列車のラウンジの前でブラウンとシンクレア夫人が話していると、ケンプが二人の間を素知らぬ顔で通り抜けてラウンジに入って行きます。夫人はラウンジに入り、ブラウンはケンプの様子を確認してから個室に戻ります。通路で太ったジェニングスに出会って、彼は“今度は君がよける番だ”と言うので、ブラウンが通路を開けて彼を通します。部屋に戻ると、ニール夫人は戻るのが遅いと文句を言います。ブラウンの手からサンドイッチを奪い取るようして食べ始めます。ニール夫人はシンクレア夫人が自分の身代わりだと言います。殺し屋のケンプが、そう思っているから最高だと言います。ブラウンは自分が意図した事ではないと言うと、ニール夫人は護衛としては正しい事だと言います。ブラウンは呆れかえって最悪だと言います。(このシーンでのニール夫人の皮肉交じりの悪態とブラウンとの言い合いは、二人の迫真の演技がぶつかり合います。)

画面が変わって、ラウンジからシンクレア夫人が出て行くとケンプが後をつけるのを見たブラウンは、ラウンジのドアの前のカーテンの中に隠れます。ラウンジから出て来たケンプを後ろから捕まえて。彼の顔面に拳で一撃食らわします。ケンプが倒れた拍子にドアが開き、その部屋の中で格闘が始まります。(狭い部屋の中での格闘シーンは、アップ・シーンも多くテンポの良い編集がされています。)物音に気付いたボーイが部屋に入ってきて、慌てて退室します。ブラウンはケンプに質問しますが、惚けるので平手打ちをします。ケンプは“あんたは孤立無援で相手は大企業だ”と言い、“俺を殺しても計画は止まらない”と言います。ブラウンは“お前たちの狙いは何だ”と言うと、ケンプは“収賄リストと子連れの女だ、シンクレアと名乗っている”と言います。ブラウンは“彼女は無関係だ”と言うと、ケンプは“ニールは偽名だろう、彼女を生かす方法を考えろ”と言い返します。ケンプは取引をしないのかと言うと、ブラウンが取引はしないし証人の命は守ると言います。ブラウンがケンプに銃を突き付けて逮捕すると言っている時に、車掌が入って来ます。ブラウンは自分が刑事だと告げると、車掌がジェニングスを呼び入れます。入って来たジェニングスは、鉄道特別捜査官だと言ってブラウンの事を調べて刑事だと知っていると言います。ブラウンはジェニングスにケンプを拘束するように言い、ヨーストに気を付けるように言います。ジェニングスは貨物車両にいると言って、ケンプを連れ出します。

ジェニングスにケンプを引渡すブラウン(右)
ケンプを連行して通路を歩いていると、一人の乗客が歩いて来たので太ったジェニングスは傍のドアを開けて後ろ向きで中に入ります。その部屋には別のケンプの仲間がいて、ジェニングスに銃を突き付けて“動くな”と言います。ジェニングスと共に部屋に入ったケンプは、ジェニングスの腹を力任せに拳で三発殴ります。倒れるジェニングスをケンプの仲間は銃で一発殴ります。ケンプはジェニングスの手を後手にして縛って拘束します。

ブラウンが部屋に戻るとニール夫人は組織と取引しただろうと言います。ブラウンはしていないと言うと、大金が入るのに馬鹿じゃないかと言います。夫人が私は取引すると言い出します。審査会でリストを読み上げて一生恨みを買うより大金を貰うと言います。ブラウンは呆れて部屋を出て行くと、夫人は爪ヤスリを使い始めます。カメラが夫人の手元に寄り、爪にヤスリを掛ける音が蒸気機関車の音に変わり機関車の車輪が映されます。その画面にウィトワー検事からブラウン宛てのテレックス(紙テープに電報文が書かれたもの)が表示されて、電文は“デンゼルとケンプは犯罪組織のメンバーだ。デンゼルは飛行機でシカゴを発った。”です。

ウィトワー検事からブラウンに送られたテレックス(右)
ブラウンは受け取った電報をラウンジで読んでいると、車掌が“ジェニングスが貨物車両にいない”と知らせて来ます。ブラウンはジェニングスを探しに行きますが、車窓には列車と並行して走る黒いセダンが見えます。ブラウンは車窓から見えるセダンを見ていると、車掌が来てラフンタ駅で4名の乗客が乗り込んだと言います。車掌に全ての個室を調べるように言い、ハイウェイ・パトロールに連絡して黒いセダンに職務質問するように伝えるように言います。

ブラウンはシンクレア夫人の部屋に行き、話をしたいと言って部屋に入ります。ブラウンは煙草を吸おうとしたら切れていたので、シンクレア夫人が煙草を彼に渡します。そして“抱えている秘密が負担なんじゃない?”と言うと、ブラウンは“その秘密を話しに来た”と言います。彼女は“トミーとの秘密を聞いたら悪いわ”と言うと、ブラウンは“無関係な人が事故に巻き込まれる事がある”と言います。“君を誰かと人違いしている奴がいる。俺のミスだ。君を必ず守る”と言います。シンクレア夫人は事情を全部話して欲しいと言うので、ブラウンが話そうとするとトミーが現われて母さんに話すのと言います。お母さんは信用出来るから秘密を話すと言うと、トミーは納得したのでシンクレア夫人はトミーを寝かせに部屋に戻ります。ブラウンが窓越しに外を見ると、黒いセダンは相変わらず列車と並行して走っています。(カメラは外からブラウンを映し、窓ガラスには閉口して走行する車が映り込んでいます。窓ガラスの映り込みを利用するシーンを上手く使っています。)

窓越しに並走するセダンを見るブラウン(右)
ケンプとデンゼルがブラウンの個室に入り、ニール夫人を騙して彼女の部屋に押し入ります。ブラウンが匿っていたので、二人は彼女が本物のニール夫人だと断定します。彼女にリストを出すように言うと、彼女はリストを見せると言ってロッカーに向かいます。ロッカーの中のハンドバッグから拳銃を取り出して撃鉄を起こしたと同時に、デンゼルが後ろから銃を発射します。(狭い差内での撮影の難しさを逆手に取って、倒れる夫人と銃を撃つデンゼルが鏡に映し出されます。)二人は窓から並走するセダンを確認する画面で、カメラが窓の外から映していて窓にセダンが映り込んでいます。セダンが映り込んだ画面がオーバーラップして、ブラウンがセダンを見ている画面に変わります。

ニール夫人を後ろから銃で撃つデンゼル(右)
シンクレア夫人がトミーを寝かしつけて、部屋に戻って来ます。ブラウンは夫人に重要な参考人を護衛中だと言い、殺されたマフィアのフランキー・ニールの妻だと言います。ブラウンが信じて欲しいと言うと、彼女は自分がニール夫人だと言います。地方検事から何も聞いていないブラウンは驚きます。夫人は人目に付かないように移動するように言われたのに、こんな事態になったと言います。ブラウンは自分の部屋にいるのは誰だと言うと、夫人は監察課の警官だと言うと、ブラウンは囮を護衛させられたと言います。なぜ自分を騙すのかと言うと、夫人は大陪審が収賄を調査しているから試されたのだと言います。ブラウンは悪い奴から金は受け取らない、悪党に弱みを握られて一生過ごすのはご免だと言います。ブラウンの態度を見て、夫人は信頼する為だと言って自分は元夫を信頼して結婚したけど職業を知って別れたと言います。元夫が殺される前に会ってリストを受け取ったと言うと、ブラウンは預からせてくれと言います。夫人はリストを地方検事に送付したから無理だと言います。ブラウンは笑みを浮かべてマフィアの妻は安っぽい女だと思ったが、相棒が正しかったと言います。そこに車掌がドアをノックし、ブラウンに話があると言うのでブラウンは部屋から出ます。夫人がドアにカギを掛けるシーンではカメラが外から窓越しに移すので、窓ガラスには黒いセダンが映っています。

窓ガラスに並走するセダンが映っています(右)
画面が変わって、デンゼルとケンプは偽ニール夫人の持ち物を調べています。ケンプがスーツケースの中からシカゴ市警の身分証明書を見つけて、“あの女は偽物だった”と言います。その証明書を見たデンゼルは“警官か、本物は何処だ?”言うと、ケンプが“前の車両のCとD室だ”言います。二人は本物のニール夫人の部屋に向かいます。一方、捕らえられたジャニングスが車掌に解放された時、ブラウンが部屋に入って来て“もう一人は誰だ”と聞きます。ジャニングスは“分からない、コートが残っているだけだ”と言うので、コートを見ると襟に毛皮が付いているので相棒を殺した男だと知ります。

車掌に解放されたジェニングス(右)
ケンプとデンゼルはニール夫人の部屋の前で、デンゼルは銃を使って入ろうとしますが隣の部屋のドアをノックします。寝ていたトミーはブラウンが来たと思ってドアを開けると、デンゼルが銃を構えて入って来ます。トミーを捕まえたデンゼルは、隣の続き部家のドアを叩いてドアを開けろと言います。トミーを殺すと脅されて、ニール夫人はドアを開けます。その時ケンプが列車を停止させるワイヤーを引いたので、列車は急ブレーキで停まります。その時の反動でデンゼルがニール夫人の部屋に飛び込み、ドアをロックしてリストを出すように言います。

ニール夫人の部屋に入り込んだデンゼル(右)
トミーがいる部屋にブラウンが入って来て、デンゼルにドアを開けて撃つぞと言います。デンゼルはドアを開けたら夫人を撃つと言って、夫人にリスト出せと言います。ちょうどその時、隣に列車が停まり隣の列車の窓にニール夫人の部屋が映っています。ブラウンはそれを利用する為に部屋の電気を消して、夫人にデンゼルはお見通しだからリストを渡せと言います。勘の良い夫人は、リストを渡すと言ってスーツケースを探す振りをします。デンゼルがスーツケースを探してもリストが無いので、時間稼ぎかと言います。ブラウンがリストは戸棚にあるだろうと言うと、デンゼルが戸棚に向かう処を隣の列車の窓を見てブラウンはドア越しに銃を撃ちます。撃たれたデンゼルはドアを抑えようとしますが、ブラウンはドアを開けてデンゼルを射殺します。ブラウンは部屋の外で待っていたジェニングスと共にケンプを捕まえに行きます。ケンプは列車の最後尾から降りて待機していた黒いセダンに乗りますが、ハイウェイ・パトロールのパトカーに前後を挟まれて逮捕されます。

ドア越しにデンゼルを撃つブラウン(右)
翌朝列車はロスアンゼルスに着くと、新聞記者が大勢集まっていて車掌にニール夫人が乗っているかと聞くと、車掌は答えられませんと言います。記者たちはニール夫人の部屋に向かいます。部屋ではブラウンはジャニングスに“報道陣が来る、何か方法は?”と聞きます。ジャニングスは私が盾になると言って。部屋から出て報道陣に通路を塞いでいると言って彼等を押し戻します。ブラウンとニール夫人は身を屈めて列車から抜け出し、地下通路を小走りに進んで行きます。地下通路では護衛の二人が合流し、報道陣が待っているか、対処すると言います。ニール夫人は裁判所までは二人で歩いて行きましょうと言います。ブラウンは分かったと言って、二人は徒歩で数ブロック先の裁判所に向かって行きます。

徒歩で裁判所に向かうブラウンとニール夫人(右
最後までお付き合い頂き、有難う御座います。
『その女を殺せ』 作品データ
1952年製作 71分 アメリカ
原題:THE NARROW MARGIN
監督:リチャード・フライシャー
製作:スタンリー・ルービン
原案:マーティン・ゴールドスミス、ジャック・レナード
脚本:アール・フェルトン
撮影:ジョージ・E・ディスカント
出演:チャールズ・マックグロー (ブラウン刑事)
マリー・ウィンザー (偽のニール夫人)
ジャクリーン・ホワイト (ニール夫人)
ゴードン・ゲバート (トミー)
ウィニー・レナード (トロール夫人)
デヴィッド・クラーク

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