Vol.54 『フランケンシュタインの花嫁』の続き

メアリー・シェリーとバイロン卿とペーシー・ビッシュ・シェリー(左)
二人に物語を語り始めたメアリー・シェリー(右)

 嵐の夜、レマン湖畔にあるディオダティ荘と思われる建物が映し出されます。大きな居間にバイロン卿とパーシー・ビッシュ・シェリーと妻のメアリー・シェリーの3人がいます。刺繍をしているメアリーにバイロン卿が小説「フランケンシュタイン」は素晴らしい作品だと言いますが、夫のパーシーは結果が呆気なかったと言います。そこでシェリーは、あの話には続きがあると言って語り始めます。

焼け落ちる風車小屋(左)        市長に文句を言うミニー(右)

 画面が変わって前作の『フランケンシュタイン』のラスト・シーン、風車小屋が燃え落ちて行く処から物語が始まります。高台にある風車小屋が崩れ落ち、怪物も落ちていきます。それを見て喜ぶ市民に市長は私が皆を守ったと演説し、安心して帰って寝るように言います。偉そうに振舞う市長に文句を言うミニー、今回も大騒ぎするキャラクターをウナ・オコナーは好演しています。

怪物の死体を見に行こうとするハンスを止める妻(左)  怪物登場(右)

 市民が去った後、娘のマリアを怪物に殺されたハンスは、怪物の死を見届けようと下に降りようとした時、足を踏み外して川に落ちてしまいます。そこに怪物が現れてハンスは殺されてしまいます。ハンスの妻が焼け残った風車小屋からハンスに声を掛け、手が見えたので引き上げますが怪物でハンスの妻も川に突き落とされます。一人残っていたミニーの後ろに誰かが来たので振り返ると怪物だったので、悲鳴を上げながら一目散に逃げ去ります。

ヘンリーを看病するエリザベス(左)
ヘンリーを説得するブレトリア博士(右)

 ヘンリー・フランケンシュタインの死体が邸に運ばれて来て、婚約者のエリザベスに彼が死亡した事が伝えられます。死体は居間に運ばれて、エリザベスは泣き崩れます。そこにミニーが帰って来て、怪物が生きている事を執事に伝えますが信じません。死体の傍に来て独り言を言っていると、死体の手が動いてミニーが“生きている”と喚き出します。(前作でフランケンシュタイン博士は死ぬ予定でしたが、ホエール監督が生き残ったように編集し直して公開されました。)ヘンリーの体力も回復し、もう二度と怪物は作らないとエリザベスに話している時に恩師のプレトリア博士が現れます。彼は研究の手伝いをして欲しいと申し出ますが、ヘンリーもエリザベスも断ります。エリザベスがその場を離れた時に、博士は二人で手を組めば生と死の解明が出来ると言い、新しい生命体を作り出したと言います。自分の研究成果を見て欲しいと言ってヘンリーを自宅の研究所に誘います。科学者としての興味から、ヘンリーは博士の研究所に向かいます。

小さな生命体が入った瓶(左)  背景が映る瓶の中で踊る小さな生命体(右)

 研究所に入ると博士は大きな箱を持って来て、中から瓶を取り出します。その瓶の中には小さな人間が入っています。これは私が作った生命体だが、大きな生命体を作る為に君に手伝って欲しいと言います。(このシーンのでは瓶の中の生命体の動きよりも、瓶の上部や側面のガラスを通して見える背景が見事に撮影されています。もの凄い職人芸です。)もう実験をしたくないと言うヘンリーに博士は、怪物の友人を創ろうと言います。今度は女性の怪物を創ろうと持ち掛け、ヘンリーは協力することにします。

市民たちに捕えられる怪物(左)    地下牢に閉じ込められた怪物(右)

 画面が変わって、怪物は森の中を彷徨い、川を見つけて腹ばいになって水を飲みます。そして水面に映った自分の顔を似て、己の醜さを知ります。その時、崖の上に羊飼いの少女を見つけ唸り声で声を掛けます。少女は怪物を見て悲鳴を上げ、バランスを崩して川に落ちます。怪物は少女を助けに行きますが、少女が悲鳴を上げるので口を手で覆います。通り掛かった二人連れがそれを見て怪物に向かって銃を撃ちます。弾は怪物の腕に当たり、怪物は逃げ去ります。(この森のシーンのセットは、ホエール監督のイメージ通りに作られました。)市長は市民に怪物を捕まえに行くように言い、犬を連れて市民は手に長い棒を持って怪物を捕まえに行きます。犠牲者は出ましたが、怪物は捕らえられ大木に巣張りつけられて、馬車で運ばれて地下牢に入れられます。地下牢の椅子に鎖で固定されますが、怪物は簡単に床に固定したリングを抜き脱獄します。怪物は街中で市民を殺しながら逃亡します。

怪物を迎い入れる盲目の老人(左)      神に感謝する盲目の老人(右)

 画面が変わって、夜の森でキャンプしているジプシーの所に怪物が現れ食料を貰おうとしますが、ジプシーは逃げて行き食料は焚火の中に落ちて食べられません。食料を求めて歩いていくと小屋が見えて、中から心地良い音が聞こえてきます。窓から覗くと老人がいて、肩に乗せた何かから心地良い音が聞こえます。老人は外に人の気配を感じてドアを開けて声を掛けますが、返事が無いので家の中に戻ります。怪物はドアを開けて言葉にならない声を掛けます。この老人は目が見えないので、相手が怪物だとは知らず家に迎い入れます。盲目の老人は誰からも相手にされず孤独だったので、友人が出来た事を喜び怪物に食事を与えます。孤独だった老人は友人が出来た事を神に感謝します。その姿を見ていた怪物は、孤独だった自分自身と重ね合わせて涙します。(疎外された者同士に真の友人が出来た瞬間です。)

食事をさせながら言葉を教える盲目の老人(左)
盲目の老人が弾くヴァイオリンを聞く怪物(右)

 一夜明けて、老人は怪物に言葉を教えます。大火傷を負って火を怖がる怪物に正しく使えば良いものだと教え、葉巻を勧め怪物は葉巻を吸って喜びます。老人は良い事と悪い事があると言った時、怪物は“良い事”と言って老人にヴァイオリンを渡して弾くように頼みます。(社会から疎外された者同士が、友人が出来た喜びを感じて束の間の至福の時間を過ごすシーンです。このシーンがある事によって、この映画が単なるホラー映画ではなくヒューマン・ドラマという事が分かると思います。)老人が弾くヴァイオリンを喜んで聞いている時に、銃を持った二人連れが道を尋ねる為に家に入って来ます。部屋の中を見て、そいつは怪物だと言います。(ここでジョン・キャラダインが端役で登場です。)銃を怪物に向けて撃とうとする男を突き飛ばし、部屋の中を逃げ回る男を追い回す時に薪が暖炉に倒れて小屋は火事になります。二人の男たちは盲目の老人を連れて逃げ出します。

死体を盗ませるブレトリア博士(左)
怪物に食料とワインを与えるブレトリア博士(右)

 火の手が強くなり怪物も森に逃げ、像を倒して地下の遺体安置室に入り込みます。そこにはプレトリア博士と二人の男がいて、若い女性の死体を盗んでいる最中でした。二人の男たちが死体を運び出した後、博士はワインを飲んでいる処に怪物が現れます。博士は怪物を歓迎し、食料やワインを怪物に与えます。怪物は博士に自分のような男を創るのかと聞くと博士は女性の友達を創ると言います。博士は怪物にヘンリー・フランケンシュタインを知っているかと聞くと、僕を死体から創ったと言い、「死ぬのは好き」・「生きるのは嫌い」と言います。

 次回に続きます。最後までお付き合い頂きまして、有難う御座いました。

『フランケンシュタインの花嫁』 作品データ

1935年製作 アメリカ 75分 モノクロ

原題:The Bride of Frankenstein

製作:カール・レムリ・Jr

監督:ジェームズ・ホエール

脚本:ウィリアム・ハールバット、ジョン・L・ボルダーストン

特殊効果:ジョン・P・フルトン

撮影:ジョン・J・メスコール

美術:チャールズ・ホール

音楽::フランツ・ワックスマン

出演:ボリス・カーロフ:怪物

   コリン・クライブ:ヘンリー・フランケンシュタイン

   ヴァレリー・ホブソン:エリザベス

   エルザ・ランチェスター:メアリー・シェリー、怪物の花嫁

   アーネスト・セジガー:ブレトリア博士

   オリバー・ピーターズ・ヘギー:盲目の隠者

   ウナ・オコナー:従者のミニー

   ドワイト・フライ:カール

   E・E・クライブ:市長

   ギャビン・ゴードン:バイロン卿