Vol.66 『突破口!』の最終章

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エベレットを殴るモリー

 モリ―は偽造屋のエベレットの所に行き、チャーリーがパスポートを受け取りに来るのを待ちます。(ここでモリ―がエベレットに裏手でビンタをしてお楽しみに入りますが、女性を殴るシーンは1940年代・1950年代の映画でよく見られました。恐らく当時の映画に対する、シーゲル監督のオマージュかと思います。)

チャーリーに警告する保安官(左)
チャーリーは留守だと保安官に言いに来たターフ夫人(右)

 画面が変わって翌日の朝、お馴染みのターフ夫人が玄関前の牛乳を取に出てハウスの方を見ます。多くの警官が銃を持って、チャ-リーのトレーラーハウスを囲んでいます。保安官が、拡声器でチャーリーに出てくるように警告しています。ターフ夫人はロッキングチェアーに座って眺めています。保安官がドアに体当たりをして中に入ると、室内は無人でした。そこにターフ夫人が現れて、呆れ顔で“誰もいないよ”と言います。

ダイナマイトを購入するチャーリー(左)
銀行の本店に電話をするチャーリー(右)

 チャーリーがダイナマイトや時限装置を購入しています。支払いが終わってから店主は何に使うのかと聞くと、チャーリーは“さあね”と言います。(このシーンの店主の表情が絶妙で、良い演技ですね。)チャ-リーは自社の飛行場からウエスタン信託祇行本店に電話をして、頭取のボイルと話したいと言います。秘書のフォートが、ボイルが不在だと伝えて用件を伺いますと言います。チャーリーは直接話すと言ってから、秘書の名前を聞いて電話を切ります。チャーリーはスーツの上からオーバーオールを着て、外に待機させていた複葉機に乗ってリノへ飛び立ちます。

少年から薔薇を買うチャーリー(左)   ボイルに電話をするフォート(右)

 リノのウエスタン信託銀行の本店があるビルの近くでチャーリーは車の中からビルを見上げ、路上で花を売っている少年から手持ちの薔薇を全て買います。夜になってチャーリーはそのビルの近くで、秘書のフォートが出て来るのを車の中で待ちます。やがてフォートがビルの玄関に着いた時、ドアマンが頼まれ物のバラを渡します。誰から贈られたか分からないバラを受け取った彼女は車で帰宅します。チャーリーはその後を尾行します。フォートが帰宅して間もなく来客があり、誰か尋ねるとお届け物と言われて不審に思いながらドアを開けます。ドアを開けるとチャーリーが部屋の中に入り込んで、ボイルに会いたいと言って彼女に電話をさせます。

ボイルに取引の話をするチャーリー(左)
金の受け渡し条件を聞くボイル(右)

 モリ―とビリヤードをやっていたボイルが電話に出て、チャーリーが金を返すと告げます。ボイルはなぜ金を返すのか聞くと、チャーリーはゴリラ男に命を狙われているからと言います。ボイルはニヤッと笑って受け渡しの場所と時間を聞きます。チャーリーは一人で来るように言い、落ち合う場所と時間をボイルに伝えます。半径500ヤード以内に人がいたら取引は中止だと言って電話を切ります。(電話を切った後のボイル役のジョン・ヴァーノンの表情が素晴らしいですね。)

モリ―が受け渡し場所に行くと言うと拒否するボイル(左)
お楽しみ後のチャーリーとフォート(右)

 電話は終わったボイルにモリ―が“バリックか?”と聞くと、ボイルは“お前は来るんじゃない”と言います。モリ―が“何故?”と聞くと、ボイルは“500ヤード以内に誰かいると取引は終わりになる”と言います。モリ―は“501ヤードの所に”と言いかけると、ボイルは“駄目だ”と言います。(このシーンのモリ―は、ボイルへの疑惑を深めた表情をしています。)電話を終えたチャーリーにフォートは、止めた方が良いと言って、“彼は信用出来ない”と言います。チャーリーはそんな事を気にしないで、目の前の円形ベッドを指差してこんなベッドは初めてだと言います。お楽しみが終わって、ベッドに並んで横になっています。フォートが死なないでと言うと、チャーリーは死なないように努力すると言います。彼女は“あなたが南南西を向いて寝れば寝る”と言うと、チャーリーは“南南西か”と言いながら彼女の上に乗っかります。(最近の映画のようなお楽しみのシーンは御座いません。)

上空から地上を確認をするチャーリー(左)
ボイルと仲間の様な芝居をするチャーリー(右)

 翌朝、チャーリーは複葉機で指定した場所に向かいます。ボイルが車で現れ、広い敷地の廃車置き場から離れた場所に車を止めます。車から降りた彼は、上空を見回します。モリ―は廃車に紛れて車を停めて、車内に潜んでいます。やがて遠くから飛行音が聞こえ、チャーリーは上空を旋回しながらボイルに連れがいないか確認します。やがてボイルの車が停めてある方に飛行機を着陸させてボイルの方に駆け寄り、“上手くいったな”と言いながらボイルに抱き付きます。ボイルは“何の真似だ“と言いますが。チャーリーはお互いが仲間のように振舞います。

二人の様子を見て激怒するモリ―(左)
飛行機の離陸を車で阻止するモリ―(右)

 遠くからそれを見ていたモリ―は、車を急発進して二人の元に飛び出します。モリ―の車が向かってくるのを見て、チャーリーは”騙したな“と言ってボイルを突き放し、飛行機に向かって走ります。モリ―は笑顔でボイルを跳ね飛ばし、チャ-リーが乗る飛行を追いかけます。ここでチャーリーは離陸出来ないかのような振りをして、地上を走り回ってモリ―の車との追っ掛けっこを行います。

ひっくり返った飛行機の操縦席で逆さまになったチャーリー(左)
ポケットから車のキーを取るモリー(右)

 チャーリーの操縦する飛行機が止まった時にひっくり返り、チャーリーは操縦席で逆さまになってぶら下がっています。それを見たモリ―は笑いながらチャーリーに近づいて”しぶとい男だ“と言います、チャーリーはモリ―に金を渡すから助けてくれと言うと、モリ―は金が先だと言います。チャーリーはポケットの車のキーを取るように言い、金は青いシボレーのトランクにあると言います。

ダイナマイトの爆発で爆死するモリ―(左)
紙幣をトランクに投げ込むチャーリー(右)

 早速モリ―が車のトランクを開けると、中には奇妙な部品とサリバンの死体が入っていました。途端に爆発が起こり、モリ―は吹き飛ばされて爆死します。チャーリーは操縦席から這い出し、黒いごみ袋を取り出して用意していたツートーン・カラーのセダンのトランクを開けます。一つのゴミ袋を開けて紙幣を取り出し、燃えているシボレーのトランクに紙幣を投げ込みます。周辺にも紙幣は散らばり、オーバーオールを脱いでトランクに投げ入れます。セダンに乗ってエンジンを掛けますが直ぐにはエンジンが掛からず、やっとエンジンが掛かってその場から去ります。

廃車置き場から走り去るチャーリーが運転する車(左)
燃えるオーバーオール(右)

 カメラはやや俯瞰で廃車置き場から去るチャーリーの車を映し、視点を変えて燃えている車のトランクの方に向かいます。燃えるオーバーオールが映し出され、オープニング・タイトルと同じ映像になり映画は終わります。(全てチャーリーが予想した通りに事が運びました。歯医者でサリバンのカルテは抜き取り、彼の歯のレントゲン写真はチャーリーのカルテに入っています。これでサリバンの死体はチャーリーとなり、これから彼は別人となって悠々自適の生活ですね。)最後までお付き合い頂きまして、有難う御座いました。

『突破口!』 作品データ

1973年製作 111分 アメリカ
原題:CHARLEY VARRICK

監督:ドン・シーゲル

製作:ドン・シーゲル

製作総指揮:ジェニングス・ラング

原作:ジョン・リーズ

脚本:ハワード・ロッドマン、ディーン・リーズナー

編集:フランク・モリス

音楽:ラロ・シフリン

ウォルター・マッソー:チャーリー・ヴァリック

ジョー・ドン・ベイカー:モリ―(殺し屋)

アンドリュー・ロビンソン:ハーマン・サリバン(相棒)

ジャクリーン・スコット:ネイディーン・ヴァリック(妻)

フェリシア・ファー:シビル・フォート(秘書)

シェリー・ノース:ジュエル・エベレット(偽造屋)

ジョン・ヴァーノン:メイナード・ボイル(マフィアのボス)

マージョ・ベネット:(隣人のターフ夫人)