Vol.52 『透明人間』の最終章

鏡に向かって包帯を解くジャック

 ケンプの家に戻ったジャックは、パジャマを着て鏡に向かって顔の包帯を外していきます。(このシーンの特撮は、4回の重ね撮りをした非常に高度な技術で撮影されています。)

クランリー博士に電話をするケンプ(左)
ジャックに会いに行くと訴えるフローラ(右)

 宿屋の酒場では警察署長が陣頭指揮を執って、透明人間捕獲作戦を開始します。警官は32㎞の範囲の捜索を行い、ラジオでは科学者が透明人間になって警官を殺した事を放送しています。住民には注意を促し捜査の協力を求め、情報提供者には1,000ポンドの賞金が出る事も発表されます。ジャックが眠っている隙に、ケンプは1階に降りてクランリー博士に電話します。ジャックが自分の家にいて、彼が透明人間だと伝えて直ぐ来るように頼みます。博士はケンプに、ジャックはそんな人間じゃないと言って電話を切ります。ケンプは警察に電話して、透明人間が自分の家にいる事を通報します。電話を受けていたクランリー博士に、フローラは誰からの電話か尋ねます。博士はケンプからの電話で、ジャックが透明人間でケンプの家にいると言います。フローラはジャックに会いに行くと言い出しますが、彼は正常じゃないから行かないように言います。しかし、彼女は一人でも会いに行くというので博士も一緒にケンプの家に向かいます。

ジャックに博士とフローラを呼んだと言うケンプ(左)
フローラに自分の野望を語るジャック(右)

 2階で寝ていたジャックが降りてきて、ケンプがいる部屋の前で鍵を開けろと言います。ケンプは怖いから鍵をかけたと言うので、ジャックは相棒だから怖がる事は無い早く寝ろと言います。二人で2階に上がると窓から車が到着するのが見え、ジャックは警察に通報したのかと言います。ケンプはフローラと博士が来たと言い、彼女が心配していたので連絡したとジャックに言います。ジャックはフローラと二人で話がしたいと言い、フローラはジャックのいる部屋に行きます。二人は再会を喜び、ジャックはフローラの為に研究を完成させて富と名声を得たかったと言います。フローラは、博士と協力して復元薬を作るように言います。天才の博士と一緒に研究すれば完成すると言うと、ジャックは自分には凄いパワーがあるから、博士の協力は要らないと言い返します。自分は何でも出来る人間だから富も名声も得られると言っている時に、家の周りには警官が集まって来ているのが見えます。ジャックはケンプが警察に通報したことを知り、フローラに帰るように言い透明人間に戻ります。

ズボンだけで逃げるジャック

 家を包囲した警官隊は手を繋いで家に向かって前進します。ケンプが部屋の窓を開けた時、ジャックがケンプを明日の10時にお前を殺すと言って出て行きます。ジャックは警官に悪戯をしながら、一人の警官の足を掴んで引きずり出し、振り回して投げ飛ばします。その時警官のズボンを取り、それを穿いて歌い踊りながら逃げて行きます。

ジャックの行方を博士に聞く警察署長(左)
ジャックが透明人間だと訴えるケンプ(右)

 警察署でケンプは明日の10時に殺されるから拘置所に入れて欲しいと警察に頼みます。署長は警察に博士とフローラも呼んで、博士の行動に疑問を持ち質問します。博士に助手のグリフォンはどうしたと尋ねると、彼は出て行ったとだけ答えます。ケンプはグリフォンが透明人間だと言い、彼は私を殺しに来ると喚きます。大勢の町民が透明人間探しをしている時に、透明人間が現れて崖から町民を突き落とします。信号所にも現れて勝手にレールを切り替えて、予定通り列車事故を起こします。銀行では現金が入った引き出しを盗み、道路に出て歌いながら現金をばら撒きます。

捕獲作戦の説明をする警察署長(左)  崖から落ちるケンプが乗った車(右)

 ケンプの家では警察署長が署員に捕獲作戦の指示を出します。ケンプを署員が囲み、外側に網を巡らせて警察署に向かいます。警察署でケンプは警官の制服を着て、裏口から逃げ出し車でその場から立ち去ります。逃げ切ったと思ったのも束の間、車にはジャックが乗っていてケンプは手足をロープで縛られます。そして、車ごと崖から落とされ車は炎上します。

藁の中の透明人間が寝ている事に気付いた農夫(左) 火に包まれる納屋(右)

 ジャックは農家の納屋に忍び込み、藁の中に潜り込んで眠ります。処が、そこの住民が農機具を納屋に置きに行った時に、藁の中から寝息が聞こえるのに気が付き警察に知らせます。警察は全署員を出動させて、透明人間捕獲作戦を開始します。納屋を全署員で囲み、納屋に火をつけて透明人間をおびき出します。火事に気が付いたジャックは慌てて藁から飛び出し外に出ますが、地面には雪が積もっていてジャックの足跡が見えてしまいます。

銃弾に倒れたジャック

 銃を構えていた署長は、足跡が向かう方向に銃を撃ちます。雪の上の足跡が止まり、雪の上に人が倒れたような形に表れます。署長は倒れた場所に行き、透明人間が倒れた事を確認します。

フローラに最後の言葉を告げるジャック(左)
死んで姿を現したジャック・グリフォン(右)

 瀕死の状態で病院に運ばれたジャックは。フローラに自分は元に戻りたかったが失敗した。触れてはならない領域に手を出してしまったと言って息を引き取ります。(徐々に顔が現れ、ジャック・グリフォンの死に顔が映し出されます。ラストを見事な特殊撮影で物語は終わります。)最後までお付き合い頂きまして、有難う御座いました。

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1933年『透明人間』
発売元:ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン株式会社
《特典映像は特殊撮影に興味がある方には必見です》

『透明人間』 作品データ

アメリカ 1933年 モノクロ 71分

原題:The Invisible Man

監督:ジェームズ・ホエール

脚色:ロバート・C・シュリフ

原作:H・G・ウェルズ

撮影:アーサー・エディソン

美術:チャールズ・ホール

特殊効果:ジョン・P・フルトン

出演;クロード・レインズ、グロリア・スチュアート

   ウィリアム・ハリガン。ヘンリー・トラバース

   ウナ・オコナー