Vol.64 『突破口!』の続き

オープニングの夜の山並み(左)   “CHARLEY VARRICK”のタイトル(右)

 オープニングで月が映し出され、カメラが引いて遠くに山並みが見える夜のシーンに主演のウォルター・マッソーの名前が出ます。次に“CHARLEY VARRICK”と書かれた衣服のようなものが燃えているシーンが映画のタイトルとなります。画面は遠くに山並みが見える田園風景の朝です。牧場が映し出され、のんびりとした日常生活を描いています。そして、そこの町の人々の暮らしぶりが分かるような何気ないシーンに続きます。(この間クレジットが画面の片隅に表示されますが、出演者の最後に“ドナルド・シーゲル”と書かれています。)

ウエスタン信託銀行の看板(左)     銀行前に停まったリンカーン(右)

 画面が変わってニューメキシコ州のウエスタン信託銀行の看板が映し出されます。カメラは壁伝いに上に上がり、旗の間から遠くに車が見えた処からカメラが下がります。銀行の前に黄色のリンカーンが停車します。(1970年代のアメ車は大きいです)

変装したチャーリーと妻のネイディーン(左)  二人に声を掛ける警官(右)

 助手席には老人に変装したチャーリー、運転席には妻のネイディーンがいます。銀行前に停車している車を見て、パトカーカーが来ます。警官が銀行前に停車しないように注意しますが、チャーリーが包帯を巻いた左足を見せて、小切手の換金だけだから直ぐ終わると言います。ネイディーンが、夫は私を信用していないので換金させてくれないと言い、二人が言い争います。それを見ていた警官は、早く車を出すよう言って去ります。

本部に車のナンバーを照会する警官(左)
支店長に小切手を見せるチャーリー(右)

 チャーリーが銀行に入って行った後に、画面はパトカーの車内に変わります。警官はナンバープレートから盗難車ではないかと思い、本部に連絡をしてナンバーの照会を依頼します。銀行ではチャーリーが出した小切手が他行のものなので、支店長が出てきます。

マスクを付けたアルとサリバンが登場(左)
支店長に銃を突き付けるh-万(右)

 ここからのんびりムードは終わり、緊迫して画面になります。マスクを付けた二人の男が銃を持って現れ、チャーリーも銃を構えて銀行強盗に早変わりします。相棒のサリバンがカウンターの中に入って現金を漁ります。(サリバンは白い布で自分が触った所の指紋を拭き取ります。この描写で彼等はプロである事が分かります・)チャーリーは支店長に金庫を開けるように言いますが、困惑して直ぐに金庫を開けませんでした。チャーリーが支店長の足を蹴り、サリバンが後ろから拳銃を頭に押し付けると金庫を開けます。その頃、パトカーに本部から連絡があり、照会した車が盗難車だと分かります。(このシーンで二人の警官のホルスターを映し、ホルスター内に銃を固定するストラップを外す処はリアリティがあり緊張感が出ています。)

支店長に銃を突き付けて別の金庫を開けるように言うチャーリー(左)
別の金庫から出された革のバッグ(右)

 銀行では奪った金が少ないとサリバンが言うと、チャーリーは支店長にもっと金を出すように言います。支店長は冷や汗を流しながらもう無いと言いますが、チャーリーに銃を突き付けられて渋々別の金庫を開けます。支店長が中から革のカバンを出したので、中身を問いただすと譲渡不能の証券だと言います。

バッグの中の免許証を探すふりをするネイディーン(左)
バッグの中から銃を撃つネイディーン(右)

 その頃、パトカーが銀行に戻ってきて、一人の警官がネイディーンに免許証を見せるように言います。ネイディーンはバックの中を探すようにしながら、バックの底を警官の方に向けてバックの中から銃を発砲して警官を射殺します。続けて車の後ろ側にいた警官も撃ちますが、その警官は倒れながら銃を発砲します。その弾はドアに当たります。

パトカーに衝突後ボンネットが開いたリンカーン(左)
建物に衝突して停まった保安官のパトカー(右)

 銀行では警備員の傍で銃を向けていた仲間のアルが、外の銃声を聞いて横を向いた隙に警備員がアルのもう一丁の銃を奪ってアルを射殺します。チャーリーとサリバンは、警備員を射殺して逃げ出します。ネイディーンは二人が乗ったと同時に車を発進しますが、前に止まっているパトカーを引掛けてしまい、ボンネットが開いた状態で走ります。駆け付けたもう一台のパトカーとは、側面を接触しながら走り去ります。パトカーは建物の一部を壊して、駐車していた車にぶつかって止まります。パトカーに乗っていた保安官は、本部に銀行強盗があった事を伝え、非常線を張るように指示します。

警官の生存を確認した保安官(左)
保安官にリンカーンのナンバーを知らせる少年(右)

 保安官は銃撃現場で一人の警官の生存を確認し、銀行に入ろうとした時に少年がリンカーンのナンバーを知らせに来ます。(この少年役を演じたのは、チャールズ・マッソーでウォルター・マッソーの息子さんです。)逃走中のリンカーンは多少の蛇行をしながら走りますが、スピードを落として道路脇に止まります。そこでチャーリーはネイディーンが銃で撃たれた事を知ります。銀行では保安官と支店長が事件の報告先の話をしていて、支店長は銀行員のベスタに地方検事に連絡するように言い、小声でリノのメイナード・ボイルにも連絡するように言います。

奪った金を容器に入れる二人(左)   点火装置を設置するチャーリー(右)

 妻のネウディーンを助手席に座らせ、チャーリーは変装を取りながら運転して山中に向かいます。山中の車を乗り換える場所に車を止め、仕事用のバンに用意してある2本の円柱形の容器に奪った金を入れ、その上からカモフラージュする詰め物をして蓋をします。サリバンはリンカーンの周りに火薬を撒き、チャーリーは妻の介抱をしますがネイディーンは亡くなります。妻の指から指輪を外し、リンカーンの周りに火薬を撒いて、妻の身体にも火薬を掛けます。ガソリンキャップを開けて布を垂らし、その布に点火装置を仕掛けてその場を去ります。

積み荷を確認する警官(左)     山で突然爆発が起こります(右)

 山を下りて幹線道路を走りながら、サリバンがチャーリーの以前の仕事の事を尋ねます。チャーリーは曲芸飛行をやっていたが、死にそうになって飛行機での農薬散布の仕事していた。しかし、コンバインが出回って仕事が減ったので、銀行強盗を始めたと話します。その時、対向車線をパトカーが走って来ます。すれ違ったパトカーはUターンして、チャーリーに停車するように指示します。サリバンは拳銃を出して警官を撃とうとしますが、チャーリーは拳銃をしまうように言います。警官は営業許可証を見てから荷物の確認をします。サリバンは銃を取り出して、助手席で銃を構えます。チャーリーが容器の中身の説明をしている時に、遠くの山の方で爆発があり、警官は爆発現場に向かってパトカーを走らせます。(劇中マッソーが何度もガムを書くシーンが出てきますが、ヘビースモーカーだった彼が禁煙したアピールなのかと思ったりしました。)警官が去った後、チャーリーは橋の上から犯行に使った銃を川に捨てます。サリバンにも銃を捨てるように言い、サリバンは渋々銃を捨てます。仲間のアルの銃も捨てて、自宅に向かいます。

モリ―夫人と話すチャーリー(左)     奪った金の多さに驚く二人(右)

 トレーラーハウスの自宅に着き、トレーラーハウスを叩きながらネイディーンに声を掛け、隣人のタフ・モリ―夫人の所に行って妻を見なかったか尋ねます。モリ―夫人は見なかったけど、逃げられたのかと良います。この辺は女たらしがいるから、気を付けないと言い、私も言い寄られていると言い出します。チャーリーは適当に返事をして、トレーラーハウスに向かいます。(モリ―夫人が登場するシーンでは平凡な日常に戻るので、それが映画にリアリティを与えているように思います。)サリバンがトレーラーハウスに運び込んだ容器を開けて、予想以上の大金が入っていました。サリバンは大喜びですが、チャーリーは額が多すぎるので疑惑を抱きます。あの地方銀行なら3万ドル位だが、ざっと見積もっても50万ドル以上あります。その時ラジオの速報があり、被害額は2000ドル弱だと時放送されます。これを聞いてチャーリーはマフィアの隠し金だと確信し、身を隠して3~4年金に手を付けないようにすると、サリバンに説明しますが彼は事の重大さを理解しません。

モリ―に無線で仕事を依頼するボイル(左)
ジョンに賭けの負け金を払うラフティ役のシーゲル監督(右)

 画面が変わってボイルのオフィス、ボイルは秘書のフォートに配達人を手配するように指示します。ボイルは無人の会議室に入り鍵をかけ、無線機を撮り出して殺し屋のモリ―に仕事の依頼をします。ウエスタン信託銀行トレス・クルーセス支店で75万ドル盗まれたので、金の回収と後始末をするように指示します。モリ―は配達人のジョンのオフィスに向かいます。ジョンのオフィスは中華店料理のレストランの地下にあり、遊戯室になっていてジョンと卓球をやっているマーフィ役がシーゲル監督です。賭けに負けてお金を払って出て行きます。

モリ―を説得していごとを依頼するジョン(左)
男を殴り倒して車を回収するモリ―(右)

 ジョンはモリ―と奥のオフィスに入り、前払い金を渡し現在情報が無いと言うと、ジョンは仕事を断ります。ジョンは組織の内部情報を手に入れると言って、モリ―を説得します。ジョンはニューメキシコのホテルを手配し、車は訳有りの男から回収して使うように依頼します。モリ―は勝手に車を奪った男を殴り倒し、車を回収してニューメキシコに向かいます。(カメラが横にパンして、窓から父親が殴り倒されたのを見ていた不安げな子供が映されます。何気ないこんなシーンが挿入されるが、シーゲル監督の魅力ですね。)

飛行機で逃走す事を提案するサリバンと一応承諾するチャーリー

 画面が変わって月が映し出され、サリバンが酒を飲んでいます。チャーリーに呼ばれてトレーラーハウスに入ります。サリバンは奪った金の置き場所を聞き、金額を聞きます。チャーリーは76万5180ドルだと答えて、サリバンは3分の1で自分は3分の2を貰うと言います。サリバンは納得し、二人でテレビ・ニュースを観ます。妻を乗せた車を燃やした事で山火事になった報道があり、発見された車は銀行強盗の逃走車と認定し、手掛かりは遺体の歯形だけなので州内の歯医者を調べていると保安官が言います。サリバンは道路封鎖されても飛行機で逃げればいいとチャーリーに言います。飛行場も見張られているから無理だとチャーリーが言うと、サリバンは着陸出来る所なら何処でも良いだろうと言います。(このシーンのアンディ・ロビンソンの表情は、金に目が眩んだ若者の演技で本領発揮です。)

妻のカルテを抜き取るチャーリー

 チャーリーは一応承諾したような返答をし、ネイディーンのカルテを処分する為に歯医者に行きます。歯医者に侵入したチャーリーはネイディーンのカルテを抜き取り、サリバンのレントゲン写真を抜き取って自分のレントゲン写真と入れ替えて、自分のレントゲン写真を持ち帰ります。次回に続きます。最後までお付き合い頂きまして、有難う御座いました。

『突破口!』 作品データ

1973年製作 111分 アメリカ
原題:CHARLEY VARRICK

監督:ドン・シーゲル

製作:ドン・シーゲル

製作総指揮:ジェニングス・ラング

原作:ジョン・リーズ

脚本:ハワード・ロッドマン、ディーン・リーズナー

編集:フランク・モリス

音楽:ラロ・シフリン

ウォルター・マッソー:チャーリー・ヴァリック

ジョー・ドン・ベイカー:モリ―(殺し屋)

アンディ・ロビンソン:ハーマン・サリバン(相棒)

ジャクリーン・スコット:ネイディーン・ヴァリック(妻)

フェリシア・ファー:シビル・フォート(秘書)

シェリー・ノース:ジュエル・エベレット(偽造屋)

ジョン・ヴァーノン:メイナード・ボイル(マフィアのボス)

マージョ・ベネット:(隣人のお婆さんのターフ夫人)

ドナルド・シーゲル:マーフィ