スタートは、リリアン・ギッシュ様です。1987年の『八月の鯨』が遺作になりましたので、ここから始めたいと思います。この映画はご覧になった方が多いと思いますが、出演している5人の俳優が素晴らしいです。私にとっては奇跡の様な映画です。
ストーリーは老姉妹の日々の暮らしを描いていて、若い頃から付き合いのある女友達が訪ねてきたり、今は落ちぶれた元伯爵が来たり、配管工事をする騒々しい老人が来たりと物語が展開していきます。海辺の高台にある妹の家で、目の不自由な姉と二人で暮らしています、映画はこの姉妹が若い頃に友達と3人で、沖に鯨が来た思い出のワン・シーンから始まります。何十年か経った現在に画面が変わり、姉妹の朝の生活風景から物語が進んでいきます。
【リリアン・ギッシュ様 94歳】 『国民の創生』 19歳
皮肉屋で我儘な姉とその姉を世話をする妹との二人のやり取りは、本当に自然で直ぐ物語に入り込んでいけます。小まめに働く妹のセーラをリリアン・ギッシュ様(94歳)が演じ、姉のリビーを年下のベティ・ディビス(79歳)が演じました。ベティ・ディビスは、今更説明する必要も無い大女優ですね。誰に対してもハッキリ意見を通す方で、『ふるえて眠れ』の撮影開始間も無く、相手役のジョン・クロフォードを撮影現場から叩き出した話は有名ですね。
【ベティ・ディビス 79歳】 『痴人の愛』 26歳
お喋りでお節介なオバチャンになった旧友のアイシャを演じたアン・サザーン(78歳)は、1949年の『三人の妻への手紙』でラジオ・ドラマの脚本家のリタを演じた方です。コミカルな役が多いんですが『不意打ち』や『クレージー・ママ』なんかに出ていました。
【アン・サザーン 78歳】 『三人の妻への手紙』 40歳
元貴族のマラノフをヴィンセント・プライス(76歳)が演じていますが、端正な顔立ちで気品があり正に適役ですね。ヴィンセント・プライスは、クリストファー・リーやピーター・カッシングと並ぶ古典ホラー映画では有名な俳優さんで、怪奇映画で一世を風靡した方です。
【ヴィンセント・プライス 76歳】 『替え玉殺人事件』 40歳
騒々しく配管工事をしていたジョシュアを演じていたのは、ハリー・ケリー・Jr(65歳)です・彼のお父さんのハリー・ケリーは、サイレント映画時代から俳優や監督をしていた名優です。1948年の『三人の名付け親』の撮影準備前に亡くなった為、ジョン・フォード監督は息子のハリー・ケリー・Jrを代役に立てて撮影しました。行き成りジョン・ウェインと名脇役のペドロ・アルメンダリス(『ロシアより愛をこめて』のトルコ支局長役)との共演は、大変だったと思います。その後。1950年の『幌馬車』では、ベン・ジョンソンの相棒役をやったり、多くの西部劇に出演しております。西部劇ファンの私としては、この映画でお目に掛かれたのは嬉しい限りです
私が初めてリリアン・ギッシュ様を観た映画は、1960年の『許されざる者』で、劇場で鑑賞しました。監督はジョン・ヒューストンで、主演のバート・ランカスターのヘクト・プロの作品です。当時の私のお目当ては、オードリー・ヘプバーンでした。彼女が西部劇に出るなんって、イメージと合わないと思いながら観ました。この映画は人種差別をテーマにした異色の西部劇で、カイオワ族と白人と争いがありオードリー・ヘプバーンは非常に難しい役を演じています。後半の鏡に向かうシーンは、彼女の心の葛藤が表情で読み取れます。さて、肝心のリリアン・ギッシュ様(67歳)は優しい母親を演じていますが、彼女の真実の告白で物語が一変します。なんと罪深い事をしたのか。可愛い顔をしたお母さんなのに、何とも悲しい役を演じていた俳優さんと云うのが最初の印象でした。その後、『散りゆく花』を観てリリアン・ギッシュ様の可愛らしさに衝撃を受け、『国民の創生』、『東への道』と続けて観まして目出たくリリアン・ギッシュ様の大ファンになった次第です。次回にも続きます。
最後までお付き合い頂きまして、有難う御座いました。
『八月の鯨』 作品データ
アメリカ 1987年 カラー 91分
原題 : The Whales of August
監督:リンゼイ・アンダーソン
製作:キャロリン・ファイファー、マイク・キャプラン
製作総指揮:シェップ・ゴードン 脚本:デイヴィッド・バリー
撮影:マイク・ファッシュ 編集:ニコラス・ガスター
音楽:アラン・プライス
出演:ベティ・デイヴィス、リリアン・ギッシュ
ヴィンセント・プライス、アン・サザーン
ハリー・ケイリー・Jr、メアリー・スティーンバージェン
マーガレット・ラッド、ティシャ・スターリング