Vol.67 『組織』

 今回ご紹介するのは、ジョン・フリン監督の『組織』です。主役のロバート・デュパルは、若くも無く所謂二枚目の俳優ではありません。しかし、この映画を観ると分かりますが、組織に立ち向かう姿はカッコいいです。この映画も『突破口!』と同様に、マフィアの裏金とは知らずに強奪した男の話です。1973年の作品で、ジョー・ドン・ベーカーは相棒として出演しています。

【スタッフとキャストの紹介】

監督:ジョン・フリン(1932年3月14日~2007年4月4日)は、イリノイ州シカゴ生まれの映画監督です。彼はカリフォルニア州マンハッタンビーチで育ち、カリフォルニア大学ロサンゼルス校でジャーナリズムを学んで学位を取得しました。卒業後、1959年の『拳銃の報酬』で、ロバート・ワイズ監督の手伝いとして映画界入りしました。その後、セカンド・ユニットの監督を務め、1968年『軍曹』で監督デビューしました。この映画は戦争映画ではなく、ホモセクシャルを扱った映画です。この時代ではタブー視されていた題材に緒戦する凄い監督です。1971年『愛と死のエルサレム』、1973年『組織』、1977年『ローリング・サンダー』、1979年『摩天楼ブルース』、1987年『殺しのベストセラー』、1989年『ロックアップ』、1991年『アウト・フォー・ジャスティス』、1994『ブレインスキャン』、 2001年『密告の代償』等の監督をしています。フリン監督の作品は、主人公が相棒と組んで復讐する映画が良いですね。こじんまりと纏まってタイトに物語が進行し、リアルな緊張感があります。その他、1980年のTVドラマ『伝説のマリリン・モンロー』、1992年のケーブルTVドラマ「ネイルズ」、1992年「カリブ/愛欲の罠」を監督しています。フリン監督は、2007年4月4日に 自宅で就寝中に75歳で亡くなりました。

アール・マックリン役
ロバート・デュパル

 アール・マックリン役:ロバート・デュパル(1931年1月5日~)は、カリフォルニア州生まれの俳優・映画プロデューサーです。彼はメリーランド州アナポリスで育ち、メリーランド州セバーンスクールとミズーリ州セントルイスのピリンキビアに通いました。その後、イリノイ州エルザのピリンキビア大学で演劇の博士号を取得して1953年に卒業しました。1953年から1954年までアメリカ陸軍に入隊し、ジョージア州のキャンプ・ゴードンに勤務して上等兵で除隊しました。1955年にニューヨーク市のネイバーフッド・プレイハウスに2年間通い、サンフォード・マイナーズに師事しました。その頃のクラスメートは、ダスティ・ホフマン、ジーン・ハックマン、ジェームズ・カーンでした。デュバルはメ演技を学びながら、イシーズの事務員やマンハッタンの郵便局で郵便物の仕分けやトラックの運転手等をしていました。

 デュバルは、1952年にニューヨークのゲートウェイ・シアターで舞台デビューしました。戦後、1955年にゲートウェイ・シアターの舞台で復帰し、オーガスタ・シビック激情、バージニア州のマクリーン劇場、ワシントンDCのアリーナ・ステージに出演しましていました。1959年からテレビに出演するようになり、1961年から「裸の町」、「ルート66」、「弁護士プレストン」、「逃亡者」、「アウター・リミッツ」、「コンバット」、「F・B・I」に3話から5話に違う役でゲスト出演しました。テレビ映画の「ゴッド・ファーザー・テレビ完全版」でトム・ヘイゲン役や「将軍アイク」でドワイト・D・アイゲンハワー役を演じました。

 1962年に『アラバマ物語』で映画デビューし、1966年『逃亡地帯』、1968年『ブリット』、1969年『勇気ある追跡』、1970年『M★A★S★H マッシュ』、1971年『THX1138』、1972年『ゴッド・ファーザー』、1973年『組織』、1974年『ゴッド・ファーザーPARTⅡ』、1974年『鷲は舞いおりた』『ネットワーク』、1975年『キラー・エリート』等に出演しました。1979年『地獄の黙示録』でキルゴア中佐を演じて、ゴールデングローブ賞助演男優賞と英国アカデミー賞助演男優賞を受賞しました。1983年『テンダー・マーシー』ではアカデミー賞主演男優賞を受賞しています。1991年『ランブリング・ローズ』、1993年『ジェロニモ』、1998年『シビル・アクション』等に出演しています。

ジャック・コディ役
ジョー・ドン・ベーカー

 ジャック・コディ役はジョー・ドン・ベーカーです。彼の略歴は『突破口!』をご覧ください。

ベット・ハーロウ役:カレン・ブラック

 ベット・ハーロウ役のカレン・ブラック(1939年7月1日~2013年8月8日)は、イリノイ州パークリッジ生まれの俳優・脚本家・歌手・ソングライターです。ブラックは10代の頃から舞台俳優を目指し、メインイースト高校に通いながら夏のストックシアターで仕事を探していました。トイレ掃除から始めて16歳頃には小道具係になり、コーラスラインで歌うようになって17歳で本格的に俳優としてデビューしました。その後、インディアナ州ラファイエットのジェファーソン高校に転校し、バヂュー大学に1年間通って、ノースウエスタン大学に編入して演劇芸術を専攻しました。1960年に大学を中退してニューヨークに移転し、秘書、ホテルのフロントデスク、保険事務所等の雑用をこなして生活費を得ていました。1961年ブロードウェイの舞台で代役として出演するようになり、1965年の「プレイルーム」で正式にブロードウェイ・デビューします。1966年の「After the Fall」に出演し、エンジェル賞の最優秀助演女優賞を受賞しました。

 1960年にインディペンデント映画の『プライムタイム』に脇役でスクリーン・デビューし、1966年にフランシス・フォード・コッポラ監督の『お兄ちゃんになるまえに』に出演しました。ブラックはロスアンゼルスに移転し、1967年から「F・B・I」、「ポール・ブライアン」、「バークレー牧場」、「マニックス」、「特捜隊アダム22」等のテレビ・シリーズにゲスト出演しました。1969年『イージーライダー』、1970年『ファイブ・イージー・ピース』でゴールデングローブ賞助演女優賞とニューヨーク映画批評家協会の助演女優賞を受賞しました。1971年『生き残るやつ』、1973年『組織』、1974年『華麗なるギャツビー』で二度目のゴールデングローブ賞助演女優を受賞しました。1975年『イナゴの日』『ナッシュビル』、1975年『ファミリー・プロット』・『家』、1977年『カプリコン・1』、1978年『キラー・フィッシュ』、1981年『ココ・シャネル』、1986年『スペースインベーダー』等に出演しました。

 その後、インディペンデント映画にも出演するようになり、1998年『クレイジー・ナッツ 早く起きてよ』、2001年『ファング・オブ・モンスター』、2003年『死霊危険地帯 ゾンビハザード』『マーダー・ライド・ショー』等のホラー映画に出演しています。ブラックは2013年8月8日にロザンゼルスのウエストヒルズ病院で、膨大部癌の為74歳で亡くなりました。

アーサー・メイラー役
ロバート・ライアン

 アーサー・メイラー役のロバート・ライアン(1909年11月11日~1973年7月11日)は、シカゴ生まれの俳優・活動家です。カトリック教徒のライアンは、イエズス会の大学進学高校のロヨラ・アカデミーで学び、ダートマス大学に入学しました。大学でフットボールと陸上競技のレターマンとして活躍し、ボクシングではヘビー級のタイトルを保持しました。1932年に大学を卒業後、アフリカに行く船で働いたり、ワークス・プログレス・アドミニストレーション(WPA)の労働者やモンタナ州で牧場労働者として働いていました。1936年に父親がなくなり帰国して、デパートで服のモデルした後、俳優になる為に1937年シカゴの小さな劇団に参加しました。その後、ハリウッドのマックス・ラインハルト・ワークショップで演技を学びました。1939年の戯曲「Too Many Husbands」に出演し、パラマウント社からオファーを受けて1939年11月パラマウント社と6か月の契約をしました。1940年『ゴールデングローブ』で当初主役の予定でしたが、重要な脇役で出演して初めてクレジットされました。この映画で知り合ったエドワード・ドミトリ監督の映画にその後出演するようになります。1940年『ゴースト・ブレーカーズ』・『地獄の女』・『北西騎馬警官隊』・『続・テキサス決死隊』等に端役で出演し、パラマウント社を去りました。その後、ライアンはブロードウェイで、クリフォード・オデッツの戯曲「クラッシュ・バイ・ナイト」に1941年から1942年までの49回公演に出演しました。ライアンはRKO社と契約し、1943年『ボンバー・ライダー/世紀のトップ・ガン)』『青空に踊る)』『夫は還らず』等に出演しました。
 ライアンはアメリカ海兵隊に入隊し、1944年1月から1945年11月まで南カリフォルニアのキャンプ・ベンドルトンで訓練教官をしました。海兵隊を除隊後、ライアンはRKOに戻って1947年の『拳銃街道』に出演しました。同年の『浜辺の女』は興行的に失敗しましたが、人種差別を扱ったドミトリク監督の『十字砲火』は大成功を収めてライアンの演技も認められます。1948年『ベルリン特急』、1949年『暴力行為』と出演し、『罠』ではボクシングの八百長試合に逆らうボクサーを演じました。1950年『生まれながらの悪女』、1951年『荒野の三悪人』『太平洋航空作戦 』『危険な場所で』等に出演しました。1952年に戯曲「クラッシュ・バイ・ナイト」を映画化した『熱い夜の疼き』、1953年『海底の大金塊』に出演し、『裸の拍車』では悪役を演じました。1955年『東京暗黒街・竹の家』、1956年『誇り高き男』の保安官役では見事なファスト・ドローを披露し、アンソニー・マン監督の傑作戦争映画1957年の『最前線』では主役の疲弊した中尉を好演しています。1959年にロバート・ワイズ監督の『拳銃の報酬』で、人種差別をする男を演じています。1961年『キング・オブ・キングス』、1962年『史上最大の作戦』、1965年『バジル大作戦』と大作に出演し、1966年『プロフェッショナル』、1967年『特攻大作戦』『墓石と決闘』、1968年『アンツィオ大作戦』等に出演しました、1963年『ワイルドバンチ』・『ネモ船長と海底都市』、1972年『狼は天使の匂い』、1972年『ダラスの熱い日』『組織』等に出演しました。ヘビースモーカーのライアンは、1970年リンパ腺の手術不能な癌に罹っていました。1973年7月11日にニューヨーク市で肺癌の為63歳で亡くなりました。

バックの妻役:シェリー・ノース

 バックの妻役はシェリー・ノースです。彼女の略歴は『突破口!』をご覧ください。

次回の本編に続きます。最後までお付き合い頂きまして、有難う御座いました。

※文中の太字になっている作品は、日本でDVDが発売されています。

Vol.66 『突破口!』の最終章

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エベレットを殴るモリー

 モリ―は偽造屋のエベレットの所に行き、チャーリーがパスポートを受け取りに来るのを待ちます。(ここでモリ―がエベレットに裏手でビンタをしてお楽しみに入りますが、女性を殴るシーンは1940年代・1950年代の映画でよく見られました。恐らく当時の映画に対する、シーゲル監督のオマージュかと思います。)

チャーリーに警告する保安官(左)
チャーリーは留守だと保安官に言いに来たターフ夫人(右)

 画面が変わって翌日の朝、お馴染みのターフ夫人が玄関前の牛乳を取に出てハウスの方を見ます。多くの警官が銃を持って、チャ-リーのトレーラーハウスを囲んでいます。保安官が、拡声器でチャーリーに出てくるように警告しています。ターフ夫人はロッキングチェアーに座って眺めています。保安官がドアに体当たりをして中に入ると、室内は無人でした。そこにターフ夫人が現れて、呆れ顔で“誰もいないよ”と言います。

ダイナマイトを購入するチャーリー(左)
銀行の本店に電話をするチャーリー(右)

 チャーリーがダイナマイトや時限装置を購入しています。支払いが終わってから店主は何に使うのかと聞くと、チャーリーは“さあね”と言います。(このシーンの店主の表情が絶妙で、良い演技ですね。)チャ-リーは自社の飛行場からウエスタン信託祇行本店に電話をして、頭取のボイルと話したいと言います。秘書のフォートが、ボイルが不在だと伝えて用件を伺いますと言います。チャーリーは直接話すと言ってから、秘書の名前を聞いて電話を切ります。チャーリーはスーツの上からオーバーオールを着て、外に待機させていた複葉機に乗ってリノへ飛び立ちます。

少年から薔薇を買うチャーリー(左)   ボイルに電話をするフォート(右)

 リノのウエスタン信託銀行の本店があるビルの近くでチャーリーは車の中からビルを見上げ、路上で花を売っている少年から手持ちの薔薇を全て買います。夜になってチャーリーはそのビルの近くで、秘書のフォートが出て来るのを車の中で待ちます。やがてフォートがビルの玄関に着いた時、ドアマンが頼まれ物のバラを渡します。誰から贈られたか分からないバラを受け取った彼女は車で帰宅します。チャーリーはその後を尾行します。フォートが帰宅して間もなく来客があり、誰か尋ねるとお届け物と言われて不審に思いながらドアを開けます。ドアを開けるとチャーリーが部屋の中に入り込んで、ボイルに会いたいと言って彼女に電話をさせます。

ボイルに取引の話をするチャーリー(左)
金の受け渡し条件を聞くボイル(右)

 モリ―とビリヤードをやっていたボイルが電話に出て、チャーリーが金を返すと告げます。ボイルはなぜ金を返すのか聞くと、チャーリーはゴリラ男に命を狙われているからと言います。ボイルはニヤッと笑って受け渡しの場所と時間を聞きます。チャーリーは一人で来るように言い、落ち合う場所と時間をボイルに伝えます。半径500ヤード以内に人がいたら取引は中止だと言って電話を切ります。(電話を切った後のボイル役のジョン・ヴァーノンの表情が素晴らしいですね。)

モリ―が受け渡し場所に行くと言うと拒否するボイル(左)
お楽しみ後のチャーリーとフォート(右)

 電話は終わったボイルにモリ―が“バリックか?”と聞くと、ボイルは“お前は来るんじゃない”と言います。モリ―が“何故?”と聞くと、ボイルは“500ヤード以内に誰かいると取引は終わりになる”と言います。モリ―は“501ヤードの所に”と言いかけると、ボイルは“駄目だ”と言います。(このシーンのモリ―は、ボイルへの疑惑を深めた表情をしています。)電話を終えたチャーリーにフォートは、止めた方が良いと言って、“彼は信用出来ない”と言います。チャーリーはそんな事を気にしないで、目の前の円形ベッドを指差してこんなベッドは初めてだと言います。お楽しみが終わって、ベッドに並んで横になっています。フォートが死なないでと言うと、チャーリーは死なないように努力すると言います。彼女は“あなたが南南西を向いて寝れば寝る”と言うと、チャーリーは“南南西か”と言いながら彼女の上に乗っかります。(最近の映画のようなお楽しみのシーンは御座いません。)

上空から地上を確認をするチャーリー(左)
ボイルと仲間の様な芝居をするチャーリー(右)

 翌朝、チャーリーは複葉機で指定した場所に向かいます。ボイルが車で現れ、広い敷地の廃車置き場から離れた場所に車を止めます。車から降りた彼は、上空を見回します。モリ―は廃車に紛れて車を停めて、車内に潜んでいます。やがて遠くから飛行音が聞こえ、チャーリーは上空を旋回しながらボイルに連れがいないか確認します。やがてボイルの車が停めてある方に飛行機を着陸させてボイルの方に駆け寄り、“上手くいったな”と言いながらボイルに抱き付きます。ボイルは“何の真似だ“と言いますが。チャーリーはお互いが仲間のように振舞います。

二人の様子を見て激怒するモリ―(左)
飛行機の離陸を車で阻止するモリ―(右)

 遠くからそれを見ていたモリ―は、車を急発進して二人の元に飛び出します。モリ―の車が向かってくるのを見て、チャーリーは”騙したな“と言ってボイルを突き放し、飛行機に向かって走ります。モリ―は笑顔でボイルを跳ね飛ばし、チャ-リーが乗る飛行を追いかけます。ここでチャーリーは離陸出来ないかのような振りをして、地上を走り回ってモリ―の車との追っ掛けっこを行います。

ひっくり返った飛行機の操縦席で逆さまになったチャーリー(左)
ポケットから車のキーを取るモリー(右)

 チャーリーの操縦する飛行機が止まった時にひっくり返り、チャーリーは操縦席で逆さまになってぶら下がっています。それを見たモリ―は笑いながらチャーリーに近づいて”しぶとい男だ“と言います、チャーリーはモリ―に金を渡すから助けてくれと言うと、モリ―は金が先だと言います。チャーリーはポケットの車のキーを取るように言い、金は青いシボレーのトランクにあると言います。

ダイナマイトの爆発で爆死するモリ―(左)
紙幣をトランクに投げ込むチャーリー(右)

 早速モリ―が車のトランクを開けると、中には奇妙な部品とサリバンの死体が入っていました。途端に爆発が起こり、モリ―は吹き飛ばされて爆死します。チャーリーは操縦席から這い出し、黒いごみ袋を取り出して用意していたツートーン・カラーのセダンのトランクを開けます。一つのゴミ袋を開けて紙幣を取り出し、燃えているシボレーのトランクに紙幣を投げ込みます。周辺にも紙幣は散らばり、オーバーオールを脱いでトランクに投げ入れます。セダンに乗ってエンジンを掛けますが直ぐにはエンジンが掛からず、やっとエンジンが掛かってその場から去ります。

廃車置き場から走り去るチャーリーが運転する車(左)
燃えるオーバーオール(右)

 カメラはやや俯瞰で廃車置き場から去るチャーリーの車を映し、視点を変えて燃えている車のトランクの方に向かいます。燃えるオーバーオールが映し出され、オープニング・タイトルと同じ映像になり映画は終わります。(全てチャーリーが予想した通りに事が運びました。歯医者でサリバンのカルテは抜き取り、彼の歯のレントゲン写真はチャーリーのカルテに入っています。これでサリバンの死体はチャーリーとなり、これから彼は別人となって悠々自適の生活ですね。)最後までお付き合い頂きまして、有難う御座いました。

『突破口!』 作品データ

1973年製作 111分 アメリカ
原題:CHARLEY VARRICK

監督:ドン・シーゲル

製作:ドン・シーゲル

製作総指揮:ジェニングス・ラング

原作:ジョン・リーズ

脚本:ハワード・ロッドマン、ディーン・リーズナー

編集:フランク・モリス

音楽:ラロ・シフリン

ウォルター・マッソー:チャーリー・ヴァリック

ジョー・ドン・ベイカー:モリ―(殺し屋)

アンドリュー・ロビンソン:ハーマン・サリバン(相棒)

ジャクリーン・スコット:ネイディーン・ヴァリック(妻)

フェリシア・ファー:シビル・フォート(秘書)

シェリー・ノース:ジュエル・エベレット(偽造屋)

ジョン・ヴァーノン:メイナード・ボイル(マフィアのボス)

マージョ・ベネット:(隣人のターフ夫人)

Vol.65 『突破口!』の続きの続き

宿泊先に着いたモリ―を出迎えるビキニ姿の若い子(左)
モリ―に挨拶をするビバリー(右)

 モリ―は昼夜を掛けて車を走らせ、宿泊先の24時間営業の放牧場に着きます。そこは周囲が金網で囲われていて、その中に建物があります。モリ―が金網の扉の横のボタンを押すと、建物の中からビキニ姿の若い子が出て来て扉の開錠をして中に案内します。部屋に入るとビキニ姿の若い子達が待機していて、モリ―を出迎えます。ここの本業は売春宿で女の子がいつもの客のように話すと、モリ―はバカと話に来たんじゃないと言います。ここを仕切っているビバリーが現れ、モリ―に挨拶をしてなんでも云いつけるように言います。モリ―が“ベッド”と言うと、ビバリーは特別室に案内します。モリ―は翌朝の朝食を注文すると、ビバリーが“お楽しみの方は?”と聞きますが、モリ―は“金で寝る女は好きじゃない”と断ります。

ターフ夫人から渡された新聞を見るサリバン(左)
サリバンに外には出ないように指示するチャーリー(右)

 画面が変わってトレーラーハウス、ターフ夫人が登場して石を拾ってドラム缶に投げ入れます。トレーラーハウスの中では、サリバンが奪った金が無くなっている事に気が付き、チャーリーと叫びながら外に飛び出します。外ではターフ夫人が、銀行強盗の記事が書かれた朝刊を郵便受けから勝手に取り出して読んでいます。サリバンは走りながらターフ夫人に、チャーリーを見なかったか聞きます。ターフ夫人は銀行強盗の記事が出ていると言いながらサリバンに新聞を渡し、チャーリーは奥さんを探しに行くと言って早朝出て行ったと言います。サリバンがハウスに戻ると電話機が鳴っていました。チャーリーからの電話で部品の買い出しで町に来ていると言うと、サリバンは金の隠し場所を聞きます。チャーリーは安全な場所に隠したと言い、やる事が沢山あるから外に出ないように伝えて、夜には帰ると言って電話を切ります。

トムにパスポートの偽造屋を紹介して貰うチャーリー(左)
ジョンからの情報を聞くモリ―(右)

 チャーリーは銃砲店に入り、車椅子の店主のトムにアルの紹介で来たことを告げます。トムはアルの風貌を訪ね、アルの友人か確かめます。チャーリーは偽造パスポート屋の紹介を依頼すると、500ドルと言うので高いと言ったら600ドルに値上げされます。(1973年の1ドルは、250円くらいです。)600ドル払って偽造パスポート屋の名刺を貰い、トムに大金を隠す場所を聞きますが、連絡先を聞かれたので又来ると言って店を出ます。モリ―が寝ている部屋にビバリーが電話機を持って入ってきます。ジョンからの電話で、トム銃砲店に行くように指示があります。

支店長のヤングと話をしたいと言うボイル(左)
ボイルに支店長には今会えないと伝える州検事(右)

 画面が変わって、ウエスタン信託銀行のニューメキシコ支店に頭取のメイナード・ボイルが現れます。中に入ろうとすると止められたので、支店長のハロルド・ヤングに会いたいと言います。会うには検事の許可が必要だと言って、男は中に入ります。その時ブランコに乗っている女の子がボイルに声を掛け、押してくれるように頼みます。ボイルが女の子の背中を押していると検事が出て来て、何の用か尋ねるので支店長に会いたいと言います。ボイルが話しながら女の子の背中を押しているので、検事が寄って来て今は会えないと言います。ボイルが支店長逮捕したのかと聞くと、検事は逮捕していないが全員が容疑者だと言い、ボイルの滞在先を訪ねて連絡するように伝えると言って銀行に戻ります。(この何気ないブランコのシーンは、シ-ゲル監督らしい演出ですね。)

偽装屋のエベレットにパスポートの偽造を依頼するチャーリー(左)
追加料金を払うチャーリー(右)

 チャーリーは偽造屋のジュエル・エベレットのスタジオに行きます。車いすのトムの紹介だと言って、トムの名刺を渡します。彼女に偽造パスポートを2通造るように依頼すると、2通で500ドルと言われます。彼女はチャーリーの写真を撮り、お金を受け取ります。サリバンの顔写真は彼の免許証からコピーするように言うと、彼女が完成は2日後と言うので明日の6時までにチャーリーは言います。特急料金で更に500ドルを請求するので、お金を渡して夜中の12時に受け取ると言います。帰りがけにプラスチック容器に入ったキャンディを1本取って“貰うよ”と言ったら、彼女は“500ドルよ”と言うのでチャーリーはキャンディを諦めて帰ります。

トムの店に現れたモリー(左)    チャーリーに突き飛ばされたトム(右)

 画面がかわって、モリ―がトムの銃砲店に表れます。トムにモリ―だと名乗ると、とっておきの情報があるが金を出せと言います。モリ―は心がけ次第で金は稼げると言うと、トムが安売りはしないと言ってウィスキーを飲みます。モリ―はニッコリ笑って、車椅子のトムをカウンター越しに強く押します。トムは後ろにあった棚にぶつかり、車椅子ごとひっくり返ります。モリ―は話を聞かせて貰おうかと言います。(その後の無用な暴力シーンは省略されていますが、相手が身体障者でもモリ―は容赦ない暴行を加える事は充分に想像できます。)

ヤングにマフィアの金を渡した訳を聞くボイル(左)
ボイルの話に怯えるヤング(右)

 ボイルと支店長のヤングが、郊外の牧場で話をします。ボイルは組織から疑われていると言い、何故ヤングの支店を選んだのか聞かれると答えようがなかったと言います。マフィアの隠し金の事は、俺とお前しか知らない。その金が金庫に入った直後に奪われたのは、内部の犯行だと思われているとボイルが言います。ヤングはボイルに偶然だと言いますが、マフィアは偶然を信じないとボイルが言い、どうしてマフィアの金を渡したんだと問い詰めます。ボイルはヤングに身を隠すように言い、見つかったら拷問されて殺されると言います。ボイルは、すっかりおびえ切ったヤングを連れ帰ります。

パイプでノックするモリ―(左)
痛めつけたサリバンに金とチャーリーの居場所を執拗に聞くモリ―(右)

 モリ―が偽造屋エベレットのスタジオに現れ、チャーリーの名刺を手に入れてトレーラーハウスに向かいます。モリ―は郵便受けのハウスの番号を見て、車で近付き“チャーリー・ヴァリック”と二度大声で叫ぶと、隣人のターフ夫人が戸を少し開けて留守だと言います。モリ―が仕事の話で来たと言うと、ターフ夫人は隣のサリバンに話すように言います。モリ―は車から降りて、サリバンのハウスのドアをパイプでノックした序に吸殻を出しています。サリバンが留守だと言うと、モリ―は空中散布を頼みたいと言い、明日は来られないから名刺を渡すと言います。サリバンはドアを少し開けますが、モリ―は暗くて名刺を探せないと言ってドアを開けさせます。部屋の中に入ったモリ―は、名前を確認すると、いきなり顔を殴って膝蹴りをし、強烈な一撃を腹に加えて投げ飛ばします。床に倒れたサリバンを起こして椅子に座らせて、もう一度腹を殴ってから“金は何処だ”と聞きます。肋骨が折れたサリバンが白状しないので、モリ―は質問を変えてチャーリーの居場所を聞きます。サリバンは知らないと言うと、モリ―が置いてきぼりにされたのかと聞きます。事情を知らないサリバンは置いてきぼりにされたと言うと、モリ―はどうして免許証を渡してパスポートを造ったか聞きます。サリバンは免許証を持っていると言ってモリ―に見せようとしますが、免許証はありません。モリ―はサリバンを投げ倒して“金はどこだ”と聞きますが、本当に知らないサリバンは知らないと答えてチャーリーが金を返すと言っていた事を伝えます。モリ―が何故金を返すのかと聞くと、サリバンがマフィアの鐘だからと答えます。モリ―は裏で糸を引いているのは誰だ、ヤングかボイルかと聞きますは、サリバンは知らないと答えると、モリ―はため息をついて、あんたじゃ話にならないと言ってこのシーンは終わります。(このシーンでのモリ―の堂々としたプロの仕事ぶりと、痛めつけられていくサリバンとの対比で、モリ―の恐ろしさがよくわかります。)

元気が無いヤングに声を掛ける保安官(左)  ピストル自殺したヤング(右)

 画面が変わって銀行で、保安官が支店長に元気がないなと声を掛けます。支店長が大丈夫だろ言って、部屋から出て行く保安官にドアを閉めるように言います。検事と保安官が銀行に待機していた二人の強盗の事を話している時に、支店長室から銃声がして支店長が自殺をしていました。警官たちは放置されていた車両を調べ、発見されたマッチを手掛かりに捜査を開始します。

モリ―に殴り殺されたサリバン(左)
”用心しないからだ”と言うチャーリー(右)

 トレーラーハウスから出てきたモリ―は、車でその場を去ります。近くの茂みに隠れていたチャーリーが現れ、ハウスの中に入ります。そこには惨殺されたサリバンの遺体がありました。チャーリーは死んだサリバンに”用心しないからだ“と言います。次回に続きます。最後までお付き合い頂きまして、有難う御座いました。

『突破口!』 作品データ

1973年製作 111分 アメリカ
原題:CHARLEY VARRICK

監督:ドン・シーゲル

製作:ドン・シーゲル

製作総指揮:ジェニングス・ラング

原作:ジョン・リーズ

脚本:ハワード・ロッドマン、ディーン・リーズナー

編集:フランク・モリス

音楽:ラロ・シフリン

ウォルター・マッソー:チャーリー・ヴァリック

ジョー・ドン・ベイカー:モリ―(殺し屋)

アンドリュー・ロビンソン:ハーマン・サリバン(相棒)

ジャクリーン・スコット:ネイディーン・ヴァリック(妻)

フェリシア・ファー:シビル・フォート(秘書)

シェリー・ノース:ジュエル・エベレット(偽造屋)

ジョン・ヴァーノン:メイナード・ボイル(マフィアのボス)

マージョ・ベネット:(隣人のターフ夫人)