Vol.24 『窓』の続き

皆に作り話をしているトミー(左)
嘘をつくのをやめるように云う両親(右)

 映画の舞台は、ニューヨークのイースト地区の古いアパートです。そこに住むボビー・ドリスコル扮するトミー少年は、日常的に周りの人間に作り話をする嘘つき少年です。自分が思いついた事を直ぐ口に出して嘘をつきますが、本人はそんな話を誰も信じないと思っています。そんな嘘話からアパートを追い出せれそうになり、両親はウンザリしながらも父親はトミーに嘘を言わないように言い聞かせます。出ずっぱりのボビー・ドリスコルの演技は、自然で本当に上手いです。表情、特に目の表情がとても良いと思います。

5階の非常階段で寝るトミー(左)   窓から覗くトミー(右)

 暑く寝苦しいある夜、トミーは窓から出て4階の非常階段で寝る事にしますが、5階の方が涼しそうなので寝場所を変えます。寝付けずにいると5階のケラーソン夫妻の部屋から物音がするので窓から覗いてみると、3人が争っていて一人の男が倒れました。その男の背中に血痕があり、続いてハサミが床に落ちます。画面はトミー少年が見たままを映し出していて、観客は彼と共に殺人を目撃します。昨今の映画の様に全て映像で魅せるよりもリアル感があると思います。

殺害されて床に倒れた男(左)   ケラーソン夫妻(右)

 殺人を目撃した事を直ぐ母親に話しても相手にされず、翌朝父親に話しても信じてもらえず、夢だったんじゃないかと言われてしまいます。母親はトミーに外出しないで部屋にいるように言いますが、トミーは窓から抜け出して警察署に行きます。

警察署で殺人目撃を伝えるトミー(左)
ケラーソン夫妻の部屋を調べる刑事(右)

 警察でも本気で相手にしてくれませんでしたが、トミーを納得させる為に刑事が同行して帰宅します。刑事は直ぐ署に帰ろうとしますが、思い止まって念の為5階のケラーソン夫妻の部屋を訪問します。勿論刑事とは名乗らず、アパート改修工事の見積もりに来たと言い、部屋を隈なく調べます。殺人現場の部屋の床には不審な染みがありますが、天井から落ちてきたものによって出来た様に見えます。刑事は何も手掛かり無しの状態で、署に帰り報告します。

トミーを連れ出すケラーソン夫妻

 母親はケラーソン夫妻に迷惑を掛けたと思い、嫌がるトミーを連れて謝罪に行きます。それによってケラーソン夫妻は、トミーがどこまで知っているか確かめる作戦を立て始めます。父親は夜勤の仕事で夜は不在で、タイミング良く母親の姉の病気が悪化して母親が出掛ける事になります。ケラーソン夫妻は、このチャンスを逃さず行動を開始します。ここから抜け目のないケラーソン夫妻と12歳のトミー少年の攻防が始まります。逃げ惑うトミーの子供らしい行動と、ケラーソン夫妻の追跡はハラハラ・ドキドキの連続です。

警察官に助けを求めるトミー

 ケラーソン夫妻にアパートから連れ出されたトミーは隙を見て逃げ出しますが、二人に捕まりタクシーでアパートに連れ戻されます。途中で見かけた警察官にトミーは助けを求めますが、ケラーソン夫妻に警察官は丸め込まれてしまいます。トミーはタクシーの中で気絶させられ、アパートに連れ戻されます。その頃父親もトミーの事が心配で会社を早く退社してアパートに戻ります。ここでのケラーソン夫妻と父親の行き違いが絶妙に演出されています。

5階の手すりに座らされたトミー(左)
警察官に行方不明の息子の話をする父親(右)

 ケラーソン夫妻は、気絶をしたトミーを5階の非常階段の手すりに座らせてトミーが自然に落ちる様にします。女がそれを止めさせようとした時、男と揉み合いになった隙に気絶をした振りをしていたトミーは屋根に向かって逃げ出します。一方父親はトミーの置手紙を見て5階のケラーソン夫妻の部屋を探したりします。そして、外にいた警察官に子供が行方不明だと伝え、捜索を手伝って貰います。

ケラーソンの追跡から隠れるトミー

 屋根に逃げたトミーを執拗に追いかけるケラーソン夫妻、光と影の素晴らしいカメラ・ワークで息を呑むシーンが続きます。トミーは何とか建物の中に逃げ込みますが、ケラ-ソン夫妻はじわじわと迫って来ます。トミーは5階から3階と逃げて行きますが、崩壊して階段が無い3階に追い込まれます。途中建物の一部が崩れ落ちる場面では、瓦礫や梁が落ちてくる処を下からカメラで捉えているので迫力があります。

梁の上に追い込まれたトミー

 追い詰められたトミーは柱が無くなった一本の梁に逃れます。ケラーソンはトミーを落とそうと迫って来ます。トミーの機転でケラーソンは梁ごと落ちてしまいます。しかし、内部が倒壊しそうな建物で、トミーが掴まっている梁も落ちそうな状態です。

梁に掴まっているトミーを見上げる両親(左)
マットに飛び降りたトミー(右)

 梯子を用意する猶予もありませんので、警官隊は円形のマットを持って飛び降りるように言います。トミーは勇気を出して飛び降りて、無事救助されます。トミーは両親に、もう作り話はしないと誓います。

良い子になったトミー

 こんな素晴らしい作品が埋もれてしまうのは、とても残念です。『窓』は、コスミック出版の下記のDVD10枚セットに入っています。このセットにはサスペンス映画の傑作・佳作が満載のセットでお勧めです。最後までお付き合い頂きまして、有難う御座いました。

「サスペンス映画コレクション 名優が演じる 戦慄の世界」
『Tメン』,『窓』,『生まれながらの殺し屋』,『上海ジェスチャ』が
入っているのお得なDVD10枚セット発行:コスミック出版
発行:コスミック出版 2020年6月9日発売

『窓』 作品データ

1949年製作 アメリカ モノクロ 73分
原題:The Windo

監督:テッド・テズラブ

製作:フレデリック・ウルマン・ジュニア

原作:コーネル・ウーリッチ

脚色:メル・ディネリ

撮影:ウィリアム・スタイナー

音楽:ロイ・ウェッブ

出演:ボビー・ドリスコル、バーバラ・ヘイル

   アーサー・ケネディ、ポール・スチュアート

   ルース・ローマン、アンソニー・ロス