Vol.57 『暗い鏡』の続き

電気スタンドが倒れた室内(左)   ナイフで殺されたペラルタ医師(右)

 タイトル画面の背景はインクブロット検査(インクを落とした紙を半分に折って出来た模様を使って精神分析をする検査です。)の模様が表示されていて、その上にクレジットが流れます。窓から見える夜景の画面から、カメラは横に移動して22時50分を指す時計が映されます。カメラは再び横に移動して、隣の部屋の中で倒れた電気スタンドがあり、部屋の中に入ると割れた鏡が映されて、背中にナイフが刺さった男が床に倒れています。殺人現場からの導入で、非常に簡潔にその部屋で起こった事が分かる手際の良い演出です。

テリーに犯行時刻のアリバイを聞く警部補(左)
テリーを抱き上げるエリオット医師(右)

 画面が変わってスティーブンソン警部補が、犯行があったアパートの住人や関係者からの証言を聴取します。被害者フランク・ラベルタ医師の秘書の証言から、医療ビルの売店の売り子テリー・コリンズを容疑者と断定します。医療ビルの売店にアパートの住人二人を連れて行き、容疑者の確認をします。二人の証人から犯行時間頃に見かけたのは、テリー・コリンズだと確証を得て警部補は彼女に会いに行きます。しかし、彼女は20時から公園に散歩に出ていて、その時数人の人と会い23時30分頃帰宅したと証言します。そこで警部補は、ラベルタ医師が殺された事を彼女に伝えます。それを聞いた彼女は歩き出しますが気を失い、スコット・エリオット医師に抱きかかえられて彼の診療室に運び込まれます。

テリーに昨夜のアリバイを聞くスティーブンソン警部補(左)
【テリーとルースに昨夜のアリバイを聞く警部補(右)

 警部補はテリーのアリバイを確認する為に、散歩中に会った二人と公園で話した三人の証言から、彼女のアリバイが完璧であると知ります。署に戻った警部補は、スコットの診療所にいる刑事に電話をして、彼女の拘束を解くと伝えます。警部は殺人事件が起きた時刻に、殺人現場から7㎞離れた公園に同一人物が存在する事に困惑します。そこで警部補は、テリーからもう一度話を聞く為に彼女の家を訪問します。警部補は貴方のアリバイは完璧ですと言い、彼女は事実だから当然ですと答えます。警部補は彼女に煙草を勧め、被害者のペラルタ医師との関係を聞きますが、必要な情報は得られません。テリーは警部補にもう遅いから帰るように言っている時、隣の部屋から“テリー”と呼びかける声がします。その声を聞いて警部補がその部屋のドアを開けると、そこにはもう一人のテリーがいます。彼女は姉のルースで、警部補は同一時刻に別の場所に同じ人間がいた訳が分かります。コリンズ姉妹は医療ビルではテリー・コリンズと名乗り、二人は時々入れ替っていました。そこで警部補は公園にいたのはどっちかと尋ねます。テリーの答えは、一人は公園で一人は家で寝ていたと答えます。警部補はテリーと言い合いになり、ルースに家にいたのはどっちか尋ねますが、ルースの答えは一人は公園で一人はと言った処で、警部補はどっちなんだと言います。それでは二人とも逮捕するか言うとテリーが反論し、話は収拾がつかなくなりテリーは警部補を帰します。

面通しを受けるコリンズ姉妹(左)
双子の姉妹を見て唖然とする証人たち(右)

 画面が変わって警察署では凶器のナイフから指紋が出ないので、ヒル判事にコリンズ姉妹への殺人容疑の令状を請求します。翌日警察署に証人を集めて、容疑者の所謂面通しを行います。最初にルースが出てきて、それを見た証人の一人は彼女に名違いない、一万人出てきても分かると豪語します。次にテリーが登場すると、全員唖然とします。

テリーに双子の姉がいたのを見て驚くスコットとラスティ(左)
双子のルースとテリー(右)

 画面が変わって別室でスコットとラスティが待機していて、呼ばれて二人は部屋に入り、テリーには双子の姉がいる事を知り二人は驚きます。判事はラスティに、事件当日売店の売り子とペラルタ医師が口論していたのを目撃したか聞き、ラスティはそうですと答えます。次に判事はスコットに、あなたは双子の研究をされていますねと言い、双子は精神や肉体に欠陥があるかと尋ねます。スコットは、それは迷信ですと否定します。続けて判事は、事件当日ペラルタ医師に会った時に話をしたか聞きます。スコットは、二重人格について聞かれたと答えます。判事が二重人格は危険かと聞くので、危険ですと答えます。

判事の質問に答えるスコット(左)   コリンズ姉妹を解放する検事(右)

 判事はペラルタ医師が朝テリーと喧嘩をしたが、今夜大事な話があると言っていたと伝えます。判事は事件当日会ったのは二人のどっちか聞きますが、スコットは分からないとと答えます。結論が出ないままスコットとラスティは帰され、コリンズ姉妹は隣の部屋に移されます。警部補は判事に見逃すのか聞きますが、判事は犯人を特定出来ないので逮捕する事は出来ないと言います。コリンズ姉妹を再び部屋に入れ君達のどちらかは冷酷非情な殺人者だが、遺憾ながら逮捕する事は出来ないと言って二人を帰します。(このシーンでのテリーとルースの表情を見て頂きたい、勝気なテリーと内気なルースを見事に演じ分けています。)

スコットにコリンズ姉妹の調査依頼をする警部補(左)
【コリンズ姉妹に双子の研究協力を依頼するスコット(右)

 画面が変わって、スコットの家を警部補が尋ねて来ます。警部補は双子事件の話を始めると、スコットが捜査は終了したのでは無いかと言います、警部補は個人的に動いていると言い、完全犯罪が成立するのが不愉快だと言い、二人を調べて欲しいと言います。スコットは断りますが、殺人者と無実の人間が一緒では口封じに殺されるかも知れないと言います。スコットは、警部補の説得に応じコリンズ姉妹の人格と個性を調べる事にします。(このシーンでの警部補の表情の変化は、流石といった演技です。)スコットはコリンズ姉妹の家に行き、自分の研究の為に謝礼を出すので協力して貰えないかと頼みます。二人は殺人事件の容疑者として新聞に載り、仕事に就けない状態になっていました。最初ルースは拒否しますが、テリーがルースを説得して彼の依頼を受けます。

インクブロット検査を受けるテリー(左)
インクブロット検査を受けるルース(右)

 画面が変わって夜間のスコットの診療所、テリーが検査の為に訪れます。先ずは性格を分析する為に、インクブロット検査から始まります。紙にインクを落として半分に折って広げた模様を見て、何に見えるか答えて行きます。別の日の昼間に今度はルースが診療所を訪れ、過去の養子縁組の話をします。養子は一人でテリーが選ばれなかったので、ルースはその家から出て行ったと言います。スコットは話を聞きながら、インクブロット検査をします。同じ模様を見ても、当然二人の答えは全然違います。夜ルースが帰宅すると、テリーが夕食の準備をしていて遅い帰宅の事を尋ねます。ルースはスコットと話をしていたと楽しそうに言います。テリーはスコットを未だ信じていないので、気を付けるようにとルースに言います。その頃、スコットは二人の精神分析を行い、重大な事を発見します。直ちにスコットは警部補に会い、精神分析結果で一つ分かった事がある。一人は異常者で、非常に頭は良いが正気じゃないと伝えます。

自由連想法の検査を受けるルース(左)
ルースに私を疑っていると言うテリー(右)

 画面が変わって、診療所でルースが自由連想法の検査をします。質問された言葉に素早く思い付いた言葉を言う検査で、人格を調べる為に行うものです。検査が始まって、「鏡」と云う問いにルースは「死」と言い、彼女は一瞬驚きます。その後、検査は最後まで続きます。帰宅後、ルースがその話をするとテリーは私を疑っていると言って、怒って隣の部屋に行きます。ルースは疑っていないと言いながら、テリーを追いかけて隣の部屋に行きます。テリーはルースに睡眠薬を飲んでいるか尋ねます。あの事件以来眠れないから飲んでいると言い、あなたも飲んでいるでしょうと言います。その時テリーは警察に言っていない事が一つあると言い、ルースに警察に電話したいならするように言います。そして、私を疑ったらどうなるか分からないと言います。(このシーンではテリーとルースが同一画面に登場します。窓際に立つテリーは後ろ姿か、正面を向いた時の顔は影になって見えません。)

次回に続きます。最後までお付き合い頂きまして、有難う御座いました。

『暗い鏡』作品データ

1946年製作 アメリカ 85分
原題:The Dark Mirror

監督:ロバート シオドマク

脚本:ナナリー・ジョンソン

原作:ウラジミ・ポズナー

製作:ナナリー・ジョンソン

撮影:ミルトン・クラスナー

音楽:ディミトリ・ティオムキン

出演:オリヴィア・デ・ハヴィランド:テリー・コリンズ

   オリヴィア・デ・ハヴィランド:ルース・コリンズ

   リュー・エアーズ:スコット・エリオット医師

   トーマス・ミッチェル:スティーブンソン警部補

   リチャード・ロング:ラスティ

   ゲイリー・オーウェン:フランクリン