは“足を洗うって”と言いますが、アールは“敵がいるから駄目だ。決着をつける”と言います。

コディに免許証の提示を求める警官(左)
メナーと部下が乗ったセダンが近づいて来ます(右)

 コディが運転する車の中、後部座席のベティがカップにコーヒーを注いでコディに渡します。暫く走って行くと道路脇にパトカーが停まっていて、後を追って来て停車するように指示します。警官がコディに免許証を見せるように言っている時に、3人の男が乗ったセダンが対向車線の遠くに停車します。

パトカーと衝突して落下したセダン(左)
アールはメナーを撃ち殺します(右)

 もう一人の警官はショットガンを持って車の後ろで待機したので、コディがコーヒーを警官に掛けて銃で撃ちます。同時にアールは後方の警官を撃ち、動く出したセダンを撃ち始め二人で車のタイヤをパンクさせます。セダンはコントロールを失いパトカーに衝突して、高い段差から落ちてひっくり返ります。車の中から出て来た銃を持ったメナーをアールが撃ち殺します。

後部座席で流れ弾に当たったベティ(左)      倒れこんだベティ(右)

 二人はその場から走り去りますが、後部座席のベティを見ると彼女は流れ弾に当たって死んでいました。(この短いシーンは、情感溢れる何とも切ない印書を与えます。)

ベティの葬儀まで依頼するアール

 画面が変わって、馴染の医者にベティの死亡届を出すように頼みます。医者は死因は肺炎にしたと言い、遺体を見るかと聞きますがアールは断ります。彼女が持っていた金時計も医者にやり、葬儀も頼んで病院から出て行きます。コディが待つ車に乗り、最後の仕事をする為に出発します。

警備状況を調べ終えたコディ(左)
警戒が厳重だがコディはアールに手伝うと言います(右)

 メイラーの邸宅の近くで警備の状態を調べていたコディが、モーテルに帰ってきてアールに報告します。警戒は厳重で庭には手下が大勢いるし、夜は明るいし番犬もいるし時々外も見回ると言います。中に入る事が出来ても出るのが大変だとコディが言うので、アールh“君は抜けてもいいぞ”と言うと、コディは“乗り掛かった舟だ”と言います。

メイラーの手下二人から車を奪うアールとコディ(左)
家の中に入って時限爆弾を仕掛けるコディ(右)

 メイラー宅の門から黒のセダンが外の見回りに出て来ます。近くの道路に停まっているアールたちの車を見て、手下二人で確認しますが無人なので去って行きます。家の中でメイラーは落ち着かず、ライトを点けるように手下を支持します。だだっ広い庭が昼間のように明るくなります。外を見回りしている車が先程の車に男が乗っているので、手下二人が車から降りてきます。近付いてきた手下二人にコディとアールは銃を向けて、“お前らの車を借りたい”と言って手下と入れ替わります。二人は邸宅の敷地内に入り、まんまと車庫までたどり着いて家の中に入り込みます。一人の手下は家の中を見回りをしていますが、1階の部屋のテーブルにコディは時限爆弾を仕掛けます。

メイラーの妻に銃を突き付けるコディ(左)
鏡で妻が銃で脅されているのを見るメイラー(右)

 二人は銃にサイレンサーを付けて2階に上がって行き、コディはメイラーの妻に銃を突き付けます。彼女は“私を殺すの”と聞くと、コディは“分からん”と答えます。メイラーが洗面所で髭を剃ろうと鏡を見た時、銃を突き付けられている妻を見ます。

銃を構えてドアを開けるメイラー(左)   メイラーに撃たれたコディ(右)

 メイラーはタオルで隠された銃を取り出して、撃鉄を起こして音を立ててドアを開け振り返ったコディを撃ちます。撃たれたコディは床に倒れます。

駆け付けて来た手下を撃ち殺すアール(左)  取引を申し出るメイラー(右)
メイラーを撃つコディ(左)       メイラーを撃ち終えたアール(右)

 銃声を聞いた手下が上がって来ますが、アールは撃ち殺します。コディが入った部屋からメイラーが出来て取引しようと言いますが、アールは手遅れだと言った時にコディがメイラーを撃ちます。アールもメイラーに止めを刺すように一発撃ち込みます。

メイラーに駆け寄る妻(左)
出血が激しいコディは少し休ませてくれ言います(右)

 妻が倒れたメイラーに駆け寄り、“何故殺したの”聞くと、アールは“金の恨みだ”と言って、負傷したコディを抱えながら部屋を出ます。2階に上がってこようとする手下に、威嚇射撃をして移動します。コディが遅いなと言っていると、仕掛けた時限爆弾が爆発します。かなり出血しているコディが“少し休ませてくれ”と言うので、アールは階段を上がろうとする手下に銃を向けて“手を引け、ボスは死んだぞ”と伝えます。

一本の煙草を回し喫みする二人

 手下たちは退散したので、コディの様子をみると、“アール”動けそうもないよ”と言いだします。煙草をくれと言うので“禁煙中だろう”とアールが言うと、“禁煙は徐々にするんだ”と言って“こっちは引退する”と言います。コディが“先に逃げろよ”と言うと、アールは“急ぐ事は無い”と言って、二人で1本の煙草を回し喫みします。(仲間同士の煙草の回し喫みは、昔から映画ではよく使われる定番でした。)

家の外に出た二人(左)       まんまと救急車に乗り込んだ二人(右)

 コディが辛そうな顔をしながら“もう行こうぜ”と言うと、アールが“いつでも”と言ってコディに手を貸しながら1階に下りていきます。アールはコートを脱いで用意していた白衣を着ます。家の外はサイレンが鳴り響き、パトカー、消防車、救急車が到着します。アールはコディに手を貸しながら外に出て、駆け付けた救急員に“中にもっといる”と言って二人は救急車に乗り込みます。近くにいた警官に“手伝え”と言って、彼に“酸欠だ”と言って後部ドアを閉めて救急車を運転して出て行きます。

救急車で逃げ出し、車内で大笑いするアールとコディ

 サイレンを鳴らしながら走る救急車の中で、アールが“楽に出られたろう”と言います。コディは“やっぱり善人は最後に勝つのさ”言い、二人で大笑いして映画は終わります。最後までお付き合い頂きまして、有難う御座いました。

『組織』 作品データ

1973年製作 105分 アメリカ

原題:THE OUTFIT

監督:ジョン・フリン

製作:カーター・デ・ヘイヴン

原作:リチャード・スターク

脚本:リチャード・スターク

撮影:ブルース・サーティース

編集:ラルフ・E・ウィンタース

音楽:ジェリー・フォールディング

出演:ロバート・デュパル (アール・マックリン)

   カレン・ブラック (ベット・ハーロウ)

   ジョン・ドン・ベイカー (ジャック・コディ)

   ロバート・ライアン (アーサー・メイラー)

   ティモシー・ケリー (ジェイク・メナー)

   リチャード・ジャッケル (キミー・チャーニー)

   シェリー・ノース (バックの妻)

   ビル・マッキーニー (バック・チャニー)

   ジェーン・グリア (アルマ・マックリン)

Vol.69 『組織』の続きの続き

バーテンにメナーの使いだと言うアール(左)
シンクレアに殺し屋がミスったと言うアール(右)

 アールがシンクレアのクラブに入って来てカウンター席に座り、ウィスキーを注文してバーテンにメナーの使いだと言います。バーテンが“用件は”と聞くと、アールは“下っ端には話せない”と言います。バーテンは電話を掛けてから、廊下の奥の部屋に行くように言います。厨房ではコックが肉切り包丁を振り下ろしながら、肉を切っています。アールの後ろに付いてきたバーテンがドアを開けます。アールが部屋の中に入ると、バーテンはアールの後ろに立っています。シンクレアが“誰だ?”と言うと、アールは“メナーの使いだ”と言い“殺し屋がミスった”と言います。メナーは“マクリンは油断ならないやつだな”言い“俺はメナーに頼まれて殺し屋を送っただけだ”言います。シンクレアは葉巻を吸い乍ら“マクリンだな”いうと、アールは“そうだ”と言います。後ろに立っていたバーテンが殴りかかってきたのを振り向きながら掴んで投げ飛ばします。バーテンの身体がシンクレアにぶつかり、二人は床に倒れこみます。厨房にいたコックが包丁を持って動こうとすると、銃を構えたコディが現われて“動くな”と言います。シンクレアに銃を向けたアールが“金庫は”と聞くと、“ない、キャビンだ”と言います。アールはキャビンから金を取り出してコートのポケットに入れ、二人に腕立て伏せをするように言って部屋から出て行きます。

厨房で合流するアールとコディ(左)ベットが車で二人の手下に追突します(右)

 厨房でコディと合流しますが、コックがコディに包丁を投げつけたのでアールが銃を撃って威嚇して表に出ます。アールが手下の一人を撃ち殺すと、二人の手下が銃を撃ってきます。それを見たベットが車で手下の二人をはねて、アールとコディを車に乗せて逃げ去ります。

ケミーに会いに行く二人(左)
ケミーが家から出て来てアールに声を掛けます(右)

 アールとコディは車で、3年前に兄のエディが車を購入したケミーの家に着きます。外に立って行っている女に、”ケミーは“と声を掛けます。女は”誰“と言うので、”マクリン“と答えます。女は傍にいる男にケミーを呼んでくるように言います。ドアが開いて男が出て来て、”マクリンか“と言うので、アールは兄貴をだせと言います。男は自分がケミーだと言って、知らない人とは話さないので買えるように言います。二人が帰ろうとすると、”待ってくれ“とライフルを持ったケミーが出て来て声を掛けてきます。アールが3年前に兄貴がグリーンのダッジを購入し、アールとコディの3人でウィチタの銀行を襲った話をします。ケミーが”エディは”と聞くので、アールは“死んだ”と答えます。ケミーは弟のバック・チャニーに“酒を持って来い”と言って、ガレージに歩いて行きます。アールは頑丈で前科無しの車が欲しいと言い、下取りも頼みます。3人で酒を飲みながら、ケミーが街にダッジの売り物があると言うので後で見に行く事になります。ケミーはプルムスのエンジンを搭載した改造中のフォルクス・ワーゲンの自慢話をします。車は何時いるかアールに聞くと、直ぐいるというので車を買いに出掛けます。

バックの妻がコディを部屋に入るように声を掛けます(左)
バックはコディが妻を犯そうとしたと聞いてコディを攻撃しようとします(右)

 コディは残って椅子に座っていると、バックの妻がシャワーを浴びてバスロープ姿でコディに家に入るように言います。(何とも艶めかしい姿で、そそられます。)コディが断ると、怒って家の中に入ってきます。やがてアールたちが車を手に入れて帰って来ると、バックの妻が着替えて家から出て来ます。そしてバックに話があると言い、コディが自分を犯そうとしたと言います。勿論コディは否定して、誘いを断っただけだと言います。亭主のバックは逆上してタイヤレンチを手にしてコディに向かって行きます。アールが二人の間に入った時、バックの妻は犬を嗾けます。犬はコディの腕に噛み付きコディが倒れますが、ケミーは斧で犬を殺します。続いてバックがレンチで殴ろうとしますが、アールが投げ飛ばしてから殴りつけてバックを倒します。二人はケミーに銃を向け、追って来ないように言ってその場を去ります。

コディが持っている北部の店の話をアールにします(左)
後部座席で横になりながら二人の会話を聞くベット(右)

 画面が変わって車での夜間移動中、コディが“アールに北部へ行ったかと聞くと、アールは子供の頃に行ったと答えます。コディが冬に2メートルの雪が積もるベレスク・イルに店を持っていると言い、近くに基地があるからハムエッグが沢山売れたと言います。一生住んでもいい所だと言うと、アールがいつか行くよと言います。コディは銀行を襲った時は平気だったが、今回は胸騒ぎがして仕方ないと言います。アールはコディに”戻る所があって良い“と言うと、コディが”生活を変えるといいんだ、運は長くは行かない“と言います。後部座席で横になって二人の会話を聞いていたベットの顔がアップで映し出されます。

郵便配達員に変装して金融会社に乗り込むコディ(左)
金庫室で金庫を開けさせようとするアール(右)

 画面が変わって、郵便配達員に変装したコディが4階のケニル金融会社に向かいます。事務所に入って電話交換手の女性にウィルソンさんに手紙だと言いますが、電話交換手は知らないと言います。コディは宛名を見てくれと言って、近づく電話交換手の顔面に一撃を喰らわして倒します。作業服姿のアールが中に入って来て、キャビネットの鍵を探しますがありません。コディは鞄から分解してあったショットガンを手早く組み立てて、二人で奥の事務所に踏み込みます。(フリン監督は時々俯瞰と言うよりは、真上から撮ったシーンを挿入します。)事務所にいた二人に銃を向けて後ろを向かせて、金庫室の場所を聞きます。二人に金庫室まで案内させ、金属製のドアを中から開けさせて銃を向けて入ります。全員手を挙げた状態にして、金庫の傍にいる男に金庫を開けるように言います。男は“暗号を知らない”と言うので、アールは男に立って靴を脱げと言います。断る毎に足の指を1本づつ撃つと言ってもしらを切るので、近くにいた男に靴を脱がせるように言います。金庫番の男は観念して金庫を開けます。金庫に入っていた紙幣を全て鞄に入れて、500まで数えるように言ってその場を去ります。部屋から出るまでのコディの動きは、元軍人の動きです。二人は分かれて悠々と出て行きます。

アールと取引をするために競走馬のセリ市場に来たメイラー(左)アールから取引の条件を聞くメイラー(右)

 画面が変わって、車が3台連なって走ってきて、競走馬のセリ市場の駐車場で停まります。ボスのメイラーと妻が車から降り、子分たちが後に続きます。子分の一人にフォットボールの途中経過を知らせるように言い、席につきます。遠く離れた所にアールとコディがメイラーの左右に立っています。メイラーは妻に車に戻るように言って立ち上がって、手下に動かないように指示をして会場の外れまで歩き出します。アールも歩き出してメイラーと合流し、コディは遠く離れた位置から歩き出します。メイラーは妻を巻き込みたくないので、25万ドルを払うと言います。アールは100ドル以下の古い小額紙幣で用意するように言い、受け渡し場所は教会を指定します。メイラーは“もう俺に近付くな”と言いますが、アールはそれに答えずに去って行きます。

教会にメイラーの手下が入って来ます(左)火災報知機を鳴らすアール(右)n

 教会の中はホームレスらしき人が大勢いて、合唱しています。メイラーの手下が鞄を持って現れ、2階の厨房の調理台に鞄を置いて走り去ります。鞄を開けてみると中身は新聞紙でした。罠だと気が付いたアールは、火災報知機を鳴らして逃げ出します。階段を上がってくる殺し屋たちを銃で撃ち、教会の中は大勢の人間が逃げ惑う人たちで大混乱になります。二人はその人ごみに紛れて、その場から逃げ去ります。メイラーの元に部下から連絡が入り、又逃がした事で激怒して“殺せ”と命令します。

賭博場の事務室に案内するように言います(左)
金庫番に金庫を開けさせます(右)

 画面が変わって、トイレに男が入って来て手を洗います。トイレの個室からアールが出て来て、男に声を掛けます。別の個室からコディが銃を構えて出て来て、男に銃を突き付けて“鍵は”と言います。アールが男の上着を点検して出るように言います。賭博場の事務所に入り、奥の金庫室に入ります。中の3人に銃を向けて、“静かに出たい”と言って金庫を開けさせます。鞄を渡して、金を全部入れるように言います。その鞄を金庫番に持たせて、賭博場を通って出て行きます。金庫番を駐車している車に乗るように言って、シートに座ると同時に一撃加えて気絶させて、二人は車で走り去ります。メイラーは自宅で手下から報告を聞き、もう自宅に電話をしないように言います。メナーに電話を掛けて“俺の電話番号を教えたな”と言い、“この次は殺すぞ”言います。手下を総動員して、二人を探せと命令し、長くは待てないぞと言って電話を切ります。

 次回に続きます。最後までお付き合い頂きまして、有難う御座いました。

『組織』 作品データ

1973年製作 105分 アメリカ

原題:THE OUTFIT

監督:ジョン・フリン

製作:カーター・デ・ヘイヴン

原作:リチャード・スターク

脚本:リチャード・スターク

撮影:ブルース・サーティース

編集:ラルフ・E・ウィンタース

音楽:ジェリー・フォールディング

出演:ロバート・デュパル (アール・マクリン)

   カレン・ブラック (ベット・ハーロウ)

   ジョン・ドン・ベイカー (ジャック・コディ)

   ロバート・ライアン (アーサー・メイラー)

   ティモシー・ケリー (ジェイク・メナー)

   リチャード・ジャッケル (ケミー・チャーニー)

   シェリー・ノース (バックの妻)

   ビル・マッキーニー (バック・チャニー)

   ジェーン・グリア (アルマ・マクリン)

Vol.68 『組織』の続き

家の前に停めたタクシーから降りる二人の殺し屋(左)
エディに銃を向ける二人の殺し屋(右)

 オープニングはローアングルで撮った道路が映し出され、1台のタクシーが走り去ります。ガソリン・スタンドに車を停めて、スタンドの主人に道を尋ねてタクシーは走り出します。車内では後席に座った神父の服を着た男が、鞄から拳銃を出して運転手に渡します。やがて車は郊外のエディの家の前に停まり、二人は車から降りて家の横を歩いていきます。人の気配に気づいた犬が吠えだしますが、その家の主人が犬に静かにするように言います。二人の男たちは夫々銃を構えて、その主人を撃ち殺します。撃たれた男はエディ・マクリン、アール・マクリンの兄です。(殆ど台詞が無く無駄の無い演出と編集で、簡潔にテンポよく映像のみで伝えています。)

タクシーに乗って牧師が来た事を聞いたアルマ(左)
殺し屋に射殺されたエディ(右)

 ガソリン・スタンドに、アルマ・マクリンが運転するトラックが給油の為に停まります。スタンドの主人が、あんたの家に客が行ったと言います。アルマはどんな人が来たか聞くと、スタンドの主人がタクシーに牧師が乗っていたと言いました。アルマはこの二人は組織から送られた殺し屋であると気が付き、電話を借りると言って、車から降りて家に電話を掛けますが返答はありません。

お互いの近況を話すアールとベティ(左)
エディが殺された事をアールに伝えるベティ(右)

 刑務所内の作業場が映し出されます。看守がアールを探して出所を告げ、アールは私物を持って監房から出ます。着替えを終えて入所時に預けた私物を受け取り、待合室で待つ愛人のベティ・ハーロウに会います。(このシーンはバックにハーモニカの音が流れ、タイトルから続いてじゅうぎょうクレジットが表示されます。)彼女が運転する車での二人の会話でベティは独り身を通し、アールが妻子とは疎遠である事が分かります。二人はベティが予約していたモーテルに行き、部屋に入ってベティはアールの着替えをトランクから出します。しかし、急にお手を止めて思い詰めたような表情でアールの傍に行くと、アールはガウンを着た彼女の太ももを触ります。ベティが後退りをするので、アールが“どうした”と声を掛けます。ベティは直ぐエディの処に行こうと言います。アールが明日の朝に行くと言うと、彼女は困った切った表情でベッドに座り込みます。アールは彼女の近くに来て祖父の話をしていると、彼女は“許して”と言って脅迫された事とエディが殺された事を伝えます。泣きながらアールに抱き着くと、アールは彼女を突き放します。

銃を構えてアールの部屋に入る殺し屋(左)
殺し屋に銃を突き付けて殺人の依頼主を聞き出すアール(右)

 画面が変わって、車の中から一人の男がモーテルを監視しています。寝静まったのを確認して、アールが泊っている部屋に向かって行きます。ドアの前に立って胸の前で十字を切り、サイレンサー付きの銃を手にしてドアを蹴破って発砲します。ベッドに4発撃ち込んだと同時に入り口の横で待機していたアールに灰皿で殴られて、銃を奪われて椅子に座らされます。アールは銃口を殺し屋の喉元に突き付け、誰に雇われたか聞きます。殺し屋は殺されると言って白状しないので、アールは銃口を髪の生え際に向けて発砲します。弾は髪の毛を吹き飛ばします。アールの更なる質問に殺し屋は、雇主はジェイク・メナーで紹介者はジム・シンクレアだと白状します。アールは殺し屋を電話ボックスに連れて行き、メナーにアールは死んだと報告させて殺し屋を解放します。

ベティの火傷の痕を確認するアール(左)
見張り役に銃を突き付けてメナーの部屋に案内させるアール(右)

 画面が変わって車の中、ジェイク・メナーがいるロスアンゼルス.へ夜間に移動しています。ベティが脅されてモーテルを予約したと言い謝罪します。アールは何をされたか聞いたが彼女は答えないので、彼女の腕を見ると火のついた煙草を押し付けられた焼け跡が5個ついていました。夜が明けて車をホテルの前に駐車して、アールはジャック・メナーの部屋に向かいます。従業員専用のエレベーターで上の階に向かい、拳銃を手で隠し持って廊下の見張りに銃を突き付けて部屋にいる人数を白状させます、見張りと屋外の非常階段に行き、見張りの後頭部を銃座で打って気絶させます。見張りが手に持っていたサンブラスが落下するのをカメラが映します。

ボスたちの銃を向けて金を出すように指示するアール(左)
メナーの左手に狙いをつけるアール(右)

 アールはメナー達がいる部屋に急ぎ足で向かい、拳銃にサイレンサーを付けてドアをノックします。部屋の中から誰だと声がし、アールと答えるとチェーンロック付きのドアが少し開きます、アールはドアを蹴ってドアを開け、護衛を拳銃の銃座で殴り倒します。円卓を囲んで座っている7人のボスたちに財布を出すように言い、護衛にその財布とテーブルの金を集めさせてコートに包ませます。アールは“マクリン”と名乗り、“何故、俺を狙う”聞きます。メナーは兄弟とコディが組織の銀行を襲ったから、その報復で兄のエディを殺したと言います。アールは慰謝料25万ドルを組織は払えと言い、金を払うまでシマを荒らすと言ってそれは別勘定だと言います。メナーが勝手にしろと言うので、アールはいい指輪だなと言いながらメナーの背後に回ってメナーの左手の拳を撃ちます。動くと死ぬぞと言って、金を持って部屋から出て行きます。ホテルの玄関を出てベティが運転する車に乗り、北を目指して車は走り出します。

エディの店に現れた二人の殺し屋(左)    ”誰だっけ”と聞くエディ(右)

 画面が変わって、ステーション・ワゴンがエディの食堂の前に停まります。車から二人のハンターが降りて、銃を持って入って行きます。カウンター席に座るとコーヒーを注文して、店員にエディはいるかと尋ねます。店員が裏にいると言うと、その客は呼べと言います。その声を聴いていたエディが奥から出て来て、俺だと言って誰だっけと聞きます。昔の仲間の友達だと言うのでカウンターの奥に歩きながら、仲間の名前を聞くと“どうでもいい”と言います。エディは笑いながら包丁を持って食パンを持ち、パンを切りながら“そうだな”と言って“ツグミ撃ちか”と聞きます。男が“そうだ”と言うので、朝早く行かないと駄目だと言い、銃が大き過ぎると言います。鳥がバラバラになると言うと、男は“そうかい”と言って横の男に合図をします。もう一人の男は立ち上がって、入り口に置いた銃を構えます。それを見たエディは、銃の事ならそこにいる保安官に聞いてくれと言います。男は“馬券でも買いな、ついてるぜ”と言って出て行きます。保安官は“知り合いか”と聞くので、エディは“まあね”と言うと、店員は“いい連中だ”と言います。(この店員を演じているのは、エリシャ・クック・Jr.です。)

エディの葬儀(左)         アルマに24000ドルを渡すアール(右)

 俯瞰の画面に変わって、エディ・マクリンの葬儀のシーンになります。牧師が祈りを捧げる姿をカメラがズームインし、地中に下がっていく棺を見つめるアールが映されます。画面は変わって、エディの家の庭でアルマがアールに話しています。内縁の妻だから、この家はエディの子供のものになると彼女が語ります。アールは彼女に24,000ドルを渡しますが、彼女は受け取りません。エディは引退していたのに、弟の頼みで銀行強盗を手伝った結果殺されたと言います。そしてアールに足を洗うように言いますが、アールはエディの仇を取ると言います。彼女はお金でエディは戻らないと言いますが、アールは“落とし前”をつけると言って帰ります。

ボスのアーサー・メイラーに”面倒が起きた”と言うメナー(左)
エディの敵討ちの助っ人をコディに頼むアール(右)

 画面が変わって、アーサー・メイラーの邸宅の前に車が停まります。邸宅の敷地内のテニス・コートで、メイラーの妻のリタがコーチによるテニス・レッスンを受けています。その光景を椅子に座って眺めているメイラーの元に、ジェイク・メナーが現われて“ボス、面倒が起きました”と言います。メイラーは、それはお前の問題だと言って一蹴します。一方、アールはベティを連れてコディの店に行きます。裏口のドアをノックすると、ドアが少し開いて黒人が”閉店だ“と言います。アールが”“コディは”と言い、“マクリンが来たと言え”と言うと黒人の男はドアを開けます。コディは留守で、マッジが奥から出て来て仲間の近況を話します。やがてコディが現われて近況を話し、ベティを相棒として紹介します。二人でカウンター席に並んで座って、ビールを飲みながら兄のエディが死んだ事を伝えます。コディが俺の処にも来たが、どうゆう筋かとアールに聞きます。組織の銀行だった、兄貴の仇を討つから手伝えと持ち掛けます。コディは快諾しますが、女は置いて行けと言います。アールがベティは一緒だから、他の奴に助太刀を頼むと言います。それを聞いてコディは、渋々助太刀を引き受けます。

武器商人の銃からコディはコルト357マグナムを選びます(左)
アールはコルト45オートを選びます(右)

 二人が郊外の道路を走って行くと、アタッシュケースを持った年配の男の前で車に停めます。ここ年配の男は武器商人で車に乗せ、“マクリンだ”と言うと“信用するぜ”と言葉を返します。アールは銃が二挺必要だと言って、銃を見せて貰います。コディはリボルバーのコルト357マグナム、アールはコルト45オートを買うと、武器商人は半額で買い戻すと言います。アールは弾薬を100発ずつ欲しいと言うと、武器商人は戦争でもするのかと尋ねます。コディが“そうだよ”と答えます。

 次回に続きます。最後までお付き合い頂きまして、有難う御座いました。

『組織』 作品データ

1973年製作 105分 アメリカ

原題:THE OUTFIT

監督:ジョン・フリン

製作:カーター・デ・ヘイヴン

原作:リチャード・スターク

脚本:リチャード・スターク

撮影:ブルース・サーティース

編集:ラルフ・E・ウィンタース

音楽:ジェリー:フォールディング

出演:ロバート・デュパル (アール・マクリン)

   カレン・ブラック (ベット・ハーロウ)

   ジョン・ドン・ベイカー (ジャック・コディ)

   ロバート・ライアン (アーサー・メイラー)

   ティモシー・ケリー (ジェイク・メナー)

   リチャード・ジャッケル (ケミー・チャーニー)

   シェリー・ノース (バックの妻)

   ビル・マッキーニー (バック・チャーニー)

   ジェーン・グリア (アルマ・マクリン)

Vol.67 『組織』

 今回ご紹介するのは、ジョン・フリン監督の『組織』です。主役のロバート・デュパルは、若くも無く所謂二枚目の俳優ではありません。しかし、この映画を観ると分かりますが、組織に立ち向かう姿はカッコいいです。この映画も『突破口!』と同様に、マフィアの裏金とは知らずに強奪した男の話です。1973年の作品で、ジョー・ドン・ベーカーは相棒として出演しています。

【スタッフとキャストの紹介】

監督:ジョン・フリン(1932年3月14日~2007年4月4日)は、イリノイ州シカゴ生まれの映画監督です。彼はカリフォルニア州マンハッタンビーチで育ち、カリフォルニア大学ロサンゼルス校でジャーナリズムを学んで学位を取得しました。卒業後、1959年の『拳銃の報酬』で、ロバート・ワイズ監督の手伝いとして映画界入りしました。その後、セカンド・ユニットの監督を務め、1968年『軍曹』で監督デビューしました。この映画は戦争映画ではなく、ホモセクシャルを扱った映画です。この時代ではタブー視されていた題材に緒戦する凄い監督です。1971年『愛と死のエルサレム』、1973年『組織』、1977年『ローリング・サンダー』、1979年『摩天楼ブルース』、1987年『殺しのベストセラー』、1989年『ロックアップ』、1991年『アウト・フォー・ジャスティス』、1994『ブレインスキャン』、 2001年『密告の代償』等の監督をしています。フリン監督の作品は、主人公が相棒と組んで復讐する映画が良いですね。こじんまりと纏まってタイトに物語が進行し、リアルな緊張感があります。その他、1980年のTVドラマ『伝説のマリリン・モンロー』、1992年のケーブルTVドラマ「ネイルズ」、1992年「カリブ/愛欲の罠」を監督しています。フリン監督は、2007年4月4日に 自宅で就寝中に75歳で亡くなりました。

アール・マックリン役
ロバート・デュパル

 アール・マックリン役:ロバート・デュパル(1931年1月5日~)は、カリフォルニア州生まれの俳優・映画プロデューサーです。彼はメリーランド州アナポリスで育ち、メリーランド州セバーンスクールとミズーリ州セントルイスのピリンキビアに通いました。その後、イリノイ州エルザのピリンキビア大学で演劇の博士号を取得して1953年に卒業しました。1953年から1954年までアメリカ陸軍に入隊し、ジョージア州のキャンプ・ゴードンに勤務して上等兵で除隊しました。1955年にニューヨーク市のネイバーフッド・プレイハウスに2年間通い、サンフォード・マイナーズに師事しました。その頃のクラスメートは、ダスティ・ホフマン、ジーン・ハックマン、ジェームズ・カーンでした。デュバルはメ演技を学びながら、イシーズの事務員やマンハッタンの郵便局で郵便物の仕分けやトラックの運転手等をしていました。

 デュバルは、1952年にニューヨークのゲートウェイ・シアターで舞台デビューしました。戦後、1955年にゲートウェイ・シアターの舞台で復帰し、オーガスタ・シビック激情、バージニア州のマクリーン劇場、ワシントンDCのアリーナ・ステージに出演しましていました。1959年からテレビに出演するようになり、1961年から「裸の町」、「ルート66」、「弁護士プレストン」、「逃亡者」、「アウター・リミッツ」、「コンバット」、「F・B・I」に3話から5話に違う役でゲスト出演しました。テレビ映画の「ゴッド・ファーザー・テレビ完全版」でトム・ヘイゲン役や「将軍アイク」でドワイト・D・アイゲンハワー役を演じました。

 1962年に『アラバマ物語』で映画デビューし、1966年『逃亡地帯』、1968年『ブリット』、1969年『勇気ある追跡』、1970年『M★A★S★H マッシュ』、1971年『THX1138』、1972年『ゴッド・ファーザー』、1973年『組織』、1974年『ゴッド・ファーザーPARTⅡ』、1974年『鷲は舞いおりた』『ネットワーク』、1975年『キラー・エリート』等に出演しました。1979年『地獄の黙示録』でキルゴア中佐を演じて、ゴールデングローブ賞助演男優賞と英国アカデミー賞助演男優賞を受賞しました。1983年『テンダー・マーシー』ではアカデミー賞主演男優賞を受賞しています。1991年『ランブリング・ローズ』、1993年『ジェロニモ』、1998年『シビル・アクション』等に出演しています。

ジャック・コディ役
ジョー・ドン・ベーカー

 ジャック・コディ役はジョー・ドン・ベーカーです。彼の略歴は『突破口!』をご覧ください。

ベット・ハーロウ役:カレン・ブラック

 ベット・ハーロウ役のカレン・ブラック(1939年7月1日~2013年8月8日)は、イリノイ州パークリッジ生まれの俳優・脚本家・歌手・ソングライターです。ブラックは10代の頃から舞台俳優を目指し、メインイースト高校に通いながら夏のストックシアターで仕事を探していました。トイレ掃除から始めて16歳頃には小道具係になり、コーラスラインで歌うようになって17歳で本格的に俳優としてデビューしました。その後、インディアナ州ラファイエットのジェファーソン高校に転校し、バヂュー大学に1年間通って、ノースウエスタン大学に編入して演劇芸術を専攻しました。1960年に大学を中退してニューヨークに移転し、秘書、ホテルのフロントデスク、保険事務所等の雑用をこなして生活費を得ていました。1961年ブロードウェイの舞台で代役として出演するようになり、1965年の「プレイルーム」で正式にブロードウェイ・デビューします。1966年の「After the Fall」に出演し、エンジェル賞の最優秀助演女優賞を受賞しました。

 1960年にインディペンデント映画の『プライムタイム』に脇役でスクリーン・デビューし、1966年にフランシス・フォード・コッポラ監督の『お兄ちゃんになるまえに』に出演しました。ブラックはロスアンゼルスに移転し、1967年から「F・B・I」、「ポール・ブライアン」、「バークレー牧場」、「マニックス」、「特捜隊アダム22」等のテレビ・シリーズにゲスト出演しました。1969年『イージーライダー』、1970年『ファイブ・イージー・ピース』でゴールデングローブ賞助演女優賞とニューヨーク映画批評家協会の助演女優賞を受賞しました。1971年『生き残るやつ』、1973年『組織』、1974年『華麗なるギャツビー』で二度目のゴールデングローブ賞助演女優を受賞しました。1975年『イナゴの日』『ナッシュビル』、1975年『ファミリー・プロット』・『家』、1977年『カプリコン・1』、1978年『キラー・フィッシュ』、1981年『ココ・シャネル』、1986年『スペースインベーダー』等に出演しました。

 その後、インディペンデント映画にも出演するようになり、1998年『クレイジー・ナッツ 早く起きてよ』、2001年『ファング・オブ・モンスター』、2003年『死霊危険地帯 ゾンビハザード』『マーダー・ライド・ショー』等のホラー映画に出演しています。ブラックは2013年8月8日にロザンゼルスのウエストヒルズ病院で、膨大部癌の為74歳で亡くなりました。

アーサー・メイラー役
ロバート・ライアン

 アーサー・メイラー役のロバート・ライアン(1909年11月11日~1973年7月11日)は、シカゴ生まれの俳優・活動家です。カトリック教徒のライアンは、イエズス会の大学進学高校のロヨラ・アカデミーで学び、ダートマス大学に入学しました。大学でフットボールと陸上競技のレターマンとして活躍し、ボクシングではヘビー級のタイトルを保持しました。1932年に大学を卒業後、アフリカに行く船で働いたり、ワークス・プログレス・アドミニストレーション(WPA)の労働者やモンタナ州で牧場労働者として働いていました。1936年に父親がなくなり帰国して、デパートで服のモデルした後、俳優になる為に1937年シカゴの小さな劇団に参加しました。その後、ハリウッドのマックス・ラインハルト・ワークショップで演技を学びました。1939年の戯曲「Too Many Husbands」に出演し、パラマウント社からオファーを受けて1939年11月パラマウント社と6か月の契約をしました。1940年『ゴールデングローブ』で当初主役の予定でしたが、重要な脇役で出演して初めてクレジットされました。この映画で知り合ったエドワード・ドミトリ監督の映画にその後出演するようになります。1940年『ゴースト・ブレーカーズ』・『地獄の女』・『北西騎馬警官隊』・『続・テキサス決死隊』等に端役で出演し、パラマウント社を去りました。その後、ライアンはブロードウェイで、クリフォード・オデッツの戯曲「クラッシュ・バイ・ナイト」に1941年から1942年までの49回公演に出演しました。ライアンはRKO社と契約し、1943年『ボンバー・ライダー/世紀のトップ・ガン)』『青空に踊る)』『夫は還らず』等に出演しました。
 ライアンはアメリカ海兵隊に入隊し、1944年1月から1945年11月まで南カリフォルニアのキャンプ・ベンドルトンで訓練教官をしました。海兵隊を除隊後、ライアンはRKOに戻って1947年の『拳銃街道』に出演しました。同年の『浜辺の女』は興行的に失敗しましたが、人種差別を扱ったドミトリク監督の『十字砲火』は大成功を収めてライアンの演技も認められます。1948年『ベルリン特急』、1949年『暴力行為』と出演し、『罠』ではボクシングの八百長試合に逆らうボクサーを演じました。1950年『生まれながらの悪女』、1951年『荒野の三悪人』『太平洋航空作戦 』『危険な場所で』等に出演しました。1952年に戯曲「クラッシュ・バイ・ナイト」を映画化した『熱い夜の疼き』、1953年『海底の大金塊』に出演し、『裸の拍車』では悪役を演じました。1955年『東京暗黒街・竹の家』、1956年『誇り高き男』の保安官役では見事なファスト・ドローを披露し、アンソニー・マン監督の傑作戦争映画1957年の『最前線』では主役の疲弊した中尉を好演しています。1959年にロバート・ワイズ監督の『拳銃の報酬』で、人種差別をする男を演じています。1961年『キング・オブ・キングス』、1962年『史上最大の作戦』、1965年『バジル大作戦』と大作に出演し、1966年『プロフェッショナル』、1967年『特攻大作戦』『墓石と決闘』、1968年『アンツィオ大作戦』等に出演しました、1963年『ワイルドバンチ』・『ネモ船長と海底都市』、1972年『狼は天使の匂い』、1972年『ダラスの熱い日』『組織』等に出演しました。ヘビースモーカーのライアンは、1970年リンパ腺の手術不能な癌に罹っていました。1973年7月11日にニューヨーク市で肺癌の為63歳で亡くなりました。

バックの妻役:シェリー・ノース

 バックの妻役はシェリー・ノースです。彼女の略歴は『突破口!』をご覧ください。

次回の本編に続きます。最後までお付き合い頂きまして、有難う御座いました。

※文中の太字になっている作品は、日本でDVDが発売されています。

Vol.66 『突破口!』の最終章

『突破口!』のトップはこちら

エベレットを殴るモリー

 モリ―は偽造屋のエベレットの所に行き、チャーリーがパスポートを受け取りに来るのを待ちます。(ここでモリ―がエベレットに裏手でビンタをしてお楽しみに入りますが、女性を殴るシーンは1940年代・1950年代の映画でよく見られました。恐らく当時の映画に対する、シーゲル監督のオマージュかと思います。)

チャーリーに警告する保安官(左)
チャーリーは留守だと保安官に言いに来たターフ夫人(右)

 画面が変わって翌日の朝、お馴染みのターフ夫人が玄関前の牛乳を取に出てハウスの方を見ます。多くの警官が銃を持って、チャ-リーのトレーラーハウスを囲んでいます。保安官が、拡声器でチャーリーに出てくるように警告しています。ターフ夫人はロッキングチェアーに座って眺めています。保安官がドアに体当たりをして中に入ると、室内は無人でした。そこにターフ夫人が現れて、呆れ顔で“誰もいないよ”と言います。

ダイナマイトを購入するチャーリー(左)
銀行の本店に電話をするチャーリー(右)

 チャーリーがダイナマイトや時限装置を購入しています。支払いが終わってから店主は何に使うのかと聞くと、チャーリーは“さあね”と言います。(このシーンの店主の表情が絶妙で、良い演技ですね。)チャ-リーは自社の飛行場からウエスタン信託祇行本店に電話をして、頭取のボイルと話したいと言います。秘書のフォートが、ボイルが不在だと伝えて用件を伺いますと言います。チャーリーは直接話すと言ってから、秘書の名前を聞いて電話を切ります。チャーリーはスーツの上からオーバーオールを着て、外に待機させていた複葉機に乗ってリノへ飛び立ちます。

少年から薔薇を買うチャーリー(左)   ボイルに電話をするフォート(右)

 リノのウエスタン信託銀行の本店があるビルの近くでチャーリーは車の中からビルを見上げ、路上で花を売っている少年から手持ちの薔薇を全て買います。夜になってチャーリーはそのビルの近くで、秘書のフォートが出て来るのを車の中で待ちます。やがてフォートがビルの玄関に着いた時、ドアマンが頼まれ物のバラを渡します。誰から贈られたか分からないバラを受け取った彼女は車で帰宅します。チャーリーはその後を尾行します。フォートが帰宅して間もなく来客があり、誰か尋ねるとお届け物と言われて不審に思いながらドアを開けます。ドアを開けるとチャーリーが部屋の中に入り込んで、ボイルに会いたいと言って彼女に電話をさせます。

ボイルに取引の話をするチャーリー(左)
金の受け渡し条件を聞くボイル(右)

 モリ―とビリヤードをやっていたボイルが電話に出て、チャーリーが金を返すと告げます。ボイルはなぜ金を返すのか聞くと、チャーリーはゴリラ男に命を狙われているからと言います。ボイルはニヤッと笑って受け渡しの場所と時間を聞きます。チャーリーは一人で来るように言い、落ち合う場所と時間をボイルに伝えます。半径500ヤード以内に人がいたら取引は中止だと言って電話を切ります。(電話を切った後のボイル役のジョン・ヴァーノンの表情が素晴らしいですね。)

モリ―が受け渡し場所に行くと言うと拒否するボイル(左)
お楽しみ後のチャーリーとフォート(右)

 電話は終わったボイルにモリ―が“バリックか?”と聞くと、ボイルは“お前は来るんじゃない”と言います。モリ―が“何故?”と聞くと、ボイルは“500ヤード以内に誰かいると取引は終わりになる”と言います。モリ―は“501ヤードの所に”と言いかけると、ボイルは“駄目だ”と言います。(このシーンのモリ―は、ボイルへの疑惑を深めた表情をしています。)電話を終えたチャーリーにフォートは、止めた方が良いと言って、“彼は信用出来ない”と言います。チャーリーはそんな事を気にしないで、目の前の円形ベッドを指差してこんなベッドは初めてだと言います。お楽しみが終わって、ベッドに並んで横になっています。フォートが死なないでと言うと、チャーリーは死なないように努力すると言います。彼女は“あなたが南南西を向いて寝れば寝る”と言うと、チャーリーは“南南西か”と言いながら彼女の上に乗っかります。(最近の映画のようなお楽しみのシーンは御座いません。)

上空から地上を確認をするチャーリー(左)
ボイルと仲間の様な芝居をするチャーリー(右)

 翌朝、チャーリーは複葉機で指定した場所に向かいます。ボイルが車で現れ、広い敷地の廃車置き場から離れた場所に車を止めます。車から降りた彼は、上空を見回します。モリ―は廃車に紛れて車を停めて、車内に潜んでいます。やがて遠くから飛行音が聞こえ、チャーリーは上空を旋回しながらボイルに連れがいないか確認します。やがてボイルの車が停めてある方に飛行機を着陸させてボイルの方に駆け寄り、“上手くいったな”と言いながらボイルに抱き付きます。ボイルは“何の真似だ“と言いますが。チャーリーはお互いが仲間のように振舞います。

二人の様子を見て激怒するモリ―(左)
飛行機の離陸を車で阻止するモリ―(右)

 遠くからそれを見ていたモリ―は、車を急発進して二人の元に飛び出します。モリ―の車が向かってくるのを見て、チャーリーは”騙したな“と言ってボイルを突き放し、飛行機に向かって走ります。モリ―は笑顔でボイルを跳ね飛ばし、チャ-リーが乗る飛行を追いかけます。ここでチャーリーは離陸出来ないかのような振りをして、地上を走り回ってモリ―の車との追っ掛けっこを行います。

ひっくり返った飛行機の操縦席で逆さまになったチャーリー(左)
ポケットから車のキーを取るモリー(右)

 チャーリーの操縦する飛行機が止まった時にひっくり返り、チャーリーは操縦席で逆さまになってぶら下がっています。それを見たモリ―は笑いながらチャーリーに近づいて”しぶとい男だ“と言います、チャーリーはモリ―に金を渡すから助けてくれと言うと、モリ―は金が先だと言います。チャーリーはポケットの車のキーを取るように言い、金は青いシボレーのトランクにあると言います。

ダイナマイトの爆発で爆死するモリ―(左)
紙幣をトランクに投げ込むチャーリー(右)

 早速モリ―が車のトランクを開けると、中には奇妙な部品とサリバンの死体が入っていました。途端に爆発が起こり、モリ―は吹き飛ばされて爆死します。チャーリーは操縦席から這い出し、黒いごみ袋を取り出して用意していたツートーン・カラーのセダンのトランクを開けます。一つのゴミ袋を開けて紙幣を取り出し、燃えているシボレーのトランクに紙幣を投げ込みます。周辺にも紙幣は散らばり、オーバーオールを脱いでトランクに投げ入れます。セダンに乗ってエンジンを掛けますが直ぐにはエンジンが掛からず、やっとエンジンが掛かってその場から去ります。

廃車置き場から走り去るチャーリーが運転する車(左)
燃えるオーバーオール(右)

 カメラはやや俯瞰で廃車置き場から去るチャーリーの車を映し、視点を変えて燃えている車のトランクの方に向かいます。燃えるオーバーオールが映し出され、オープニング・タイトルと同じ映像になり映画は終わります。(全てチャーリーが予想した通りに事が運びました。歯医者でサリバンのカルテは抜き取り、彼の歯のレントゲン写真はチャーリーのカルテに入っています。これでサリバンの死体はチャーリーとなり、これから彼は別人となって悠々自適の生活ですね。)最後までお付き合い頂きまして、有難う御座いました。

『突破口!』 作品データ

1973年製作 111分 アメリカ
原題:CHARLEY VARRICK

監督:ドン・シーゲル

製作:ドン・シーゲル

製作総指揮:ジェニングス・ラング

原作:ジョン・リーズ

脚本:ハワード・ロッドマン、ディーン・リーズナー

編集:フランク・モリス

音楽:ラロ・シフリン

ウォルター・マッソー:チャーリー・ヴァリック

ジョー・ドン・ベイカー:モリ―(殺し屋)

アンドリュー・ロビンソン:ハーマン・サリバン(相棒)

ジャクリーン・スコット:ネイディーン・ヴァリック(妻)

フェリシア・ファー:シビル・フォート(秘書)

シェリー・ノース:ジュエル・エベレット(偽造屋)

ジョン・ヴァーノン:メイナード・ボイル(マフィアのボス)

マージョ・ベネット:(隣人のターフ夫人)

Vol.65 『突破口!』の続きの続き

宿泊先に着いたモリ―を出迎えるビキニ姿の若い子(左)
モリ―に挨拶をするビバリー(右)

 モリ―は昼夜を掛けて車を走らせ、宿泊先の24時間営業の放牧場に着きます。そこは周囲が金網で囲われていて、その中に建物があります。モリ―が金網の扉の横のボタンを押すと、建物の中からビキニ姿の若い子が出て来て扉の開錠をして中に案内します。部屋に入るとビキニ姿の若い子達が待機していて、モリ―を出迎えます。ここの本業は売春宿で女の子がいつもの客のように話すと、モリ―はバカと話に来たんじゃないと言います。ここを仕切っているビバリーが現れ、モリ―に挨拶をしてなんでも云いつけるように言います。モリ―が“ベッド”と言うと、ビバリーは特別室に案内します。モリ―は翌朝の朝食を注文すると、ビバリーが“お楽しみの方は?”と聞きますが、モリ―は“金で寝る女は好きじゃない”と断ります。

ターフ夫人から渡された新聞を見るサリバン(左)
サリバンに外には出ないように指示するチャーリー(右)

 画面が変わってトレーラーハウス、ターフ夫人が登場して石を拾ってドラム缶に投げ入れます。トレーラーハウスの中では、サリバンが奪った金が無くなっている事に気が付き、チャーリーと叫びながら外に飛び出します。外ではターフ夫人が、銀行強盗の記事が書かれた朝刊を郵便受けから勝手に取り出して読んでいます。サリバンは走りながらターフ夫人に、チャーリーを見なかったか聞きます。ターフ夫人は銀行強盗の記事が出ていると言いながらサリバンに新聞を渡し、チャーリーは奥さんを探しに行くと言って早朝出て行ったと言います。サリバンがハウスに戻ると電話機が鳴っていました。チャーリーからの電話で部品の買い出しで町に来ていると言うと、サリバンは金の隠し場所を聞きます。チャーリーは安全な場所に隠したと言い、やる事が沢山あるから外に出ないように伝えて、夜には帰ると言って電話を切ります。

トムにパスポートの偽造屋を紹介して貰うチャーリー(左)
ジョンからの情報を聞くモリ―(右)

 チャーリーは銃砲店に入り、車椅子の店主のトムにアルの紹介で来たことを告げます。トムはアルの風貌を訪ね、アルの友人か確かめます。チャーリーは偽造パスポート屋の紹介を依頼すると、500ドルと言うので高いと言ったら600ドルに値上げされます。(1973年の1ドルは、250円くらいです。)600ドル払って偽造パスポート屋の名刺を貰い、トムに大金を隠す場所を聞きますが、連絡先を聞かれたので又来ると言って店を出ます。モリ―が寝ている部屋にビバリーが電話機を持って入ってきます。ジョンからの電話で、トム銃砲店に行くように指示があります。

支店長のヤングと話をしたいと言うボイル(左)
ボイルに支店長には今会えないと伝える州検事(右)

 画面が変わって、ウエスタン信託銀行のニューメキシコ支店に頭取のメイナード・ボイルが現れます。中に入ろうとすると止められたので、支店長のハロルド・ヤングに会いたいと言います。会うには検事の許可が必要だと言って、男は中に入ります。その時ブランコに乗っている女の子がボイルに声を掛け、押してくれるように頼みます。ボイルが女の子の背中を押していると検事が出て来て、何の用か尋ねるので支店長に会いたいと言います。ボイルが話しながら女の子の背中を押しているので、検事が寄って来て今は会えないと言います。ボイルが支店長逮捕したのかと聞くと、検事は逮捕していないが全員が容疑者だと言い、ボイルの滞在先を訪ねて連絡するように伝えると言って銀行に戻ります。(この何気ないブランコのシーンは、シ-ゲル監督らしい演出ですね。)

偽装屋のエベレットにパスポートの偽造を依頼するチャーリー(左)
追加料金を払うチャーリー(右)

 チャーリーは偽造屋のジュエル・エベレットのスタジオに行きます。車いすのトムの紹介だと言って、トムの名刺を渡します。彼女に偽造パスポートを2通造るように依頼すると、2通で500ドルと言われます。彼女はチャーリーの写真を撮り、お金を受け取ります。サリバンの顔写真は彼の免許証からコピーするように言うと、彼女が完成は2日後と言うので明日の6時までにチャーリーは言います。特急料金で更に500ドルを請求するので、お金を渡して夜中の12時に受け取ると言います。帰りがけにプラスチック容器に入ったキャンディを1本取って“貰うよ”と言ったら、彼女は“500ドルよ”と言うのでチャーリーはキャンディを諦めて帰ります。

トムの店に現れたモリー(左)    チャーリーに突き飛ばされたトム(右)

 画面がかわって、モリ―がトムの銃砲店に表れます。トムにモリ―だと名乗ると、とっておきの情報があるが金を出せと言います。モリ―は心がけ次第で金は稼げると言うと、トムが安売りはしないと言ってウィスキーを飲みます。モリ―はニッコリ笑って、車椅子のトムをカウンター越しに強く押します。トムは後ろにあった棚にぶつかり、車椅子ごとひっくり返ります。モリ―は話を聞かせて貰おうかと言います。(その後の無用な暴力シーンは省略されていますが、相手が身体障者でもモリ―は容赦ない暴行を加える事は充分に想像できます。)

ヤングにマフィアの金を渡した訳を聞くボイル(左)
ボイルの話に怯えるヤング(右)

 ボイルと支店長のヤングが、郊外の牧場で話をします。ボイルは組織から疑われていると言い、何故ヤングの支店を選んだのか聞かれると答えようがなかったと言います。マフィアの隠し金の事は、俺とお前しか知らない。その金が金庫に入った直後に奪われたのは、内部の犯行だと思われているとボイルが言います。ヤングはボイルに偶然だと言いますが、マフィアは偶然を信じないとボイルが言い、どうしてマフィアの金を渡したんだと問い詰めます。ボイルはヤングに身を隠すように言い、見つかったら拷問されて殺されると言います。ボイルは、すっかりおびえ切ったヤングを連れ帰ります。

パイプでノックするモリ―(左)
痛めつけたサリバンに金とチャーリーの居場所を執拗に聞くモリ―(右)

 モリ―が偽造屋エベレットのスタジオに現れ、チャーリーの名刺を手に入れてトレーラーハウスに向かいます。モリ―は郵便受けのハウスの番号を見て、車で近付き“チャーリー・ヴァリック”と二度大声で叫ぶと、隣人のターフ夫人が戸を少し開けて留守だと言います。モリ―が仕事の話で来たと言うと、ターフ夫人は隣のサリバンに話すように言います。モリ―は車から降りて、サリバンのハウスのドアをパイプでノックした序に吸殻を出しています。サリバンが留守だと言うと、モリ―は空中散布を頼みたいと言い、明日は来られないから名刺を渡すと言います。サリバンはドアを少し開けますが、モリ―は暗くて名刺を探せないと言ってドアを開けさせます。部屋の中に入ったモリ―は、名前を確認すると、いきなり顔を殴って膝蹴りをし、強烈な一撃を腹に加えて投げ飛ばします。床に倒れたサリバンを起こして椅子に座らせて、もう一度腹を殴ってから“金は何処だ”と聞きます。肋骨が折れたサリバンが白状しないので、モリ―は質問を変えてチャーリーの居場所を聞きます。サリバンは知らないと言うと、モリ―が置いてきぼりにされたのかと聞きます。事情を知らないサリバンは置いてきぼりにされたと言うと、モリ―はどうして免許証を渡してパスポートを造ったか聞きます。サリバンは免許証を持っていると言ってモリ―に見せようとしますが、免許証はありません。モリ―はサリバンを投げ倒して“金はどこだ”と聞きますが、本当に知らないサリバンは知らないと答えてチャーリーが金を返すと言っていた事を伝えます。モリ―が何故金を返すのかと聞くと、サリバンがマフィアの鐘だからと答えます。モリ―は裏で糸を引いているのは誰だ、ヤングかボイルかと聞きますは、サリバンは知らないと答えると、モリ―はため息をついて、あんたじゃ話にならないと言ってこのシーンは終わります。(このシーンでのモリ―の堂々としたプロの仕事ぶりと、痛めつけられていくサリバンとの対比で、モリ―の恐ろしさがよくわかります。)

元気が無いヤングに声を掛ける保安官(左)  ピストル自殺したヤング(右)

 画面が変わって銀行で、保安官が支店長に元気がないなと声を掛けます。支店長が大丈夫だろ言って、部屋から出て行く保安官にドアを閉めるように言います。検事と保安官が銀行に待機していた二人の強盗の事を話している時に、支店長室から銃声がして支店長が自殺をしていました。警官たちは放置されていた車両を調べ、発見されたマッチを手掛かりに捜査を開始します。

モリ―に殴り殺されたサリバン(左)
”用心しないからだ”と言うチャーリー(右)

 トレーラーハウスから出てきたモリ―は、車でその場を去ります。近くの茂みに隠れていたチャーリーが現れ、ハウスの中に入ります。そこには惨殺されたサリバンの遺体がありました。チャーリーは死んだサリバンに”用心しないからだ“と言います。次回に続きます。最後までお付き合い頂きまして、有難う御座いました。

『突破口!』 作品データ

1973年製作 111分 アメリカ
原題:CHARLEY VARRICK

監督:ドン・シーゲル

製作:ドン・シーゲル

製作総指揮:ジェニングス・ラング

原作:ジョン・リーズ

脚本:ハワード・ロッドマン、ディーン・リーズナー

編集:フランク・モリス

音楽:ラロ・シフリン

ウォルター・マッソー:チャーリー・ヴァリック

ジョー・ドン・ベイカー:モリ―(殺し屋)

アンドリュー・ロビンソン:ハーマン・サリバン(相棒)

ジャクリーン・スコット:ネイディーン・ヴァリック(妻)

フェリシア・ファー:シビル・フォート(秘書)

シェリー・ノース:ジュエル・エベレット(偽造屋)

ジョン・ヴァーノン:メイナード・ボイル(マフィアのボス)

マージョ・ベネット:(隣人のターフ夫人)

Vol.64 『突破口!』の続き

オープニングの夜の山並み(左)   “CHARLEY VARRICK”のタイトル(右)

 オープニングで月が映し出され、カメラが引いて遠くに山並みが見える夜のシーンに主演のウォルター・マッソーの名前が出ます。次に“CHARLEY VARRICK”と書かれた衣服のようなものが燃えているシーンが映画のタイトルとなります。画面は遠くに山並みが見える田園風景の朝です。牧場が映し出され、のんびりとした日常生活を描いています。そして、そこの町の人々の暮らしぶりが分かるような何気ないシーンに続きます。(この間クレジットが画面の片隅に表示されますが、出演者の最後に“ドナルド・シーゲル”と書かれています。)

ウエスタン信託銀行の看板(左)     銀行前に停まったリンカーン(右)

 画面が変わってニューメキシコ州のウエスタン信託銀行の看板が映し出されます。カメラは壁伝いに上に上がり、旗の間から遠くに車が見えた処からカメラが下がります。銀行の前に黄色のリンカーンが停車します。(1970年代のアメ車は大きいです)

変装したチャーリーと妻のネイディーン(左)  二人に声を掛ける警官(右)

 助手席には老人に変装したチャーリー、運転席には妻のネイディーンがいます。銀行前に停車している車を見て、パトカーカーが来ます。警官が銀行前に停車しないように注意しますが、チャーリーが包帯を巻いた左足を見せて、小切手の換金だけだから直ぐ終わると言います。ネイディーンが、夫は私を信用していないので換金させてくれないと言い、二人が言い争います。それを見ていた警官は、早く車を出すよう言って去ります。

本部に車のナンバーを照会する警官(左)
支店長に小切手を見せるチャーリー(右)

 チャーリーが銀行に入って行った後に、画面はパトカーの車内に変わります。警官はナンバープレートから盗難車ではないかと思い、本部に連絡をしてナンバーの照会を依頼します。銀行ではチャーリーが出した小切手が他行のものなので、支店長が出てきます。

マスクを付けたアルとサリバンが登場(左)
支店長に銃を突き付けるh-万(右)

 ここからのんびりムードは終わり、緊迫して画面になります。マスクを付けた二人の男が銃を持って現れ、チャーリーも銃を構えて銀行強盗に早変わりします。相棒のサリバンがカウンターの中に入って現金を漁ります。(サリバンは白い布で自分が触った所の指紋を拭き取ります。この描写で彼等はプロである事が分かります・)チャーリーは支店長に金庫を開けるように言いますが、困惑して直ぐに金庫を開けませんでした。チャーリーが支店長の足を蹴り、サリバンが後ろから拳銃を頭に押し付けると金庫を開けます。その頃、パトカーに本部から連絡があり、照会した車が盗難車だと分かります。(このシーンで二人の警官のホルスターを映し、ホルスター内に銃を固定するストラップを外す処はリアリティがあり緊張感が出ています。)

支店長に銃を突き付けて別の金庫を開けるように言うチャーリー(左)
別の金庫から出された革のバッグ(右)

 銀行では奪った金が少ないとサリバンが言うと、チャーリーは支店長にもっと金を出すように言います。支店長は冷や汗を流しながらもう無いと言いますが、チャーリーに銃を突き付けられて渋々別の金庫を開けます。支店長が中から革のカバンを出したので、中身を問いただすと譲渡不能の証券だと言います。

バッグの中の免許証を探すふりをするネイディーン(左)
バッグの中から銃を撃つネイディーン(右)

 その頃、パトカーが銀行に戻ってきて、一人の警官がネイディーンに免許証を見せるように言います。ネイディーンはバックの中を探すようにしながら、バックの底を警官の方に向けてバックの中から銃を発砲して警官を射殺します。続けて車の後ろ側にいた警官も撃ちますが、その警官は倒れながら銃を発砲します。その弾はドアに当たります。

パトカーに衝突後ボンネットが開いたリンカーン(左)
建物に衝突して停まった保安官のパトカー(右)

 銀行では警備員の傍で銃を向けていた仲間のアルが、外の銃声を聞いて横を向いた隙に警備員がアルのもう一丁の銃を奪ってアルを射殺します。チャーリーとサリバンは、警備員を射殺して逃げ出します。ネイディーンは二人が乗ったと同時に車を発進しますが、前に止まっているパトカーを引掛けてしまい、ボンネットが開いた状態で走ります。駆け付けたもう一台のパトカーとは、側面を接触しながら走り去ります。パトカーは建物の一部を壊して、駐車していた車にぶつかって止まります。パトカーに乗っていた保安官は、本部に銀行強盗があった事を伝え、非常線を張るように指示します。

警官の生存を確認した保安官(左)
保安官にリンカーンのナンバーを知らせる少年(右)

 保安官は銃撃現場で一人の警官の生存を確認し、銀行に入ろうとした時に少年がリンカーンのナンバーを知らせに来ます。(この少年役を演じたのは、チャールズ・マッソーでウォルター・マッソーの息子さんです。)逃走中のリンカーンは多少の蛇行をしながら走りますが、スピードを落として道路脇に止まります。そこでチャーリーはネイディーンが銃で撃たれた事を知ります。銀行では保安官と支店長が事件の報告先の話をしていて、支店長は銀行員のベスタに地方検事に連絡するように言い、小声でリノのメイナード・ボイルにも連絡するように言います。

奪った金を容器に入れる二人(左)   点火装置を設置するチャーリー(右)

 妻のネウディーンを助手席に座らせ、チャーリーは変装を取りながら運転して山中に向かいます。山中の車を乗り換える場所に車を止め、仕事用のバンに用意してある2本の円柱形の容器に奪った金を入れ、その上からカモフラージュする詰め物をして蓋をします。サリバンはリンカーンの周りに火薬を撒き、チャーリーは妻の介抱をしますがネイディーンは亡くなります。妻の指から指輪を外し、リンカーンの周りに火薬を撒いて、妻の身体にも火薬を掛けます。ガソリンキャップを開けて布を垂らし、その布に点火装置を仕掛けてその場を去ります。

積み荷を確認する警官(左)     山で突然爆発が起こります(右)

 山を下りて幹線道路を走りながら、サリバンがチャーリーの以前の仕事の事を尋ねます。チャーリーは曲芸飛行をやっていたが、死にそうになって飛行機での農薬散布の仕事していた。しかし、コンバインが出回って仕事が減ったので、銀行強盗を始めたと話します。その時、対向車線をパトカーが走って来ます。すれ違ったパトカーはUターンして、チャーリーに停車するように指示します。サリバンは拳銃を出して警官を撃とうとしますが、チャーリーは拳銃をしまうように言います。警官は営業許可証を見てから荷物の確認をします。サリバンは銃を取り出して、助手席で銃を構えます。チャーリーが容器の中身の説明をしている時に、遠くの山の方で爆発があり、警官は爆発現場に向かってパトカーを走らせます。(劇中マッソーが何度もガムを書くシーンが出てきますが、ヘビースモーカーだった彼が禁煙したアピールなのかと思ったりしました。)警官が去った後、チャーリーは橋の上から犯行に使った銃を川に捨てます。サリバンにも銃を捨てるように言い、サリバンは渋々銃を捨てます。仲間のアルの銃も捨てて、自宅に向かいます。

モリ―夫人と話すチャーリー(左)     奪った金の多さに驚く二人(右)

 トレーラーハウスの自宅に着き、トレーラーハウスを叩きながらネイディーンに声を掛け、隣人のタフ・モリ―夫人の所に行って妻を見なかったか尋ねます。モリ―夫人は見なかったけど、逃げられたのかと良います。この辺は女たらしがいるから、気を付けないと言い、私も言い寄られていると言い出します。チャーリーは適当に返事をして、トレーラーハウスに向かいます。(モリ―夫人が登場するシーンでは平凡な日常に戻るので、それが映画にリアリティを与えているように思います。)サリバンがトレーラーハウスに運び込んだ容器を開けて、予想以上の大金が入っていました。サリバンは大喜びですが、チャーリーは額が多すぎるので疑惑を抱きます。あの地方銀行なら3万ドル位だが、ざっと見積もっても50万ドル以上あります。その時ラジオの速報があり、被害額は2000ドル弱だと時放送されます。これを聞いてチャーリーはマフィアの隠し金だと確信し、身を隠して3~4年金に手を付けないようにすると、サリバンに説明しますが彼は事の重大さを理解しません。

モリ―に無線で仕事を依頼するボイル(左)
ジョンに賭けの負け金を払うラフティ役のシーゲル監督(右)

 画面が変わってボイルのオフィス、ボイルは秘書のフォートに配達人を手配するように指示します。ボイルは無人の会議室に入り鍵をかけ、無線機を撮り出して殺し屋のモリ―に仕事の依頼をします。ウエスタン信託銀行トレス・クルーセス支店で75万ドル盗まれたので、金の回収と後始末をするように指示します。モリ―は配達人のジョンのオフィスに向かいます。ジョンのオフィスは中華店料理のレストランの地下にあり、遊戯室になっていてジョンと卓球をやっているマーフィ役がシーゲル監督です。賭けに負けてお金を払って出て行きます。

モリ―を説得していごとを依頼するジョン(左)
男を殴り倒して車を回収するモリ―(右)

 ジョンはモリ―と奥のオフィスに入り、前払い金を渡し現在情報が無いと言うと、ジョンは仕事を断ります。ジョンは組織の内部情報を手に入れると言って、モリ―を説得します。ジョンはニューメキシコのホテルを手配し、車は訳有りの男から回収して使うように依頼します。モリ―は勝手に車を奪った男を殴り倒し、車を回収してニューメキシコに向かいます。(カメラが横にパンして、窓から父親が殴り倒されたのを見ていた不安げな子供が映されます。何気ないこんなシーンが挿入されるが、シーゲル監督の魅力ですね。)

飛行機で逃走す事を提案するサリバンと一応承諾するチャーリー

 画面が変わって月が映し出され、サリバンが酒を飲んでいます。チャーリーに呼ばれてトレーラーハウスに入ります。サリバンは奪った金の置き場所を聞き、金額を聞きます。チャーリーは76万5180ドルだと答えて、サリバンは3分の1で自分は3分の2を貰うと言います。サリバンは納得し、二人でテレビ・ニュースを観ます。妻を乗せた車を燃やした事で山火事になった報道があり、発見された車は銀行強盗の逃走車と認定し、手掛かりは遺体の歯形だけなので州内の歯医者を調べていると保安官が言います。サリバンは道路封鎖されても飛行機で逃げればいいとチャーリーに言います。飛行場も見張られているから無理だとチャーリーが言うと、サリバンは着陸出来る所なら何処でも良いだろうと言います。(このシーンのアンディ・ロビンソンの表情は、金に目が眩んだ若者の演技で本領発揮です。)

妻のカルテを抜き取るチャーリー

 チャーリーは一応承諾したような返答をし、ネイディーンのカルテを処分する為に歯医者に行きます。歯医者に侵入したチャーリーはネイディーンのカルテを抜き取り、サリバンのレントゲン写真を抜き取って自分のレントゲン写真と入れ替えて、自分のレントゲン写真を持ち帰ります。次回に続きます。最後までお付き合い頂きまして、有難う御座いました。

『突破口!』 作品データ

1973年製作 111分 アメリカ
原題:CHARLEY VARRICK

監督:ドン・シーゲル

製作:ドン・シーゲル

製作総指揮:ジェニングス・ラング

原作:ジョン・リーズ

脚本:ハワード・ロッドマン、ディーン・リーズナー

編集:フランク・モリス

音楽:ラロ・シフリン

ウォルター・マッソー:チャーリー・ヴァリック

ジョー・ドン・ベイカー:モリ―(殺し屋)

アンディ・ロビンソン:ハーマン・サリバン(相棒)

ジャクリーン・スコット:ネイディーン・ヴァリック(妻)

フェリシア・ファー:シビル・フォート(秘書)

シェリー・ノース:ジュエル・エベレット(偽造屋)

ジョン・ヴァーノン:メイナード・ボイル(マフィアのボス)

マージョ・ベネット:(隣人のお婆さんのターフ夫人)

ドナルド・シーゲル:マーフィ

Vol.63 『突破口!』

 今回ご紹介するのは、ドン・シーゲル監督が設立したプロダクションの第1作『突破口!』です。長年B級映画を撮り続けてきた監督が、自分が撮りたかった念願の映画です。短期間に低予算で映画を撮ってきた監督の演出は、無駄が無くテンポが良くて好きな監督さんです。出演する役者さんも厳選されていますし、スタッフもお馴染みのシーゲル組の面々です。

発売元:キングレコード株式会社

【スタッフとキャストの紹介】

ドン・シーゲル監督

監督:ドン・シーゲル(1912年10月26日~1991年4が20日)は、アメリカのシカゴ出身の映画監督です。父親がマンドリン奏者で、巡業のため一家はアメリカ各地を転々とします。彼が高校卒業後に一家はイギリスに渡り、ケンブリッジ大学や英国王立演劇アカデミーで学びます。その後一家はフランスに渡りますが、1931年に帰国します。1934年に叔父さんが働いていたワーナー・ブラザーズに入社し、編集助手や助監督をしてキャリアを積んで行きます。しかし、1944年に会社と契約で意見衝突し、数か月間失職状態になります。ハワード・ホークス監督の助監督を務め、1945年に短編映画『Star In The  night』で監督デビューします。その後に撮ったドキュメンタリー映画『Hitler Lives?』の2本はアカデミー賞を受賞します。1946年に『ビッグ・ボウの殺人』で長編映画デビューし、1949年に『暗闇の秘密』の監督をします。しかし、映画業界がTVの進出により斜陽化が始まり、ワーナー・ブラザーズは多くのスタッフを解雇しました。シーゲル監督は9ヶ月の失業生活を送りますが、ロバート・ロッセン監督の『オール・ザ・キングスマン』で第2班監督として仕事をします。(この仕事は、ノン・クレジットです。)その後、ハワード・ヒューズがRKOに招き入れます。(それにしてもハワード・ヒューズは、多くの人達の手助けをしていますね。苦境にあったタッカーにも素晴らしい情報を提供しています。)それからのシーゲル監督は様々な映画会社の仕事をこなし、低予算早撮りで製作するB級映画を数多く監督しました。1964年の『第十一号監房の暴動』を撮った時に、サム・ペキンパーが助監督として付きます。その後も『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』や『暴力の季節』で、サム・ペキンパーは助監督を務めます。シーゲル監督は生活費を稼ぐ為に、1950年代から1960年代までテレビ映画も数多く演出しています。その中で1964年の『殺人者たち』は、内容が暴力的と云う事で劇場公開されました。1968年の『マンハッタン無宿』の監督決定が難航した時、クリント・イーストウッドがドン・シーゲルを指名しました。監督候補だったマーク・ライデルもシーゲルを絶賛した事もあり、ドン・シーゲルが監督になります。この映画の撮影を通じて二人は親交を深め、イ-ストウッドはシーゲル監督から本格的に監督業を学び始めます。二人は1970年『真昼の死闘』、続けて1971年にサスペンス映画『白い肌の異常な恐怖』を撮ります。残念ながらこの映画は興行的に失敗しますが、監督は自分の最高傑作と当時仰っていました。そして1971年に『ダーティハリー』を発表し、世界的な大ヒットとなります。その後自身のプロダクションを設立して1973年に『突破口!』を発表し、1974年『ドラブル』、1976年『ラスト・シューティスト』、1977年『テレフォン』、1979年『アルカドラスからの脱出』と続きます。主な作品は、1952年『抜き打ち二挺拳銃』、1956年『ボディ・スナッチャ-/恐怖の街』、1960年『燃える平原児』、1961年『突撃隊』、1967年『太陽の流れ者』、1968年『刑事マディガン』等です。1982年の『ジンクス!あいつのツキをぶっとばせ!』が遺作になりました。

ハワード・ロッドマン

脚本:ハワード・ロッドマン(1920年2月18日~1985年12月5日)はブルックリン出身の脚本家・作家で、息子のハワード・A・ロッドマンも脚本家・作家です。ロッドマンは1950年代から数多くのTV映画シリーズの脚本を書き、特に有名なのは「600万ドルの男(The Six Million Dollar Man)」です。ロッドマンはパイロット版の「サイボーグ大作戦(邦題)」脚本を書き、主人公のスティーブ・オースティンのキャラクターを創造しました。しかし、最終的に出来上がった作品に不満があり、クレジットは別名のアンリ・シモンとなっています。その他のTV映画の1958年「プレイハウス」・「裸の町」、1960年「ルート66」等の脚本を書き、1964年「ペイトンプレイス物語」ではアソシエイト・プロデューサーを務めています。1960年代からは1966年『0011ナポレオン・ソロ 消えた相棒』、1967年『刑事マディガン』、1968年『マンハッタン無宿』、1969年『レーサー』等の映画の脚本も執筆しています。1973年の『突破口!』では脚本の第1稿を執筆しますが、会社が採用せずディーン・リーズナーの第2項で撮影されました。

ディーン・リーズナー

脚本:ディーン・リーズナー(1918年11月3 日~2002年08月18日)は、ニューヨーク市生まれのアメリカ合州国の映画・TV映画の脚本家です。父親のチャールズ・ライナーが映画監督だったので、ディーン・リーズナーはディンキー・ディーンの芸名で、1923年にチャールズ・チャップリンの『偽牧師』にも出演しています。しかし、母親が映画出演に反対した為、子役は長く続きませんでした。リスナーは1947年に『ビルの冒険物語(BILL AND COO)』の脚本と監督を担当しました。この短編映画は、鳥と小動物が人間のように洋服を着て物語を展開する実写映画です。彼はこの作品でアカデミー特別賞を受賞しています。(是非観てみたい作品ですが、残念ながら現在は観ることが出来ません。)1950年代から1960年代にかけてTV映画シリーズの脚本を担当し、1955年の「シャイアン」を始め、「ローハイド」、「ドビーの青春」、「ベンケー・シー」等の脚本を執筆しています。1957年の『烙印の裁き』(「シャイアン」の劇場版)、1958年の『パリの休日』等の映画の脚本を執筆します。1968年の『マンハッタン無宿』からドン・シーゲル監督の作品の脚本を担当し、1971年『ダーティハリー』『恐怖のメロディ』、1973年『突破口!』『ダーティハリー3』と執筆しました。その他、1983年『ブルーサンダー』、1987年『危険な天使』の脚本を執筆しています。

ラロ・シフリン

音楽:ラロ・シフリン(1932年6月21日生まれ)は、アルゼンチン出身の作曲家、編曲家、ジャズ・ピアニスト、指揮者です。父親がヴァイオリン奏者だった事から、6歳からピアノを習い始め二人の師から個人レッスンを受けます。その後、アルゼンチンの大学でクラシックを学びながらジャズも演奏するようになります。1950年代初めにパリに留学し、パリ国立音楽学校や舞踊学校で学びます。そして、フランスでジャズ・ピアニストやアレンジャーとしてスタートし、ヴォーグ等からラテン音楽のレコードを出します。1950年代終わりにアルゼンチンに帰国して、ジャズ・ミュージッシャンとして活躍します。1958年にディジー・ガレスビーに出会い、彼の為に曲を提供しました。1960年にニューヨークでガレスビーと再会し、彼の楽団でピアニスト兼アレンジャーとして参加します。その後アメリカに移住し、サビア・クガートやクインシー・ジョーンズ等の楽団に参加します。自身の楽団でも活躍し、ジャズやラテン音楽やボサノバ等も演奏していました。シフリンはMGMの子会社のヴォーグに所属していたので、スタン・ゲッツ、ジミー・スミス、カウント・ベーシー、ルイス・ボンファ、サラ・ボーン等の作品に参加していました。やがてMGMの映画音楽の作曲をするようになり、ハリウッドに移住して映画やTV映画の作曲をするようになります。TV映画では1964年の「ナオレオン・ソロ」に続いて、1965年の「スパイ大作戦」のテーマ曲を作曲します。この曲は4分の5拍子で作曲され、非常にインパクトがあり大ヒットしました。(時代を超えて今でも使われています。)その他に1967年「マニックス」、1974年「猿の惑星」、1975年「刑事スタスキー&ハッチ」等があります。映画音楽は多過ぎるので、全てはご紹介出来ませんが列記致します。やはり最初は、1973年『燃えよドラゴン』ですね。オリエンタル・ムードのメロディをシンセサイザーを使って強烈な印象を与えています。1964年『危険がいっぱい』、1965年『シンシナティ・キッド』、1968年『ブリット』『暴力脱獄』『マンハッタン無宿』『女狐』、1970年『戦略大作戦』。1973年『ダーティハリー』から始まって『ダーティハリー3』を除いて、『ダーティハリー5』まで担当しています。クリント・イーストウッドやドン・シーゲルの作品が多いです。そして1973年『突破口!』です。

チャーリー・ヴァリック役
ウォルター・マッソー(53歳)

 ウォルター・マッソー(1920年10月1日~2,000年7月1日)は、アメリカの俳優・コメディアン・映画監督です。ニューヨーク州ニューヨーク市生まれのマンハッタン育ちです。父親が家族を捨てた為、ロウアー・イースト・サイドのアパートに移りました。母親は衣料品のスウェットショップで働き、彼も新聞配達等をして家計を助けましたマッソーはユダヤ人の非営利のトランキリティ・キャンプに参加し、キャンプが土曜日の夜に上演するショーに出演し始め、サプライズレイク・キャンプにも参加しました。マッソーは、スワードパーク高校卒業後にコロンビア大学でジャーナリズムを学んでいます。第二次世界大戦中、マッソーはイギリスの第24空軍のアメリカ陸軍航空軍で、ラジオ・ガンナー(無線機の砲手)として爆撃機に搭乗しました。彼はジェームズ・スチュアートと同じ第9砲撃隊に所属し、ヨーロッパ大陸で任務を遂行しました。終戦時、軍曹でした。

 アメリカに帰国後、ニュー・スクールのドラマティック・ワークショップで、ドイツの監督のエルヴィン・ピスカトールから演技を学びました。1961年のブロードウェイ舞台劇「A Shot in the Dark」に出演し、トニー賞の最優秀主演男優賞を受賞しました。(この舞台劇は脚本を大幅に書き直して、1964年『暗闇でドッキリ』として映画化されました。)1955年にバート・ランカスターが監督・主演した『ケンタッキー人』で映画デビューし、『赤い砦』、1956年『黒の報酬』、1957年『群衆の中の一つの星』、1958年『闇に響く声』、1960年『逢う時はいつも他人』、1962年『脱獄』、1963年『シャレード』、1964年『未知への飛行』等に出演しました。この頃、テレビ・ドラマの「裸の町」・「ヒチコック劇場」・「ドクター・キルデア」等にゲスト出演していました。1965年にニール・サイモンのブロードウェイの舞台劇「おかしな二人」にアート・カーニーと共演しました。

 その後、1966年『恋人よ帰れ!わが胸に』、1968年『おかしな二人』、1969年『ハロー・ドーリー!』、1969年にジャック・レモン初監督の『コッチおじさん』、1973年『突破口!』『マシンガン・パニック/笑う警官』、1974年『フロント・ページ』、1976年『がんばれ!ベアーズ』、1978年『カリフォルニア・スイート』、1982年『わたし女優志願』、1991年『JFK』、1993年『ラブリー・オールドマン』、1997年『カリブは最高』等に出演しています。2000年『電話を抱きしめて』が遺作となりました。マッソーは1980年代から1990年代にかけて、国立学生映画研究所の諮問委員会の委員を務めていました。ヘビー・スモーカーのマッソーは1966年に心臓発作を起こし、1993年に心臓バイパス手術を受けていました。1999年に結腸腫瘍を切除しましたが、晩年の数年間はアテローム性動脈硬化性心臓病を患っていました。2000年7月1日の深夜に自宅で心臓発作を起こし、救急車でサンタモニカのセントジョンズヘルスセンターに運ばれましたが、数時間後に79歳で亡くなりました。

モリ―役
ジョー・ドン・ベイカー(37歳)

 ジョー・ドン・ベイカー(1936年2月12日生まれ)はテキサス州クロースベック生まれの性格俳優であり、アクターズ・スタジオの終身会員です。彼はノーステキサス大学に通い、在学中から演技を始めました。卒業後に軍隊に入隊し、軍の演劇学校で2年間演技を学びました。除隊後、様々な仕事をしながらアクター・スタジオで本格的に演技を学びました。1964年にニューヨークで初舞台を踏み、テレビでは「バークレイ牧場」、「モッズ特捜隊」、「ボナンザ」、「ガンスモーク」等に出演していました。1967年『暴力脱獄』で映画デビューして、1969年『新・荒野の七人/馬上の決闘』に出演し、1969年にはブロードウィイデビューしました。

 ベトナム帰還兵に対するアメリカ国民の反応と帰還兵の苦悩を描いた、1972年の『ソルジャー・ボーイ』に出演しました。ベトナム戦争中に問題提起した作品で、その後のベトナム帰還兵を扱った作品に大きな影響を与えた映画です。1972年『ジュニア・ボナー/華麗なる挑戦』、1972年『組織』、1973年『ウォーキング・トール』『突破口!』、1974年『黄金の針』、1985年『フレッチ/殺人方程式』、1987年『007/リビング・デイライツ』、1995『007/ゴールデンアイ』、1996年『マーズ・アタック』、1997年『007/トゥモロー・ネバー・ダイ』、2012年『MUD マッド』等に出演しました。007シリーズでは悪役と007の味方の両方を演じています。『007/リビング・デイライツ』では悪役の武器商人ブラッド・ウィテカーを演じ、『007/ゴールデンアイ』と『007/トゥモロー・ネバー・ダイ』ではCIAエージェントのジャック・ウェイドを演じています。

シビル・フォート役
フェリシア・ファー(41歳)

 フェリシア・ファー(1932年10月4日生まれ)は、ニューヨーク州ウエストチェスター郡生まれのアメリカ合州国の元女優でモデルです。彼女はエラスムスホール高校に通い、ペンシルベニア州立大学で社会学を学びました。19歳と年齢を偽って15歳でランジェリーのモデルをし、1950年代から1960年代には写真のモデルや広告に出演しました。ファーは1955年にコロンビア・ピクチャ-ズと7年間の契約し、1955年『去り行く男』・『真昼の脱獄』、1956年『襲われた幌馬車』、1957年『決断の3時10分』、1964年『ねぇ!キスしてよ』、1971年『コッチおじさん』、1973年『突破口!』、1992年『ザ・プレイヤー』等に出演しました。ファーは1960年代のテレビ映画の「裸の街」、「幌馬車隊」、「ベン・ケーシー」、「ボナンザ」、「ヒチコック劇場」、「バークにまかせろ」等にゲスト出演していました。

ハーマン・サリバン役
アンドリュー・ロビンソン(31歳

 アンドリュー・ロビンソン(1942年2月14日生まれ)は、アメリカ合州国・ニューヨーク出身の俳優で南カリフォルニア大学の美術修士プログラムの元ディレクターです。父親は彼が2歳の時に第二次世界大戦で戦死し、母親と共にコネチカット州ハートフォードに移り住みます。少年時代は非行に走りますが、更生してロードアイランド州のセントアンドリュースクール(寄宿学校)に入学しました。高校卒業後、ニューハンプシャー大学に入学しますが、予備役将校訓練課程に反対して放校処分になります。ニューヨークのニュー・スクール大学に編入して英語の学士号を取得し、フルブライト奨学金を得てロンドンに留学しました。彼はロンドン音楽演劇芸術アカデミーに通いながら、シェイクスピアとボイストレーニングを学びました。帰国後、ニューヨークの舞台で活動し始めました。

 1971年『ダーティハリー』で“さそり”役に抜擢され、鬼気迫る演技で強烈な印象を残しました。1973年『突破口!』、1975年『新・動く標的』に出演し、テレビ映画にも出演しています。1978年ら5年程が俳優を休業し、カリフォルニア州アイデルワイドの小さなコミュニティに家族と共に移住しました。大工として働きながら、地元の中高生の為にコミュニティ・シアターで演技指導を行っていました。その後映画界に復帰して、1985年『マスク』、1986年『コブラ』、1987年『ヘル・レイザー』、1988年『影なき男』、1991年『チャイルド・プレイ3』等に出演しました。テレビ・シリーズでは1976年から1978年の「ライアンの希望(Ryan’s Hope)」や1993年から1999年の「スタートレック/ディープ・スぺス・ナイン」にレギュラー出演しました。その他、「ベガス」、「特攻野郎Aチーム」、「新・トワイライトゾーン」、「ジェシカおばさんの事件後」等にゲスト出演しました。

ジュエル・エベレット役
シェリー・ノース(41歳)

 シェリー・ノース(1932年1月17日~2005年11月4日)は、アメリカ合州国カリフォルニア州ロサンゼルス生まれの映画・テレビの女優、ダンサー、歌手です。彼女は第二次世界大戦中に“USOショー”で踊り始めました。その後、シャーリー・メイベッシレという芸名で、クラブのダンサーとして踊り続けました。1951年『Excuse My Dust』にノン・クレジットで映画デビューし、この頃から芸名をシェリー・ノースと改名します。ノースはミュージカル「ヘーゼルフラッグ」でブロードウェイ・デビューし、シアターワールド賞を受賞しました。1954年にパラマウント社の『底抜けニューヨークの休日』に出演後、ノースは20世紀フォックスと契約しました。20世紀フォックスは、ノースをマリリン・モンローの後継者にしようとライフ誌の表紙に登場させました。1950年『スカートをはいた中尉さん』やミュージカル映画に出演しましたが、20世紀フォックスはノースの代わりにジェーン・マンスフィールドを売り込むようになります。1957年『頭金なし』、1958年『恋愛候補生』・『大戦争』と出演し、20世紀フォックスを去ります。

 その後、テレビ映画の「アンタッチャブル」、「ガンスモーク」、「ベン・ケーシー」、「バークにまかせろ」、「バージニアン」、「逃亡者」等に出演しました。1966年から映画に復帰し、1967年『刑事マディガン』、1969年『トラブル・ウィズ・ガールズ』・『さすらいの大空』、1970年『追跡者』、1972年『夜の大捜査線 霧のストレンジャー』、1973年『突破口!』『組織』、1975年『ブレイクアウト』、1976年『ラスト・シューティスト』『テレフォン』、1988年『マニアックコップ』、1991年『ディフェンスレス/密会』等に出演しました。1998年『スーザンズ・プラン 殺せないダーリン』が遺作となりました。2005年11月4日に、カリフォルニア州ロサンゼルスのシダーズ・サイナイ・医療センターでの癌手術中に亡くなりました。73歳でした。

メイナード・ボイル役ジョン・ヴァーノン(41歳)

 ジョン・ヴァーノン(1932年2月24日~2005年2月1日)は、カナダのモントリオール生まれの俳優です。俳優になる為に、カナダのアルバータ州バンプの大学とロンドンの王立演劇学校で学びました。数多くの劇団に加わって舞台経験を積んだ後、カナダに戻って舞台やテレビに出演しました。その後、ブロードウェイに進出して1964年の「Nobody Waved Good bye」で本格的にデビューしました。

 1967年の『殺しの分け前/ポイント・ブランク』で映画デビューし、1969年『夕陽に向かって走れ』『トパーズ』に出演しました。1971年の『ダーティハリー』から1973年『突破口!』、1974年『ドラブル』とドン・シーゲル監督の作品に出演しています。1975年『ブラニガン』、1976年にはクリント・イーストウッド監督の『アウトロー』に出演しています。1978年『アニマル・ハウス』、1982年『フライング・ハイ2・危険がいっぱい月への旅』、1983年『チェーンヒート』等に出演しました。ヴァーノはテレビ映画の「スパイ大作戦」、「F・B・I」、「ナイトライダー」等にゲスト出演し、テレビ・アニメの「アイアンマン」、「キャプテン・アメリカ」、「バットマン」、「スパイダーマン」、「超人ハルク」等では声の出演をしています。2005年2月1日に心臓手術後の合併症の為、カリフォルニア州ウェストウッドで亡くなりました。72歳でした。

隣人のターフ夫人役
マージョリー・ベネット(77歳)

 マージョリー・ベネット(1896年1月15日~1982年6月14日)は、西オーストラリア州のヨークで生まれた、主にイギリスとアメリカで活躍したオーストラリアの女優です。その後渡米し、1917年に『The Girl, Glory』で映画デビューして数本のサイレント映画に出演しました。1940年代から本格的に映画に出演し、1947年『殺人時代』、1949年にアボットとコステロの『凸凹殺人ホテル』、1950年『西部の二国旗』、1952年『ライムライト』、1954年『麗しのサブリナ』、1956年『枯葉』、1957年『千の顔を持つ男』、1960年『オーシャンと十一人の仲間』、1962年『何がジェーンに起こったか?』『ガール!ガール!ガール!』、1964年『マイ・フェア・レディ』、1968年『マンハッタン無宿』、1973年『突破口!』、1974年『エアポート‘75』等に出演しています。1961年ディズニー・アニメの『101匹わんちゃん』で声の出演をしていました。ベネットは、1982年6月14日、カリフォルニア州ハリウッドで亡くなっています。86歳でした。次回の本編に続きます。最後までお付き合い頂きまして、有難う御座いました。

※文中の太字になっている作品は、日本でDVDが発売されています。