Vol.22 『ビッグ・トレイル』の続き

 タイトルの『ビッグ・トレイル』は大規模な幌馬車隊の意味で、50台位の幌馬車隊がミシシッピーからオレゴンまでの4023キロを進む話です。幌馬車隊はコールマンに道先案内人の依頼をしますが、友人トムを殺害して毛皮を盗んだ犯人捜しの為断ります。コールマンは知り合いのリディの家で、西部に向かうルースに人違いをしてキスしてしまいます。ルースは怒ってここから彼への反目が始まります。コールマンは毛皮商人から得た情報から友人殺しの犯人が幌馬車隊にいると思い、道先案内人を引き受けます。既にフラックが案内人になっていましたが、先住民と友好関係にあるコールマンにも幌馬車隊は案内人を依頼します。船上で賭博をしていた賭博師のソープは、船長から下船と町に残る事を禁止されます。ソープは旧知のフラックに会い、幌馬車隊に同行する事にします。

出発準備中の幌馬車隊(左)  出発した幌馬車隊(右)

 この映画の見せ場は、やはり幌馬車隊の道中の出来事を克明に描いている処です。冒頭の幌馬車と群衆の映像は圧巻で、出発準備の状況も分かり易く描かれています。移動を始めた幌馬車隊を画面一杯に捉え、幌馬車と共に移動する牛の群れも映し出しています。その後、川を横切り場面では流れに負けて倒れる幌馬車があったり、牛を向う岸に移動させるさまが分かります。

川を渡る幌馬車隊(左)  沈みながら流される幌馬車(右)

 コールマンは先住民二人を連れ立って、食料調達の為にバッファロー(正しくはアメリカン・バイソン)を狩りに行きます。それを聞いたフラックは、ピートとロペスにコールマンを殺すように指示します。狩りをしているコールマンは、銃で撃たれて倒れます。ピートとロペスは、コールマンを仕留めたとフラックに伝えます。幌馬車隊が川を渡っている時に、コールマンが馬無しで現れてルースの幌馬車で川を渡ります。ルースに声を掛けたフレックたちは、幌馬車から降りて来たコールマンを見て驚きます。コールマンは“どうした。幽霊でも出たか”とフレックに言います。ジークの所に行き、隊を離れたのはピートとロペスだと知ります。その時、突然先住民が丘の上に表れます。コールマンとは旧知の先住民ブラック・エリクたちで、幌馬車隊と友好関係を結びます。

ブラック・エリクと
友好関係を結ぶコールマン

 森を通る時は木を伐採して道を作ったり、崖から幌馬車や牛を下に下す場面があり、下ろし損ねて破壊する幌馬車も描かれています。凄い場面が映し出されていますが、淡々と描かれていて私は少々物足りない感じがしました。この道中の間、コールマンはルースを色々と手助けをした事により、彼女は徐々にコールマンを理解するようになります。一方、邪魔なフラックはコールマンを殺害する為に、ソープの弱みに付け込み殺害させるように仕向けますが、コールマンの相棒のジークに返り討ちに合いソープは射殺されます。

木を伐採して道を作る(左)  崖下に幌馬車や家畜を降ろす(右)

 友好関係にない先住民の襲撃があり、50台位の幌馬車で円陣を組み中に馬や牛を入れ、男達は銃を構え女性は銃の弾込めをして待ち構えます。画面に円陣を組んだ幌馬車隊に向かって先住民が襲撃を始め、銃撃戦が開始されてからの場面は迫力がある場面になっています。先住民の三度の襲撃に耐え、犠牲者を出しながらも何んとか撃退します。コールマンは手伝ってくれた先住民を彼らの村まで送って行きます。幌馬車隊は雨が降る中、沼地を乗り越えて平坦な道に出た時コールマンが帰って来ます。ルースに挨拶に行こうとしますが、5日前に馬車が動かなくなりその場に残った事を知ります。コールマンは直ちにルースたちを助けに行きます。

円陣を組む幌馬車隊(左)  先住民との銃撃戦(右)

 やがて雪が降り吹雪になります。フラックは先に進めないから引き返そうと言いますが、コールマンが皆を説得して先に進みます。フラックは今度ロペスにトムのナイフで、コールマン殺害を命令します。ロペスは殺害に失敗してナイフを置き去りにして逃げ出します。このナイフを見たコールマンは、トム殺害の犯人はフラックとロペスであると確信します。逃げ帰ったロペスは殺害失敗をフラックに告げると、フラックはロペスと共に逃げ出します。

 幌馬車隊は目的地の渓谷を見下ろす山の上に着き、コールマンは皆と別れてフラックとロペスを探しに行こうとします。ルースは必至に制止しようとしますが、コールマンは出て行きます。雪が降る中、ロペスは力尽きたのか倒れています。フラックはロペスを置き去りにして一人で逃げます。雪に埋もれて死んだロペスをコールマンは見つけ、フラックを追跡します。フラックを見つけたコールマンは声を掛け、ナイフを投げてフラックを倒します。

渓谷を見下ろす幌馬車の人たち(左)
コールマンを阻止しようとするルース(右)

 渓谷に着いた幌馬車隊の人たちは、夫々協力し合って家を建てています。ジークはルースにここから出て行くと云う話をしている時、コールマンが向かってきていると気が付きます。ジークはルースにコールマンからの贈り物があるから巨木の辺りに行って見つけるように言います。喜んでルースが巨木の所に行って贈り物を探していると、コールマンが現れるという粋なラスト・シーンで終わります。それにしてもこの巨大の林は圧巻です。

コールマンの話をするッジーク(左)
コールマンを出迎えるルース(右)

 素晴らしい脚本で巨費を掛けてワイド・スクリーンで撮影されたにも関わらす、残念ながらこの映画は興行的に失敗しました。キャリアが浅い無名の新人ジョン・ウェインは、背一杯の演技をしていたと思いますが、やはり観客はスター俳優が出ない映画を観ないのかとも思いました。レンタル店にもあると思いますので、西部劇ファンの方には是非観て頂きたい映画です。最後までお付き合い頂きまして、有難う御座いました。

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『ビッグ・トレイル』 作品データ

アメリカ 1930年製作 モノクロ 121分
原題:The Big Trail

監督:ラォール・ウォルッシュ

原作:ラォール・ウォルッシュ、ハル・G・エバーツ

脚本:ラォール・ウォルッシュ、ハル・G・エバーツ

撮影:ルシエン・アンドリオ

助監督:アーチボールド・ブカナン

出演:ジョン・ウェイン、マルゲリーテ・チャーチル

   エル・ブレンデル、タリー・マーシャル

   タイロン・パワー・シニア、チャールズ・スティヴンス

   イアン・キース、フレデリック・バートン

   デイヴィッド・ローリンスラス・パウエル

   ウィリアム・V・モング、マーシャ・ハリス

   ヘレン・パリッシュ