Vol.45『チップス先生さようなら』の最終章

コリー2世とパーキンスを仲直りさせるチップス先生(左)
校長から引退を勧められるチッピング(右)

 画面が変わり、校舎の入り口で生徒たちが点呼を取られているシーンになります。点呼を終えた生徒たちの会話で、時の流れを簡潔に表現しています。1899年10月10日の南ア戦争(ボーア戦争とかズール戦争とも云われています)から始まり、ビクトリア女王(1819年5月24日~1901年1月22日)の葬儀と時は進みます。校舎の入り口で点呼を取っているチッピングは、既に60歳代になっています。そこに校長からの呼び出しがあり、校長室に向かいます。途中で喧嘩している新入生のコリー2世とパーキンスを見付けて、仲裁に入り仲直りをさせます。チッピングが校長室に入ると、校長から最新式のラテン語の発音を採用する様に言われます。時代は変わっている、古いものに固執するなら引退するように言われます。古き伝統を重んじるチッピングは、時代が変わって古き良きものが失われて行く、自分は引退しないでここまま行くと言って退室します。(この時のチッピングの台詞に“子供たちを自立させる為に教えている”と云うのがありますが、この言葉は世の大人が永遠に伝え続けなければならない事ですね)

5年前のエピソードを話す校長(左)
全校生徒からの贈り物を受け取るチップス先生(右)

 それから5年後、チッピングは引退します。講堂でチッピングの引退式典が開催され、校長から引退勧告時のエピソードが話された後全員で乾杯し、全校生徒からプレゼントが贈られます。チッピングの引退時のスピーチはユーモアに溢れ、語り口や表情は長年教壇に立っていた70歳の先生そのものです。校舎から出る時。門番の老人がこれから会えなくなるのが寂しいと声を掛けて来て、校長先生になれると思っていたと伝えます。チッピングは、亡くなった妻のキャサリンの事を思い出します。老人はオーストリアの皇太子が暗殺された事も話します。(1914年6月28日のサラエボ事件で、この暗殺によって第一次世界大戦が始まります)

通りを行進する志願した生徒たち(左)
戦争は直ぐ終わると話すチップス先生(右

 通りを軍隊が行進している画面に変わります。チップス先生の家に集まった生徒たちは窓からそれを眺め、卒業生が入隊したとか自分も志願するとか戦争の話をしています。その当時殆どのイギリス人が思っていたように、チップス先生も戦争は数週間で終わると生徒たちに話します。

チップス先生に会いに来たコリー2世(左)
青年になったパーキンス(右)

 しかし、予想に反して戦争は長引き出兵した卒業生や教師が戦死し、校長が講堂で全校生徒に報告します。そこに青年になったピーター・コリー2世が現れ、チップス先生に自分の出兵後に家を訪問して妻の話し相手になってくれるように頼みます。コリー2世を見送る為に外に出るとパーキンスが待っていました。コリー2世とパーキンスは新入生だった頃に取っ組み合いの喧嘩をしましたが、パーキンスは士官のコリー二世の部下で仲良くやっています。

校長就任を依頼する理事長(左)
校長室でキャサリンの写真に報告するチップス先生(右)

 帰宅すると理事長は待っていて、校長が軍隊に志願したのでチッピングに戦争が終わる迄校長になるように依頼されます。チッピングは申し出を受け、翌日校長室でキャサリンの写真を眺めながら“君が言った通り、校長になった”と写真のキャサリンに報告します。

戦地に向かう生徒たちを見送るチップス先生と軍人(左)
校長室でバートンに罰を与えるチップス先生(右)

 学校から出兵する生徒たちを見送るチッピングに、軍人が彼らは明日の将校だと言います。チッピングは、明日が来なければいいと返します。(イギリスの名門校の生徒は、ノブレス・オブリージュ<noblesse oblige>と云う道徳観に基づき、開戦時には国を守る為に志願して戦地に向かいます)画面が変わって校長室、教師に反抗的な態度を取ったバートンに罰を与えます。バートンは学校に残って教えている教師は臆病者だと思っていて反抗していましたが、教師全員は志願をしているが学校を守る為に残った教師がいる事を教えます。

チップス先生の家を訪問するコリー3世(左)
お茶を淹れて語り合うコリー3世とチップス先生(右)

 学校の教会でチップス先生はコリー2世の戦死を伝え、親友のドイツ語教師マックス・シュテフェルの戦死も伝えます。チッピングが帰宅すると終戦を知らせる電話があり、講堂で生徒たちに終戦を伝えます。終戦によりチッピングは臨時校長から元の生活戻ります。時が流れ83歳になったチッピングの家に新入生のコリ―3世が訪問して来ます。先輩の悪戯で訪問したコリー3世を家に入れて二人でお茶を飲みながら語り合います。以前、コリーに2世の家を訪問した時は赤ん坊だった子です。コリー3世が帰る時、チッピングは体調不良を感じ見送らずに椅子に座ったままです。コリー3世が、“さよならチップス先生”と言ってドアを閉めます。その言葉を耳にしたチッピングは、過去の出来事が思い浮かびますが体調が悪くなっていきます。

病床のチッピングを見舞う理事長と校長(左)
私には何千人もの子供がいると話すチッピング(右)

 画面が変わり病床につくチッピング、校長が見舞いに来ていて“子供がいればよかったのに”と話しています。その時、チッピングは“私には何千人もの子供いる”と言います。画面に今まで卒業した生徒たちの映像が流れ、最後にピーター・コリーが笑顔で“チップス先生、さようなら”と言って映画は終わります。

さようならを告げるピ-ター・コリー

 この映画は、ごく普通の教師の半生記を描きながら多くの事を学ばせてくれます。ヒューマン・ドラマであり、ラブ・ストーリーであり、反戦ドラマでもありますが、決して押し付けがましくなく自然に受け入れられると思います。これこそ名作です。是非、多くの方々に観て頂きたい映画です。手元に置いて、時々観て頂きたいと思います。最後までお付き合い頂きまして、有難う御座いました。

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発売元:ワーナー・ホーム・ビデオ

『チップス先生さようなら 』 作品データ

原題:GOODBYE, MR. CHIPS

アメリカ・イギリス 1939年 モノクロ 114分

監督:サム・ウッド

製作:ヴィクター・サヴァル

原作:ジェームズ・ヒルトン

脚本:R・C・シェリフ、クローディン・ウェスト

   エリック・マスクウィッツ

撮影:フレディ・ヤング

編集:チャールズ・フレンド

音楽:リチャード・アディンセル

出演:ロバート・ドーナット、グリア・ガーソン

   テリー・キルバーン、ポール・ヘンドリード

   ジョン・ミルズ、ジュディス・ファース