Vol.34 『モーガン先生のロマンス』の続き

 脚本が素晴らしいこの映画は、ジョージ・スティーヴンスの冴えた演出で展開されます。小さなコントが連続して登場する感じで、最後まで一気に楽しく鑑賞出来ると思います。映画が始まると六角形のショー・ケースに入った女性用の帽子が映し出され、そのショー・ケースのガラス面にクレジットが表示されます。1930年代も男女共に帽子を被っていまして、特に女性のお洒落には欠かせない必須アイテムでした。

フランシーに一目惚れしてメロメロのピーター(左)
歌うフランシーはセクシーで可愛い(右)

 ニューヨークのナイト・クラブから物語が始まります。真面目な大学教授のピーターは、ナイト・クラブで飲んでいる従弟のキースに、一緒に列車で帰るように伝えます、キースは結婚したい女性がいるので、彼女を口説き落とすまで帰らないと言います。ピーターは彼の言う事には耳を貸さず、学長の父親にピーターを見付けた事を伝える為に電話を掛けに行きます。受付にある電話で長距離電話を掛けますが、大声で話すので受付の女の子から突っ込みが入ります。この会話が軽妙で面白いです。ステージではフランシーが、“You‛ll be Reminded of Me”を歌っています。(ジンジャー・ロジャースの歌が素敵です。)キースのテーブル席に向かうピーターは、フランシーを一目見て恋してしまいます。彼女を見ながら歩くので、途中クーラーポットを倒してしまいます。取り合えず空いているテーブル席に着き、彼女の歌に聞き惚れます。フランシーは歌の邪魔をするピーターの傍まで来て、椅子に座って歌うので彼はもうメロメロです。

オープンの二階建てバスの二人(左)公園でトウモロコシを食べる二人(右)

 キースはピーターがテーブル席に戻る前にトイレに隠れて、ピーターが一人で帰るのを待ちます。ピーターはキースがテーブル席にいないので、椅子に座って待っているとフランシスがやって来て隣の席に座ります。キースが結婚したがっている女性が彼女だとピーターは気が付きますが、話をしている内に二人で食事に出掛ける事になり店を出ます。人込みで混雑する中、大声を出しながら嚙み合わない会話が始まります。ここから夜明けまで語り明かす状況は、残念ながら文章で上手くお伝えする事は出来ません。何とも可笑しいピーターの振る舞いとフランシーの素敵な表情、そして二人の軽妙な会話は観ていて楽しいです。

一向にキスしないピーターに素早くキスするフランシー

 明け方彼女のアパートの玄関前で、ピーターは話をしながらキスをするチャンスを窺いますが、女性に疎い彼は何も出来ません。しかし、フランシーがピーターに軽くキスをして玄関に走って行きます。ピーターはフランシスを追いかけて玄関口でキスをします。(この場面の二人の演技は、素晴らしいです。)別れた直後、ピーターは街角の薬局からフランシーに電話をしてデートを再開します。

 画面は列車の中に変わりピーターは、酔っ払っているキースにフランシーと結婚した事を伝えます。キースは激怒しますが、事既に遅しです。ピーターとフランシーは二人っきりになろうとしますが、アクシデントがあり結局展望車で過ごします。列車がオールド・シャロンに着くと、駅には学長の父親とヘレンが待っていました。ヘレンは父親が勝手決めたピーターの婚約者です。

父親が決めた婚約者のヘレンと父親

 ピーターが未だ父親に結婚の話をしていないで、フランシーはキースの家に行く事にします。キースと一緒にいるフランシーを見た父親は、悪印象を持ちます。ピーターは父親にフランシーの話をしようとしますが、父親は聞く耳持たずで一切聞こうとしません。(スクリューボール・コメディでは相手の台詞が終わらないうちに話始め、二人の言い合いがよくあります。)家に帰ってからもフランシーの事を話そうとすると、又父親と言い合いが始まります。二人が怒鳴り合っている処に母親が登場しますが、怒鳴り合いが続くので母親は心臓の具合が悪くなってしまいます。

スタンド式の灰皿を持った時にモーガン夫妻が現れる(左)
化粧室で意気投合するフランシーと母親】(右)

 ピーターはフランシーに電話をして大学のパーティーに来るように伝えます。フランシーを新入生としてパーティーに参加しますが、ヘレンの態度に激怒して思わずスタンド式の灰皿を振り上げた時、モーガン夫妻が現れ醜態を晒してしまいます。落ち着きを取り戻す為にフランシーは女性用ラウンジに行き、咥え煙草で靴下を直している時に母親が入ってきます。喫煙者の母親は、フランシーに煙草を一本貰えないか声を掛けてきます、フランシーは喜んで最後の一本を差し出します。一寸躊躇した母親は、その煙草を半分に分けてフランシーに渡します。二人で煙草を吸いながら和やかな会話をして意気投合します。

フランシーとヘレンの口喧嘩(左) 二人の平手打ちが始まる(右)

 会場ではヘレンがピーターにべったりくっ付いてダンスをしています。キースの機転でフランシーはピーターとダンスをし、踊りながら庭に出ます。ピーターはフランシーを庭のベンチで待たせて、両親を呼びに行きます。入れ替わりにヘレンが来てフランシーに話しかけてきます。フランシーは立ち上がってヘレンと向き合います。ここから二人の言い合いが始まり、ヘレンがフランシーに行き成り平手打ちをします。負けじとフランシーも平手打ちのお返しを2回します。今度はヘレンがフランシーの足を蹴り二人の乱闘になります。

蹴とばされて反撃するフランシー(左)
女性の争いに唖然とするモーガン親子(右)

 この頃、ピーターは父親を庭に連れてきますが、フランシーがヘレンを投げる寸前でした。ヘレンがピンでフランシーのお尻を刺したので、ヘレンは投げ飛ばされます。モーガン親子が二人を止めに入りますが、フランシーはヘレンを殴ろうとして父親を殴ってしまいます。母親を連れて来たキースは、この惨事を母親に見せないように会場で踊り始めます。(この場面のスティーヴンス監督の演出は最高で、ジンジャー・ロジャースが滅茶苦茶面白いです。)

講義中のピーターの教室を訪れた
フランシー

 パーティーの翌日、キースは父親の学長にフランシーの事を告げようとしますが、真面に相手にされないので彼女は新入生だと言います。キースはフランシーをピーターの教室に連れて行き、植物学の講義を受ける様に言い教室に入れます。(セクシーで可愛いフランシーが教室に入って来たので、男子学生の冷やかしが面白い。)

ベッドを収納するフランシーと
メイドさん

 ピーターはフランシーにアパートを借りるよう言い、彼女はキースの家から出てアパートに引っ越します。彼女が借りた部屋のベッドは、足側を持ち上げて壁に収納するベッドです。メイドさんがベッド・メイキングして収納してドアを開けて部屋を出る時、風が吹いて部屋の奥のドアがバタンと閉まった時にベッドが倒れてきました、するとメイドさんは“ウォルター”と叫んで、ベッドを収納しました。フランシーは、“ウォルター”って何の事かメイドさんに聞くと、彼女の旦那さんの名前が“ウォルター”で、事ある毎に倒れるので何かが倒れると叫んでしまうと言います。(この“ウォルター”と云う台詞は、度々登場します。)

 次回に続きます。最後までお付き合い頂きまして、有難う御座いました。

『モーガン先生のロマンス』 作品データ

アメリカ 1938年 モノクロ 90分 劇場未公開

原題:Vivacious Lady

監督:ジョージ・スティーヴンス

製作:ジョージ・スティーヴンス

脚本:P・J・ウルフソン、アーネスト・パガノ

撮影:ロバート・デ・グラス

音楽:ロイ・ウェッブ

出演者:ジンジャー・ロジャース、ジェームズ・スチュアート

   ジェームズ・エリソン、ビューラ・ボンディ

   チャールズ・コバーン、フランセス・マーサー

   グラディ・サットン・ジャック・カーソン

   フランクリン・パングボーン、ウィリー・ベスト