Vol.61 『蛇の穴』の続きの続き

絨毯に座るヴァージニアを注意する看護師(左)
踊る患者の手を引く看護師(右

 12棟の入院患者が集う広い部屋。中央に大きな絨毯が敷かれていて、患者たちはその周りにいる。ヴァ-ジニアはその絨毯の上を歩き中央に座り込んだ。すると看護師が絨毯の中に入るのは規則で禁止されていると言って、彼女に出るように注意します。彼女が絨毯の外側に出て看護師に抗議していると、一人の患者が歌って踊り出します。その看護師は慌てて靴を脱いで、その患者を捕まえて絨毯の上から連れ出します。

自分が退院審査を受けさせたと
話すロバート

 画面が変わって談話室。夫のロバートが面会に来ていて、二人でチョコレートを食べながら話している時にカーティス区長が二人の傍を歩いてきます。ヴァ-ジニアはあの人は悪い人で、私が彼の指を噛んだと言っているとロバートに言います。ロバートは指を噛んだのは本当の事だと言い、カーティス区長は女性病棟の責任者でキック医師の上司だと言います。ヴァ-ジニアはキック医師が自分をこの病院から追い出そうとしていると思っているので、彼の名前を聞いて嫌悪感を表します。ロバートは退院審査を受けさせたのは自分で、キック医師だけ反対していたと言うとヴァージニアの表情が晴れやかになります。その夜、ヴァージニアは仮病を使ってキック医師に会い、自分を追い出そうとしていない事が分かったと話します。そして自分は未だ退院するのは早いから治療を続けると言います。キック医師は彼女の病棟を1棟に変えて、ゆっくり治療をする事にします。

規則の説明をするデイビス看護師長(左)
人形と煙草を交換するヴァージニア(右

 1棟では自分の部屋を与えられますが、看護師のベティが規則に厳しい新任の看護師長になっていてミス・デイビスと呼ばれていました。挨拶に来た看護師長のデイビスに会った時、ヴァージニアは初対面だと思って接します。デイビス師長に娯楽室に行くように言われて部屋を出る時に、ヴァージニアは以前の事を思い出し捨て台詞を言いながら退室します。娯楽室で手作りの人形を持っている患者と会い、煙草5本と人形を交換してその人形を手に入れます。人形を抱いて遊んでいると、先程の患者が来て煙草を10本追加するように言うのでヴァージニアは箱ごと渡します。

再びグリア夫人登場(左)
盗んだ人形を返すように言うデイビス看護師長(右

 ヴァージニアが人形で遊んでいるとビューラ・ボンディ演じるグリア夫人が登場して、私は金持ちだと言って持っている宝石自慢を始めます。ヴァージニアも負けずに適当な事を言って応戦します。そこにデイビス師長が表れて盗んだ人形を返すように命令します。ヴァ-ジニアは煙草と交換したから盗んではいないと言い、絶対に渡さないと言って逃げ回ります。デイビス師長は看護師にヴァージニアをデイビス師長室に連れて行くように言います。ヴァージニアがデイビス師長室で人形と遊んでいるとキック医師が表れたので、彼女は人形を盗んでいないと弁明します。キック医師がどうして人形を返却しないのかと問い質すと、ヴァージニアの態度が豹変して父のように叱ればいいと言い出します。キック医師は人形と父親の事が彼女の病気に関係していると思い、人形は返さなくていいと言って彼女に明日の朝会う事を伝えて退室します。

子供の頃の話をするヴァージニア(左)
話し終えて号泣するヴァージニア(右

 翌日、キック医師の執務室でキック医師はヴァージニアに”子供の頃、お父さんに叱られた“と言っていたねと聞きます。ヴァージニアは”小さな人形の事よ“と言って、幼かった頃の出来事を話し始めます。母親から貰った人形を友達と交換したら、返すように云われて反抗した事。優しい父親と遊園地に行き、射的ゲームで父親が景品の兵隊さんの人形を取ってくれた事。嫌いだった母親に父親が味方するようになって、父親の事も嫌いになった事。そして父親が尿毒症で死んでしまった事。父親の死を語る時には、彼女は泣き崩れて号泣します。泣き止んで退室する時、煙草と交換した人形が解けて、只の布切れを丸めて作ったものだった事が分かります。

小説を書くように言うデイビス看護師長(左)
拘束衣を着せられるヴァージニア(右

 画面が変わってヴァージニアの部屋。デイビス師長がタイプライターを持って来て、彼女に作家だから小説を書くように言います。毎日休憩時間の1時間、タイプライターを貸し出すと言い、彼女が書くのを立って眺めています。彼女はデイビス師長にキック医師の事を好きだから、嫌がらせをすると言って言い合いになります。しかし、彼女は失言したと思いデイビス師長に謝罪しますが、受け入れられずデイビス師長は棟から出ていきます。そこにグリア夫人が現れて、あなたはもう直ぐここから追い出されると言います。それを聞いた彼女は、洗面所に入り錠を掛けて立て籠もります。(外でヴァージニアを探している看護師たちの声を聞き、洗面所にいる彼女は無言で様々な反応をします。このシーンはハヴィランドの一人芝居です。)看護師たちは彼女が洗面所にいる事が分かり、夫のロバートが来ていると嘘を言って、彼女を洗面所から出させて全員で彼女を取り押えて無理やり拘束衣を着せます。

ヴァージニアと面会するキック医師

 画面が変わって、雪が降る中キック医師は重症患者が入院している病棟を訪れます。その病棟の責任者で友人のテリー医師に会い、ヴァージニアの部屋に向かいます。そこに入院している患者は、全員が明らかに異常な行動をしています。ヴァージニアの部屋に入ると彼女は拘束衣を着せられていて、窓の前に佇んでいました。キック医師はテリー医師の許可を得て、彼女の拘束衣を脱がせて貰います。彼女がキック医師に今でも自分の担当かと聞くので、棟が違うので君の担当は私の友人のテリー医師だと伝え、いつでも会いに来ると言います。彼女はキック医師にこの病棟での出来事を話し始めます。次回に続きます。最後までお付き合い頂きまして、有難う御座いました。

『蛇の穴』 作品データ

アメリカ モノクロ 108分

原題:The Snake Pit

監督:アナトール・リトヴァク

脚本:フランク・パルトス、ミレン・ブランド

原作:メアリー・ジェーン・ウォード

製作:アナトール・リトヴァク、 ロバート・バスラー

撮影:レオ・トーバー

音楽:アルフレッド・ニューマン

出演:オリヴィア・デ・ハヴィランド:ヴァージニア・スチュアート・カニンガム

   マーク・スティーブンス:ロバート・カニンガム

   レオ・ゲン:マーク・キック医師

   セレステ・ホルム:グレイス

   グレン・ランガン:テリー医師

   ヘレン・グレイグ:看護師ベティ

   リーフ・エリクソン:ゴードン

   ビューラ・ボンダイ:ミセス・グリア